第3話 過去

「また全教科満点!さすが神童さんね。皆も神童さんを見習うように!」




 教室がざわつき出す。




「また神童さんかよ…」




「住む世界が違うというか、人間が違うというか…」




「良いよなぁ。何をやってもできるんだから」




 そこには賞賛する声はひとつも無く、かごめの才能と比べられ嫉妬するクラスメイトの姿しかない。




 私は愛に飢えていた。




 みんなみたいにテストの点数を競って一喜一憂したり、一緒にご飯を食べたり、一緒に遊んだりしたかった。




 でも…できなかった。




 人は自分と違うもの、みんなと違う異物を排除したがる。




 私はいつも一人だった。




 そんなある日、私の学校に転校生がやってきた。




「はい、みんな静かに!じゃあ自己紹介して!」




「百合姫中学校から来ました!三神彩です!皆よろしくお願いします!!」




 綺麗な子だな。見るからに元気いっぱいで純粋そうな瞳をしてる…




 話してみたいけど、どうせ私とは住む世界が違うんだから関係ないか。




「じゃあどこでも良いから空いてる席に座って!」




 教師がそう言うと彼女は徐に立ち上がり、私の傍で足を止めた。




「よろしくね?」




 優しそうに微笑まれる。




「…どうして私の隣に来たの?他にも席はいっぱいあるのに」




「えっと、君が寂しそうな顔をしてたから…?それに!すごい綺麗な子の隣なんて特等席じゃん!!」




 嬉しかった。今まで私に話しかけてくれる人はほとんどいなかったし、居ても私が異端児だと分かったらすぐに誰もいなくなってしまうから。




「悪いけど、別の席にしてくれない?私は一人が好きなの。」




 だからこそ怖かった。




 どうせこの子も仲良くなっても私を避けてくるに違いないから。




 それならもういっそ最初から仲良くならない方が良い。




「へー、そうなんだ。でもやっぱり君の隣がいいな」




 全てを見透かしたような目で私を見つめる。




「そう…好きにしたら」




 私は冷たく言い放つ。




「うん!…ってまだ名前聞いてなかったね。私のことは彩で良いよ!」




 つくづくペースを乱される。




「神童かごめよ。短い間になるだろうけどよろしく。」




 どうせこの子もみんなと一緒で私を異物扱いするんだろうし、文字通り短い間になるだろう。




「なんでそんなこと言うのさー。末永くよろしく頼むよ、かごめちゃん!」




 これが私と彩の最初の出会いだった。




 それからというものの、私の予想は大いに外れて彼女は私を異物扱いしなかった。




「すごいね!かごめちゃんテスト全部満点なんだ!今度私にも教えてよー」




「ふふっ、もちろん良いよ」




 見当違いな発言に思わず笑ってしまう。




 彼女は、彼女だけは他の子とは違う。




 私を異物扱いせずに、仲良くしてくれる。




 でも、それは私だけに向けられた感情ではない。




 彼女は皆に優しくて、人気者なのだから。




 いつからだろう。


 彼女が他の子と話してるのを見ると胸がズキズキしたり、私・だ・け・を・見て欲しいって思うようになったのは。

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