黄泉の国から内定もらった!
るみや きぐ
彼岸
プロローグ「終幕」
「いやー…今日はめっちゃ運良かったなー」
そんなことを言いながら帰路へついていた。
今日は大学に行ったら気まぐれに使った階段でぱんちらを拝むことができ、出席もテストもかなりギリギリだった単位もパスすることができ、自販機ではあたりが二本出て、適当に引いた十連ガチャで最高レアが二体もでた。
さらに帰りの商店街で買い物ついでにもらった福引券で温泉旅行が当たった。
「…本当に運良すぎでは?」
ここまで幸運続きだと逆に不安になってくるのが人の性である。
自転車に乗りながらいつもの帰り道である川沿いの土手、枝垂桜が生えて下の川辺には彼岸花が植えてある道を通る。四季の変化が感じられる趣深い道だ。
…まあ自分には趣とかよくわからないが。
(にしても夕焼けがきれいだ。すこしまぶしいけど。)
その日の天気は良く覚えている。太陽に照らされ赤く映える空、それにかかるオレンジの雲。夕焼けの理想形であった。
信号で止まる。正面に太陽。
まぶしくて少しうつむきながら考えた。
(もしかしたら運良すぎて今日死ぬなんてこと…ないよな)
我ながら脈絡のない考えだった。
普通に考えてありえないー、少し運がよかっただけで死ぬ兆候になるとは誰しも本気で思ったりしない。死はもっと唐突に来るものである。
そう、唐突に。
信号が変わったらしい。まぶしいのでよく見えない。
目をあまり上げずにペダルを漕ぎ出した。
しばらく、いや数秒か。漕ぎ出してから周りの人たちの声が大きくなったような気がした。
特に気にせず進み続ける。
その時、女性の大きな声が聞こえた。
なんて言ったかはわからない。が、妙にその声のことが気になってしまい、顔をあげる。
目の前に光っていたのは、赤。赤の光が二つ。
二つ?
目の前の異変に気付きブレーキをかける。
が、遅かった。
何かを思う前に側面からの大きな衝撃で思考と身体のすべてが吹き飛んだ。
初夏、夕暮れ時。
唐突に一人の人生が幕を閉じた。
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