ゲームの世界にTS転生したけど、俺が知らないことしか起きない

@GON_NO_SUKE

第1話

 ああ、多分ここで詰みだな。俺は地面に膝をつきながらそう思った。

 弟は俺にトドメを刺すだろう。

 まあ、最後くらいはかっこよくありたいから抵抗はしない。ただただ、目をつむる


――くやしい、なあ


 そう思いながら。今までの人生が頭の中で駆ける。走馬灯ってやつだろうか。






◆ ◆ ◆




 俺はゲームにハマっていた。ただ刀を集めて、ストーリーをクリアする。

 そんなゲームだ。

 俺はそのゲームに出会って、心を奪われた。

 ストーリーを何周もした。集めれる刀はすべて集めた。そのゲームで知らないことはないと断言出来るほどやっていた。

 やっているうちにいつしか、剣に憧れを抱いていった。

 いつもいつも、このゲームの世界が現実だったらどれほど良かったか!そんなふうに思っていた。


 ただある日――ふと、現実に戻った。

 このままでいいのだろうか。今まで俺は何をしてきたのだろうか。


「俺地味にけっこーやばくね?」


 なんとなく夜空を見たい日だったから。月を見ていたらそう思った。


「まあ別にいいけど」


 ここまで来たんだからもうどうなってもいいや。

 そう思っていたのを覚えている。

 このころの俺は多分、自暴自棄になってたんだろうな。


「朝起きたらあのゲームの世界に行けますよーに!」


 いつもの様に祈って寝た。

 まさか本当にゲームの世界に行けるとは思ってもいなかったけど。




 俺は本当に、ゲームの世界に転生したと気がついたのは、数年が経ってからだった。

 貴族の家の剣士の子供、と書くとわかりにくいがまあ、代々榊樹さかきじゅ家という貴族の家に使えている泉山家があり、その家の子供として転生のだ。

 それからは本当に楽しい毎日だった。


 剣士の家の子なので、剣の練習。

――最高だ。

 仕えている家の中でも位が高く、準貴族と言っても過言ではない待遇。

――最高だ。

 本も読めるし、情報も手に入る。

――最高だ。


 まさに至れり尽くせり。ソシャゲで言うなら最高レアを引いたようなものだ。

 ただ一つ、困ったことがあった。


 ……女に、なっていたのだ。


 いや、女性が悪いとか言う訳ではもちろんなくてね、いやまあ、結構お父さんもお母さんも美形だし? なんなら弟とか見ててもイケメンになりそうだなとかね? ちょっとからだ入れ替えて欲しいなんて週に6回くらいしか思ってないけどね?


 え、いやそこそうする?

 と、もし神がいるなら小一時間くらい問い詰めたいところだ。


 とまあ、生まれ変わったら女になっていたという大事件はあったものの、俺……泉山鳥恭うきょうはみんなと楽しくくらいしていた。


 そう、この国の主、秋山寺正が国の大掃除、少しでも秋山の疑いの目がかかったものを粛清する狂気の行動が始まるまでは。

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