第9話 衝動

「ど、どうしたの?かごめちゃん…」




 「し、神童さん…何か気に障る事でも言ったかな?」




 突然雰囲気が変わり、かごめから溢れ出る殺気に親友である彼女でさえも身震いする。




 「あ、いや、彩を襲った奴らがどうしても許せなくて…」




 「かごめちゃん…」




 危なかった。ポーカーフェイスは得意なのに、彩の事になるとつい感情が溢れ出てしまう。




 「かごめちゃん、ちょっと私御手洗に行ってくるね」




 「大丈夫?一緒に行こうか?」




 「緊張が解れてお腹痛くなっちゃったから…大丈夫だよ」




 彼と2人きりになってしまった。


 殺るなら絶好のチャンスかもしれないが、彩にバレると確実に嫌われるし、話を聞く限り彼のクラスは私と同じユニークで能力もかなり高そうだ。




 ここは慎重に行かないと。




 とりあえず色々あって忘れていたステータスを確認する。




 ステータスオープン


 神童 かごめ


 吸血鬼 Lv5


 能力 《眷属化》 《吸血》




 《吸血》…対象の血を吸うとレベルを20とHPを1残すまで吸い取ることが出来る。(クールタイムは7日)




 《眷属化》…自分よりLvの低い相手を50%の確率で眷属にする事ができる。眷属となった者は主に従順になり、自我を殆ど失う。(クールタイムは7日)




 …ここまでおあつらえ向きなスキルがあっていいのかな?




 最初は恨んでいたサポートAIにチートスキルを与えてくれたことを深く感謝して、覚悟を決める。




 「ねぇ、桐谷君。彩が帰ってくる前に2人きりで話したいことがあるんだけど、ちょっとこっちに来てくれないかな?」




 「お、おう…」




 そう言って彼を手招きし、こちらへ誘導する。




 何を期待しているのか、今から何をされるかも知らずに警戒心ゼロで私に近寄ってきた。




 耳元へ囁くような素振りを見せつつ彼の首筋に牙を立てる…《吸血》




 「うっ、ぐあああ!」




 痛みで思わず叫び声を上げる彼の口をハンカチで覆う。




 「貴方が悪いんだよ…?私の大事な大事な彩に手を出すから…」




 人間の血を吸うのは初めてだったが、存外悪くない味に思えるのは吸血鬼の本能なのだろうか。




 これが彩の血だったらもっともっと美味しいんだろうなぁ…




 そんな事を考えながらひたすら血を吸っていると、彼はぐったりとし抵抗しなくなった。




 「ふふっ、じゃあ後は私の道具になってね。《眷属化》」




 彼の目が真紅に染まっていく。




 これは成功…でいいのかな?




 「ご主人…様…なんなりとお申し付けください…」




 良いみたいだね。




 舞台は整った。




 これで完璧に彩を私のモノにできる。




 私はHPがほとんど残っていない彼に指示を出していった。




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