幕間2:アメリア

 我が家に暮らす男達は穏健だ。


 父は少しくらい、いや結構怖い人でも気兼ねなく笑顔で話しかけるような警戒心のない話好きの明るい人だ。

 イーサは愛想はないけど優しい人で、困っている人がいれば話をよく聞き、手助けしているので多くの人に好かれている。

 街にいる怖そうな人も大体ふたりの友達なので、私達家族はたまにしか行かない街の人にとても良くしてもらっている。

 そんな二人が実は武術の達人だった…とかは絶対無い。母も普通の人で飛びぬけた身のこなしとか見たことない。

 弟はかわいくて、聞き訳が良くて優しい子だ。

 当人のリンも竜として、実は火を吐いたり巨大な身体から『繰り出す斬撃』とか使えないらしい。そもそも巨大ではない、猫位の大きさだ。


 いろいろ考えた結果、みんなを守るには私が強くなるのが現実的だと思い、街の守衛団の鍛錬所に通いたいと頼んでみたら家族はすぐに応援してくれた。

 守衛団の人たちも、私が家族を守りたいと話したら目じりを下げて快く参加を許してくれた。


 初めての女の子の入所ということで、私はすごく女の子として扱われた。

 軽い木刀を用意してくれ、筋力が足りないからと、力の弱い人の立ち回り方、力に頼らず相手に力を返す方法や状況判断、逃げる時間の稼ぎ方、大声で助けを呼ぶ度胸などいろいろ教えてくれた。

 私の他には少し年上の訓練生が二人いたが、二人とも私をバカにしたり見下したりすることはなく、使いやすい武器や鉄板の入った靴を一緒に考案したり、時には卑怯な手段なども積極的に考えてアイディアを出し合ってくれた。


 同年代の仲間ができ、体を動かすのはとても楽しく、いろいろなことが出来るようになりどんどん背筋が伸びていった。体が軽い。

 夢中で訓練するうちに年下の訓練生も増え、いつの間にか教える立場となり、守衛団へ正規に入団して働くことは私の自然な生き方だった。


 その間もリンの周りに危機が起こることは無く、平和な日々を過ごしていた。


 ある日聞いてみた。

「リンは悪い人達に攫われたり、人に嫌な目に合わされるかもしれないことは考えたことある?」

「私は精気を力に出来るのよ。だから悪い気は離れていてもすぐ分かるから近づかないわ。初めて街に入った頃は街の一角に怖い気があったりして、行けない場所もあったのだけど、イーサやサニーが通っているうちに少しずつ怖い気は少なくなってきて今はまったく平気よ。それに最近アメリアと一緒に街に行くと、あなたの街を守りたいという気と、街の人たちからあなたが慕われていることがとても心地よくてその力を貰っているわ」と昔と変わらない優しい眼差しと少女の微笑みを向けてくれた。



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