第10話 依存


 「遅くなってごめん。お待たせ…って桐谷くん!?かごめちゃんに何してるの…?」




 彼には服を脱いで私に馬乗りになり、襲うように命じてある。




 もっとも彼の体力は殆ど残ってないので簡単に抵抗できるのだが。




 「彩…!桐谷くんが急に私を押し倒してきて…助けて…!」




 凄く演技っぽくなってしまってるか、先程同じ経験をした彩はすごく混乱してるはずだからバレないだろう。




 「桐谷くん!かごめちゃんから離れて!」




 彩は私の上に馬乗りになっている彼を突き飛ばす。




 彼は頭を地面に打ち付け、そのまま光の粒子となって消えていく。




 「え…?なんで…?」




 計画通り。




 HPがほぼ残っておらず、只管血を吸われた後の彼はもう既に満身創痍でちょっとした衝撃で死んでしまう。




 「彩…」




 「待って…私はこんなつもりじゃ…ただかごめちゃんを助けようとしただけで…!」




 焦ってる彩は最高に可愛らしい。




 青い顔をしている彩に力強く抱き着く。




 「怖かった。彩が来てくれなかったら私は…。分かってる。これは事故で、彩は何も悪くないよ。」




 「でも…私が桐谷くんを強く突き飛ばしちゃったから…!」




 実際にはそんなに強く突き飛ばしていなかったんだけど、相当混乱してるみたい。




 「そうだね。でも誰にも言わないから大丈夫。彩の罪の半分は私が背負うから。」




 「うぅ…かごめちゃん…」




 彩の抱き締める力が強くなる。




 「助けてくれてありがとう、彩」




 「………うん」














 それからと言うものの、彩は酷く外の世界を怖がるようになり、どんどん私に依存していった。




 「かごめちゃん!おかえり…!」




 そう言って私の帰りを健気に待って出迎えてくれる彩は、まるで親を待つ子供のようだ。




 「ただいま、彩」




 「ごめんね…お金の事とか色々任せちゃって…。本当は私も外に出なきゃ行けないんだけど…」




 「彩は何も考えなくて良いんだよ。私をただいまって出迎えてくれるだけで、そこに居てくれるだけで私は幸せなんだから」




 そう言って頭を撫でると気持ち良さそうに目を細める。




 その姿は、本当に年齢が幼くなってしまったんじゃないかと錯覚する程愛らしい。




 「それに、外は危険がいっぱいだから彩は出なくていいの」




 「はーい」




 寧ろ出られちゃ困る。




 またあんな風に悪い虫が付いたりしたら駆除するのが面倒だからね。




 私はこの可愛らしい生物をずっと閉じ込めておきたい。

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