第20話 剣の練習
白兎亭の中庭。練習用に木で作った剣を手に持って構える私とカイ。
両手でつかんだ剣の柄を利き腕側の胸の前に置き、剣を垂直に立てて構える。
カイが私に向かって剣を振り下ろす。体も前傾姿勢で足を大きく踏み出してくる。動きが速い。
私は剣で防御しつつ素早く横に動いてカイの攻撃を避けると、カイが体勢を立て直す前にカイの横を目指して跳躍。上には飛ばず前に飛ぶ。カイの斜め後ろの位置で着地。カイはすぐに振り返ろうとするが、さらにカイが剣を持っていない左側に飛ぶ。着地して振り返るとカイの背中が正面に見えるので、剣を突きの構えにすると前に突撃。カイの背中に木の剣の先を突き当てる。
「おお」
周りでみていたやつらが声を出す。
「速えーな」
「あの動きは人間じゃねえ」
「猫人間の運動能力はすごいな」
「ああ、大したもんだ」
カイと剣の練習を毎日やっているためか、私が剣士の格好をしていてもあまりバカにされなくなった。別に気にしていたわけではないが、静かな方がいいに決まっている
「見事な動きだ」
振り返るカイ。
「そうだな」
私もそう思ったのでそのようにこたえる。
「防具を付けている相手の場合は、今の場所だとあまり効果はないことを覚えておいた方がいい」
カイが自分の背中の方を指さす。それはその通りだが。
「カイは防具を付けていないように見えるが」
率直な意見をいってみる。
「なるほど。それで背中を狙ったということか」
「そういうことだ」
実際その通りなのだ。
「では、お見事、というしかないな。ちょうど心臓の真後ろだ」
気づいていたか。
「ああ、それを狙った」
「それは大したものだ。だが、このあたりにはあばら骨があるので、突き刺せるかどうかはわからない」
「それはその通りだな」
そこまでは考えていなかった。
「後ろを取ったなら、骨のないこのあたりを突くのが良いだろう」
そういうとカイは背中の腰のちょっと上あたりを手で触る。確かにそのあたりには骨がない。
「そうしよう」
「明日からは防御を練習してみようか」
「よろしく頼む。盾も作ってもらっているので持ってくる」
「盾というのは防御に使うと思っている者もいるが、実際は武器のような使い方をするんだ」
「武器? そうは見えないが」
「盾は、そうだな、相手とぶつかる武器、相手を殴る鈍器のようなものなんだよ。盾で体当たりしたり殴りつけたりして相手の体勢を崩して隙をつくり剣で切る、という感じだな」
盾を押し付けるような動作をするカイ。
「なので、君のように体が小さいとこういった使い方はできないし、相手の攻撃を受けるにしてもやはり体が小さいから体ごと跳ね飛ばされてしまうだろう」
それはその通りだ。
「だから、左腕に取り付ける防具のような小さな盾があるからそういうのが君にはいいと思う。軽いし君の運動能力を損なわない」
私が持っている盾はまさにそのような形だ。
「私が持っているのは左腕に取り付けることができるものだ。まあ、明日持ってくるから見てみてくれ」
カイがうなずく。
「後2日でここの10日分40シルバといくらかの余裕ができるから、ここでの仕事は終わりだ」
ついにギルド本部の仕事を引き受けるわけだ。
「そうなのか。この朝の練習も終わりなのか?」
「ここにいる間は朝食の後の練習は続けるつもりだ」
後12日か。それだけあれば一通りの剣術は教えてもらえるだろう。
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