第8話


ミナトの言う通りだな。

反省と自己嫌悪で下を向いてモヤモヤとしていたカワノを覗き込むようにオオダはしゃがんでいた。



いきなりの事にうぉっと声を上げたカワノ。




「どうかしたんですか?」


「いや、昨日寝不足だったようで少しボーッとしてただけです。

気にかけてくれてありがとうございます。」



カワノの返事を聞いたオオダは、そうですかと呟き背伸びをするような感じでゆっくりと立ち上がった。


背伸びをすると服の上からでもオオダの胸の膨らみが目立つ。


さっき、ミナトさんに注意されたばかりじゃん。

自然と視界に入ってしまったが、それでもそう見てしまった事に再び自身に嫌悪感を抱いてしまった。



「…ミナトに何か言われたんですか?

ミナトが何かを強めに言う時は、本当に大事な事だけです。

ただ、あのお馬鹿さんは感違いをすることもありますのであまりにも酷い時は私に行ってください、

粛清しますから。」



オオダは右手を曲げて力瘤をムンっと作りニカッと笑う。

小柄な女性がそんな動作をしていると何だか凄く愛らしい。


自分は、ロリコンな筈はないのだが…。

カワノは顎に手を当てて唸るような感じでそう考えた。



カワノの動作を見てオオダの脳内に稲妻が走った。


親しそう話す。


メッセージを頻繁に飛ばす。


2人の視線がなにやら合っている


ミナトにキツく言われて傷つく。



もしかしてっ…もしかしてっ!!

そんな勘違いを生んでしまったオオダは、興奮する気持ちを抑えて菩薩のような笑みでカワノの肩を叩く。


身長差があるために、涼しげな表情とは裏腹に足はプルプルと必死に背伸びしている。



「…私にはわかりました。

大丈夫です、私がなんとかしましょう!」


 

「はぁ…ありがとうございます。」



友の春が来るなら一肌どころじゃなく沢山脱いでやろうじゃないか。

そう張り切りふんすと鼻を鳴らすオオダ。


少し凹んでいるだけで励ましてくれとか、なんていい人なんだ。

そう惚れ直し顔を赤面させるカワノ。



話が嚙み合っていない2人はそのまま、ニシヤマの所に戻る。



「2人は高校からの付き合いなんですか仲がいいですね。」



荷ほどきをしながら、カワノとオオダが楽しそうに話していた。

その様子をニシヤマとミナトはニッコリと見ていた、極度の人見知りのカワノが初対面の人とあんなに会話をしている。


気になる相手であるオオダの会話を楽しむカワノだが、オオダはミナトとくっ付けるための情報収集の気持ちで話をしていようだ。


持ち前の記憶力でオオダの会話から必要そうな情報を記憶して作戦を考えている。

どうしてこの優れた記憶力あってオオダは方向音痴なのだろうか…それはミナトのもつ最大の不思議だった。


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