実はね…。

星ぶどう

第1話

 4月になった。今日から僕は高校生になる。

 「友達できるかな?できれば彼女もできないかな〜。」僕はこれから始まる日々に期待でいっぱいだった。

 入学してから1週間はオリエンテーション期間になる。1年生はクラス間の仲を良くするために、この1週間はレクをやったり班を作ってグループワークをやったりした。そのおかげで友達が3人できた。

 オリエンテーション期間が終わって2日後、帰りのホームルームが終わった後友達3人に声をかけられた。

 「なあ、これから俺らでファミレス行くんだけど。良かったら一緒に来ない?」

 「うん、行く行く!」即答だった。まだ知り合ってそんなに経っていないのに誘ってくれたことが嬉しかった。僕らは急いで支度をして近くのファミレスに向かった。

 席について早速メニューを見た。

 「何にする?」友達Aが言った。

 「そういや俺、ちょっとおすすめがあってさ。ここの生姜焼き定食がマジで美味いんだよ!」友達Bが言った。

 「じゃあ、俺生姜焼きにするわ。」

 「俺も生姜焼きにしよ。」

 どうやら友達3人は生姜焼き定食にするらしい。

 「直哉も生姜焼きにするだろ?」

 もちろん僕も生姜焼きっ!と言いたいところだが、

 「いや、僕はオムライスにするよ。美味しそうだし。」

 「あそー、まあ良いけど。後でくれって言ってもやらないからな。」

 「別にいいよ。こっちも後で欲しがってもあげないよー。」

 「何だよそれ。ははっ。」

 僕の小学生みたいな声に皆は笑った。僕も笑った。この瞬間が最高だった。

 30分くらい経って料理が運ばれてきた。生姜焼きはやはり美味しそうだった。でもここは我慢。僕にはオムライスがある。

 食べ終わってから20分ほど話した後、僕は店を出て友達3人と別れた。

 「今日は楽しかったよ。また誘ってよ。」

 「おう、この辺飲食店多いしな。全部制覇しようぜ。またな。」

 これが僕の高校生活最初の思い出。僕はこれからも友達3人と仲良くやっていこうと思った。オムライスは美味しかった。

 それから1週間が経ち、僕はまた友達3人にご飯に誘われた。今度はラーメン屋に行くらしい。

 うーん困ったな。でも、まあ何とかなるか。

 「うん良いよ、行こう!」僕は誘いにのった。

 帰りのホームルームが終わり、僕らはラーメン屋に向かった。

 席についてメニューを見た。まあ予想通りというか、やはりラーメンばかりがメニューに並んでいた。

「なあ、ここはなんかおすすめないの?」

 「いや、ここは初めて来たからわからない。」友達Bが言った。

 「そ、まあいいや。じゃあ俺とんこつ醤油。」

 「俺味噌。」

 「俺も味噌かな。」

 3人はすぐに決まった。さあ困った、どうしよう。皆僕待ちだ。

 「直哉はどうするんだ?」

 「うーん、そうだなぁ。」

 僕は悩むふりをしてメニューを見た。ざっと見ているとメニューの最後の方に僕の求めているものが見つかった。

 良かった、あった。

 「僕チャーハンにする。」

 皆は驚いた。予想通りの反応だ。

 「え、ラーメン屋なのに。」

 「うん、僕チャーハンが食べたいんだ。」

 「そう、まあ良いけど。後で味見とかさせないからな。」友達Aが言った。

 「僕もあげないよー。」

 僕らは笑った。やっぱりこの時間が楽しい。この3人と過ごす時間が。

 次の日、友達3人が教室の隅で話していた。

 「なあ、直哉ってちょっと変じゃないか?」

 「確かに。俺のおすすめも断るし、ラーメン屋なのにラーメン食べないとかおかしいよ。」

 僕は自分の席で読書をしていた。だが僕はあくまでも読んでいるふりをして友達の話を聞いていた。どうやらそろそろ僕を疑い始めたらしい。まいったな。

 「わざと俺らと違うメニュー選んでるのかもな。みんなと同じが嫌なタイプ。」

 「かもな、もう一回誘って試してみようぜ。」

 おっ、どうやらまた食事に誘ってくれるらしい。さあ、次は何かな?

 僕は期待と不安で1日を過ごした。

 放課後になり友達3人が僕のところに寄ってきた。

 「なあ。2日連続になるけど、今日も飯行かないか?」

 「うん良いよ、どこ行くの?」

 「それは行ってからのお楽しみ。」

 僕は少し不安だった。だがここで断ればこの3人と縁が切れる可能性もあるので、誘いにのった。

 僕らが向かったのはカレー屋だった。ラッキー。

 席について僕らはメニューを見た。どうやらここはカレーライスの他にカレーうどんやカレードリアなどもあるらしい。

 「じゃあ俺、肉三昧カレー大盛りな。」友達Aが言った。

 「俺も肉三昧カレー大盛り。」友達Bが言った。

 「俺も肉三昧大盛り。」友達Cが言った。

 全員が全く同じメニューを選んだ。だが今回は大丈夫だ。

 「直哉はどうするんだ?」

 「僕も肉三昧カレー大盛りかな。」

 「えっ!あ、そうなのか。」友達3人は少し驚いた様子だった。

 その日も食べ終わってから、他愛のない話を30分ぐらいしてから解散した。

 次の日、友達3人はまた教室の隅で話していた。

 「直哉さ、やっぱり俺らとわざと違うもの頼んでるわけじゃなさそうだな。」

 「でも逆に昨日のことがたまたまだったのかもしれない。」

 「そうだな、もしかするとこの話聞かれてたかもしれないしな。」

 そう言うと友達3人はこっちを見た。僕は聞いてはいたが読書をしているふりをした。まだ僕のことを疑っているみたいだ。せっかくできた友達だ。できればずっと友達でいたい。仲良くするには隠し事は良くない気がする。だがこれは言えない。絶対に。

 「こうなったらとことん試して実験だ。」

 それから僕は1ヶ月の間に3回ご飯に誘われた。

 まずはイタリアンレストランに行った。友達3人はパスタを食べたが、僕はドリアを注文した。その結果友達3人が出した結論は、僕はご飯ものしか頼まないこと。まあ確かに続いていたか。

 次はハンバーガー屋に行った。そこはご飯ものがないのでどうなるかを見たかったのだろう。友達3人はチーズバーガーにして、僕もチーズバーガーにした。その結果から友達3人の仮説は否定された。

 最後は少し無理をして回転寿司に行った。きっと皆は驚くだろう。なんとその時僕はお寿司を全く食べず、茶碗蒸しとフライドポテト、あと期間限定でサーモンのグラタンがあったのでその3つを食べておしまいにした。回転寿司に来たのにも関わらず、お寿司を一皿も食べない。しかもご飯ものも一切食べない。友達3人はもう訳がわからなくなり、僕に対する実験をやめた。

 その日以来、僕らは普通に休み時間にも喋るようになった。悩みが消えたせいか、友達3人は生き生きしていた。そう、このままでいい。このまま楽しい日が続けばいいと思っていた。

 回転寿司に行ってから2週間が経ち、僕は久しぶりにご飯に誘われた。

 「どこ行くの?」

 「和食レストラン。」

 「わかった、行く。」久しぶりに誘われたので、僕は何も考えずに返答してしまった。だが、それがいけなかった。

 帰りのホームルームが終わり、僕らはレストランに向かった。

 席について僕はメニューを見て思い出した。もしかすると、ここには僕の食べられるメニューが無いのではないかと。

 「じゃあ俺、季節の天ぷら御膳。」友達Aが決まった。

 「俺は唐揚げ定食かな。」友達Bも決まった。

 「俺は、母ちゃんのハンバーグ定食。」友達Cも決まった。

 さあ、あとは僕だけだ。どうしよう。

 「直哉はどうするんだ?」

 「えっ!えーっと、僕はね。」

 僕はメニューを片っ端から見た。もしかするとカレーがあるかもしれない。そう思ったが、やはり和食屋には無かった。詰みだ。

 「で、どうするんだよ。」友達Aは少し怒り気味で言ってきた。

 これ以上は待たせられない。仕方ない、言うしかない。正直に言えば分かってもらえるはずだ。

 「僕、この店で注文できるものがない。」

 「えっ!」友達3人は驚いた。

 「それどう言うことだよ。」

 「実はね、、、僕お箸が使えないんだ。」


 


 


 






 




 

 

 





 

 

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