黒い海を泳ぎ切れ
保地一
プロローグ
時折、めぐみとデートをした時のことを思い出す。
あの時僕たちは、とある海沿いの水族館に入り、クラゲの展示コーナーを見ていた。
「何を考えているの?」
じっと水槽を見つめているめぐみにそう問いかけると、少し間を開けてからこういった。
「あのね、今は気持ちよさそうにふわふわ浮いているけど、ここに墨汁をいれて真っ暗にしたらどうなるかなって考えてたんだ。きっとびっくりするよね」
「えー、そんなこと考えてた?きっと苦しんで、外に出ようとするんじゃないかな。
でも、水槽から出られるわけじゃないし、きっとそのまま死んじゃうよ。結構残酷なこと考えてるんだね」
「こんなこと考えるなんてひどいよね。でも、あんまりのんびりと、何も考えないでふわふわ浮いてるなんて、なんだかずるいと思って」
そう言ってめぐみは、恥ずかしそうにほほえんだ。
でも、今思えば、そのとき何も考えずにふわふわ浮いていたは、僕のほうだったのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます