第5話 ファーストエンゲージ!!




「ええと、何かな? アレ」


『腰部です。こちらが空中に出るのに合わせて、創造しました』


「すっごい赤くて、熱そうなんだけど?」


『演出です。そういうのと合体してこそ、盛り上がるのではないでしょうか』


「うん。そうだけどさ。さっきから驚きっぱなしだよ、俺」


『驚かせて申し訳ありません。ですが仕様ですので』


「いや、いいんだ。その驚きが全部さ……」


『……』


「もんの凄くさ、好みでさ、格好良くてさ、そうこなくっちゃ、ってのばかりなんだよ!! だからさ、どんどんやってくれよ!! 受け止めるし、嬉しいんだよ!!! 分かってるじゃん、ナビ子さん!!」




『教悦であるとともに、至福であり、そしてとても嬉しく思います。ここからも驚きを連発することになるでしょうが、当機の、いえ……、バディであることをお許しいただけますか?』



「あったり前を聞くなよ!! ナビ子さんは最高だ!」



 俺は心から叫ぶ。



「合体なんだろ!? 景気よく行こうぜ!!」



『……了解しました。これより、合体シークエンスを開始します。存分にお楽しみください!!』


「おうよっ!!」



『というわけで、死の覚悟はできていますか?』


「はい? なんで?」


『相対ベクトル補正。接触まで12.883秒。繰り返します。死の覚悟はできていますか?』


「だからさ、なんで?」


『この手の合体には、当然、死の危険性が伴います。そういうものです。現在確率0.00084322%です』


 極薄じゃないか。


『ですが、可能性としてあるのは事実です。この先、確率は積み重なります。よろしいのですか?』



「……、いいさ! かかってこい! その確率とやらが50でも99でも受け止める! でも100は嫌だな」



『了解しました。わたくしとしても100%は回避するよう配慮いたします。では、そろそろですよ。コール!』



 ナビ子さんの思いが伝わってくる。AIの思い? いいさ。俺は認めたんだ。バディをナビ子さんを。



「ファーストエンゲージ!!」



『AIの心を震わせるとは、やってくれますね! 復唱! ファーストエンゲージ!!』



 どっごおおぉぉん!!!!



 なんかとんでもない重たい響きを伴わせ、コアユニットが赤い物体に激突した。



『エンゲージ確認。各部ユニットコネクト……、確定。動作正常。合体シークエンス続行可能。お見事です』


「ありがとう。結構いい衝撃だったけど、それがまた醍醐味だねっ!」


『まったくもって、仮適合者です。いえもう、仮は外しましょう。見事な適合者ですよ、アルファンド』



「そっか、そっかありがとうナビ子さん。じゃあ、どんどん行こうよ!」




『了解しました。腰部ユニット接合完了。ベクトル変換、慣性制御2.8926%、上昇落下加速開始。成層圏突破まで14.837。両脚部創成開始。さあ、どんどん行きますよ!』


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る