賢きものが読む書

@Ak_MoriMori

Ⅰ その男は語りき『この書は賢きものが読むものなり』

 おぉ。これはこれは・・・。

 あなたは、『賢きもの』を自称するおかたですね。素晴らしい!


 さて、あなたには、是非ともこの書をお読み頂きたいのです。


 オホン・・・簡単にですが、この書の由来を簡単に説明させて頂きましょう。


 この書は、ある旧家に眠っていたものなのです。

 ご覧の通り、数枚の紙からなる書で、これに値打ちはまったくありません。

 聞こえは悪いですがね、ただの紙切れですよ。


 ただ、これを見てください。この表紙を・・・。

 『賢きものが読む書』とありますね。しかも達筆すぎて、実に読みにくい。

 そうです。この書は、あなたのような方に読まれる書なのですよ。

 あなたが、いつまでも『賢きもの』であるよう、あなたの歩む道を導くものなのです。


 ああ、流石さすがは『賢きもの』を自称するお方。興味を持たれたようですね。

 おっと、待った、待った。ページをめくる前にお聞きしますがね。

 ええと、失礼なことをお聞きしますけど、聞いておかなきゃいけないのです。

 ご勘弁願います。それではお聞きしますけど・・・。

 あなた・・・本当に・・・この書を読むのにふさわしいお方ですか?


 もし、ふさわしいとあなたが思うのであれば、私は何も言うことはありません。

 どうぞ、お読みください。

 

 少しでもふさわしくないと思うか、または何か嫌な予感を感じるのであれば、読むのをやめた方がいいでしょう。あなたは、ご自分の直観を信じればいいのです。

 私は、あなたの判断を尊重しますし、別に恥ずかしいことではありません。


 さてと、どうなさいますか?

 ああ、この書に目を通すおつもりですね。


 ええ、もう、止めませんよ。

 ただ、これだけは伝えておきます。

 

 私もね、実はこれ、読んだんです。

 ただね、途中で読むのをあきらめることになりました。

 なぜって? まあ、読めばわかりますよ、読めば・・・。

 あなたには、是非、最後まで読んで頂きたいものですね。

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