風車の羽下で待ってます

@sea-bream

第1話 風車

 小さい頃の私は、その風車が好きだった。

 車の窓から身を乗り出す。眺めた目の先には、海岸沿いに連なる、巨大な風力発電機が

聳え立っていた。

 外から入り込む風には塩気があり、口の中がしょっぱくなる為口を紡ぐ。照りつける日差しから目を守るため、小さい両手で影を作った。

 そんな必死な姿の私を見た両親は、笑っていた。

 そう、私は必死だった。

もう一生見る事は無いと知りながら、今この瞬間を目に焼き付けて置きたかったのだ。

 

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