第7話


「旅行かぁ…いいね。

行きたい場所とかあるのかな?」



「そうですね…雪が降る前に中山峠で山道の経験をしつつニセコを楽しむのもいいですし…高速道路の練習がてら十勝にいくのもいいですし…迷いますね。」




ニシヤマはそんな話を笑って聞いていた。

そして札幌の近くでの運転の練習にしても近すぎず遠すぎずな所の為ちょうど良いねとも言ってくれた。



「ニセコも十勝も温泉もあるし、食べ物もおいしいしワイン工場もあるしいい所だよね。

美瑛も行ってみるといいよ、昔仕事でいった事があってね…オシャレなカフェがたくさんあってそこの自家製パンがおいしかったよ。」




パンというワードに反応したのようで助手席に座っていたオオダがガタっと動く。

彼女はパンが好きで推しのパン屋を見つけると吸い込まれるように言えるほどだ。



気持ちはわかるが…運転中だ。



「ステイ。」



このやり取りも慣れたものでミナトの一声でオオダは静かになる。

やれやれとふぅ…とため息をいてミナトは口を開く。



「何も誘わないって言ってないでしょ。

帰りによる銭湯でお風呂に浸かりながらゆっくりと話しましょ。

リクエストがあれば、余程の事が無い限りダメって言わないから遠慮せずにいって。」


「うん!」



キラキラと花が浮かびそうな眩しいオオダの笑顔にニシヤマも思わずニッコリ笑った。


後日、突然送られたシシャモという一言のメッセージで大冒険することになるのをまだミナトは知らない。



カワノと合流すると、ニシヤマはカワノの肩を叩き笑い出した。



「カワノ君、ミナト君たちはこれが終わった後に銭湯に行くんだって俺達もいくか?」



冗談交じりの言葉なようで言い終わった後に荷物を部屋に運んでいく。

その言葉に食いつくようにカワノはバッとミナトを見る。


長引く思春期のカワノの考えていることはわかる、風呂上りの少し火照ったオオダを見たいのだろう。



高校生かよ。

そう考えながらため息をついたミナトがカワノに小さく耳打ちする。



「本人は気にしないと思いますけど、本気じゃない下心だけの気持ちだったら私は誘う気は無いですからね。」



ギロリとミナトは慣れない睨みをきかせて、カワノを見た。

同じ職場にいても見たことのない表情にタジタジになりながら分かりましたと答える。



カワノの返事を聞いて満足したミナトは、パンパンと自分の頬を叩きいつもの気の抜けた表情に戻り荷物を持ってニシヤマの所に向かう。







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