竜とヘドロ
コハクと名乗った男の子は土の固さを変えることができる土の竜だと言った。
婆ちゃんがリンを拾う少し前からここに住み着いて、拾われた竜のことは気になっていたけど悪い気を感じなかったので、関わらないで番と二人でひっそりと静かに暮らしていた。
「
「人間でいうところの夫婦のことね」
「僕の番はこの沼の精霊様で本当に綺麗だったんだ」
「もしかして精霊様ってそのヘドロのうごうごしたやつ?」
爺ちゃんと婆ちゃんは二人とも首を傾げた。それから何度か目を閉じたりこすったりしてみたけど男の子の他はなにも見えないと言う。
「少し前まではこんな姿じゃなかったんだ。竜の子の雨が降らなくなって、精霊様はどんどん調子が悪くなっちゃった。世界で一番美しかったのに…こんな姿になっちゃって、最近は言葉も話せなくなって、沼もどんどんひどくなって」
コハクはポタポタと涙を流し、ヘドロはうごうごしながら足元にすり寄った。
「リンは私達も探しているけど見つからないの。雨を降らせることはできないけど、私たちが沼を少しでもキレイにしたら精霊様は少しでも良くならないかしら?」
「わからないけど、沼が濁っていって精霊様もどんどん弱っていった。ここの水がきれいになって、前みたいに生き物たちも元気になったら精霊様も元気になるかもしれない。力を貸してください」
と言って丁寧に頭を下げた。
「とりあえず、沼をキレイにしてみよう。東の国にカイボリだか、カイゴリだとかいう方法があると聞いたことがある。街に東の国出身の人がいるから聞いてみるよ」
爺ちゃんが言った。
とりあえずその日は家に帰って皆へ今日の話をしてみた。
婆ちゃんと子供たちは全員で朝からヘドロを取り除きにいくことにし、父さんと母さんは仕事のない日は手伝ってくれることになった。
爺ちゃんとアルヴァ叔父さんは明日街へ行き、東国から来た人に話を聞いてから合流することになった。
お腹の大きいフィフィ叔母さんは一人だけお留守番になってがっかりしていた。
竜と精霊様に会いたいと言うが妊婦さんにはあの臭いは無理だと思った。
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