第10話

帰ってきたオオダの様子は特に変わったこともない。


まぁ、気にかける事でもないだろう。


気を取り直してニシヤマから貰ったお駄賃で早速銭湯にいこう。

冷えて埃まみれの体を綺麗にしたい。


そう考えながら、駅からそう離れていない銭湯に歩いて向かう2人。

最近の銭湯は本当に…ほんとぉぉぉぉに綺麗で観光地のホテル顔負けの過ごしやすさがある。

今回は和風な感じの建物の銭湯で3階建ての建物で2階まで駐車場で3階が受付と休憩所とお食事処があった。


何やらライトアップされたイベント感Maxの岩盤浴が決められて時間でやっているようだが…今回は時間も合わないので機会があればと、さらっとポスターを眺めて女湯に向かうための暖簾を潜る。


温泉や銭湯が有名な場所ではなかったから、期待はしていなかったが…種類も豊富で露天風呂にあるお風呂の上にある屋根はお城や屋敷のものを連想させるようなもので心がときめく。



「…一番先に体を洗う時ってかけ湯ってした方がいいのだろうか?」


「かけて損するものじゃないし、かけた方がいいんじゃない。」



真剣な表情でかけ湯コーナーみたいな所を見つめるオオダ。

そんな彼女の横で淡々とした様子でミナトはかけ湯をして体を洗うシャワーなどがあるゾーンに向かう。



「そういや、オオダドン…銭湯は風呂あがりに体って洗ったほうがいいの?」


「え、かけ湯云々を質問したウチに聞く?」




わしゃわしゃと髪の毛を洗いながらミナトはオオダに話しかけた。


えっ?

と素っ頓狂な声を上げてオオダはミナトを見る。


「たしか、温泉とかもそうだけど風呂上りにシャワーを浴びるとお風呂の効能とか流れるらしいから洗わない方がいいらしいよ。」



ウーンと少し声を上げた後にそう答えたオオダ。

なんやかんやで知ってるやんという言葉を胸に秘めてシャワーで洗った体の泡を洗い流した。



「まぁ、そんな些細な事を気にする位ならこうゆう感じの温泉や銭湯に行かなければいい。

貸切風呂にでもいってくれ。」




可愛い顔してなんてことを言うんだこの女。

やれやれとぼやくミナトを満足そうにみたオオダは、鼻歌交じりで湯舟に向かう。



先ずは室内の風呂で温まってから露天風呂行くのが鉄板な2人で特に何か言うこともなく、泡風呂に向かう。

適度な温度のお風呂は疲れた体に大変沁みる。




ふへぇぇ。

そう乙女とはかけ離れは声をあげるミナト。

普段表情が豊かではない彼女も、この瞬間は幸せそうに表情が柔らかく緩む。




「ミナト、背中を向けなさい。

ウチが肩を揉んでやろう。」



人が周りにいないことを良いことに本人の同意とは裏腹にくるっと回転させてオオダはミナトの肩を揉み始める。




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