富津殺人事件

鷹山トシキ

第1話 造海城の戦い🏯

 第3次世界大戦戦争が終わってから数年後、元日本軍兵の相良昌宏さがらまさひろは元中国兵の男を探していた。それは頭の皮をはがされかけたことに対する復讐を果たすためである。ある日、カジノでイカサマを働いたせいで首をくくられそうになっていた男、渋谷慧しぶやけいがその元中国兵だと気付いた相良は、後で自らの手で殺すために渋谷を助け出す。そして素性を隠して渋谷とその相棒の中村長三なかむらちょうぞうの3人でチームを組み、銀行強盗を計画する。


 目的の銀行がある富津市に着いた3人はキャバクラで働くえみという子持ち女と出会い、中村は咲に一目惚れする。3人が銀行に押し入ろうとすると別の無法者が金を強奪して逃げ出して来たため、そのまま銃撃戦となる。そんな中、相良が撃った弾が偶然咲の息子、謙吾けんごに当たり、謙吾はそのまま亡くなる。

「謙吾は来年で7歳になるはずだった」


 罪悪感に苛まれた相良は、チンピラに襲われる危険を顧みずに亡き夫が眠る鋸山のこぎりやまの墓に謙吾を埋葬すると言い張る咲を護衛しようとするが拒まれる。

 鋸山は、千葉県安房郡鋸南町と富津市との境に位置する標高329.4メートルの山。索道として鋸山ロープウェーが通る。日本寺、地獄のぞきなど観光地化されている。日本名山図会の日本80名山、日本百低山に選定されている。

 正式な名称は乾坤山けんこんざんという。乾坤は天地の意。日本寺の山号となっている。


 山は凝灰岩から成り、建築などの石材として適している。そのため古くは房州石と呼ばれ、良質石材の産地として、江戸時代から盛んに採石が行われた(石切場跡が現存する)。結果、露出した山肌の岩が鋸の歯状に見えることからこの名で呼ばれるようになった。1862年9月8日(文久二年八月十五日)、外交官アーネスト・サトウは、イギリス駐日公使館の通訳生として赴任するため横浜へ向かう途中、江戸湾(東京湾)洋上の汽船ランスフィールド号から、右手に鋸の歯のような恰好をした鋸山を眺望した旨、著書に記している。採取された石材は、幕末から明治、大正、昭和にかけて、主に横須賀軍港や横浜の港湾設備、東京湾要塞の資材として利用された。また、靖国神社や早稲田大学の構内にも利用されている。自然保護規制の強化により1985年(昭和60年)を最後に採石を終了。石切場や石材搬出路の跡は産業遺産として観光資源になっている。


 江戸期には谷文晁が『日本名山図会』において日本80の名山のうちに数えたが、深田久弥が改めて日本百名山を選んだときに選に漏れ、現在では小林泰彦選の日本百低山に入っている。


 相良は渋谷と中村を連れて咲を追い、窮地を救う。3人は咲に同行することになるが、7月7日夜、咲に襲いかかった中村を相良が追い出すと、渋谷も密かに逃げ出してしまう。


 残された2人は謎の集団の妨害に遭いながらも何とか造海城つくろうみじょうにたどり着き、咲の亡き夫の墓を見つけ出す。

 造海城は、真里谷氏によって築かれた山城。里見氏の支配下に入った天文6年(1537年)以降、里見氏の対北条氏最前線として重要な役割を果たした。

 浦賀水道に面した南北に伸びる独立性の高い丘陵上に占地し、西面を浦賀水道、北面を白狐川に守られた天然の要害である。


 郭は尾根上に四郭を設け、西側に伸びる支尾根上及谷の上部に郭が重ねられている。東側の地形は西側に比べて起伏に乏しいが、三柱神社脇の尾根筋及び外部へと繋がる尾根筋に普請が認められる。後者は灯篭坂大師から伸びる大手道を、後者は延命寺・三柱神社にあったと考えられている居館をそれぞれ守る目的で設けられたものと考えられる。この他に、大手尾根の付け根付近に木出根と呼ばれる場所があり、腰郭が設けられている。


 ところが、そこに銀行から金を奪って逃走中の渋谷と中村が現れる。中村はもはや不要となった渋谷を殺すように相良に命令する。これでやっと復讐が果たせると意気込む相良を、咲は愛を告白することで止めようとするが、相良は頭に深く残る傷痕を咲に見せると、渋谷を殺しに向かう。しかし、パニック障害のためにまともに銃の撃てない相良は渋谷を撃ち殺すことが出来ない。そんな相良に業を煮やした中村は渋谷を撃ち、咲を賭けて相良に決闘を挑むが、渋谷に後ろから撃ち殺される。相良は渋谷に詰め寄り、正体を明かした上で渋谷の頭の皮をはごうとするが、咲がそれを止める。

「そんなことして人生を棒に振るわないで!」

 そこに中村らを追って来た、千葉県警の安藤卓也や榎本織江たちが現れ、渋谷を連行する。相良と咲は謙吾の亡骸を父親の墓の隣に埋葬すると、手を取り、2人でその場を後にする。

  

 

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