なな

「ミナト、何書いてるの?」

「書類」

 見ればわかるんだけど、と何の書類か覗き込もうとすると。

守秘義務おしえない

「はいはい、わかったよ」

 無理に人様の書類を見るような趣味はないのでベッドに腰掛ける。

 珍しく書類と戦っているミナトを見るとなんだか気味が悪いと言うか。

 早く終わって、一緒に遊びたいと思ってしまう。

 書類なんかに独占されたくないだなんて、よこしまな思考が浮かんでくる。

 いや、書類に対して嫉妬するだなんておかしい発想だと思うけど。

「終わったよ」

 カバンに書類をしまいながらミナトが声を掛けてくる。

「お疲れ様、ちゃんと出来た?」

「当然」

 ミナトが隣りに座ってくる。

「寂しかった?」

「……まぁね」

 見透かされてる気がして。

 とてもとてもドキドキしてしまう。

 こいつは一体何がしたいんだ、何をしに来たんだ。

「書類頑張ったのでお昼ご飯頑張りたくないです」

「じゃあなんか食べに行く?」

 首を横に振るミナト。

 適当にそうめんでも茹でるか、とベッドを立とうとすると腕を掴まれる。

「どうしたの?」

「いや……なんでもないけど、なんでもなくない」

 ベッドに座り直す。

 改めてミナトの顔を見ると、精神的な疲れが溜まってるように見えた。

「お昼寝でもするか?」

「……そうする」

 ミナトはそのままベッドに寝転がりながら僕を抱える。

「なんで?」

「さぁ、なぜでしょう」

 まぁいいか、と二人で天井を仰ぐ。

 すっかりミナトと二人でベッドに横になると言う事が染み付いてしまい何も考えなくなってきた。

「ミナトは本当にマイペースだよな」

「己を曲げていないと言うことである」

 貫き通し方がおかしい気がするけど、それを今言ったら頭突きでもされそうなのでやめた。

「ねじれ過ぎなんだよいつも」

「そう言う意見もあります」

 僕自身がねじれてるのは自明と言うか。

 今こうやってこじらせにこじらせた恋愛対象が横に居るというのに。

 これでいいんだと無理やり納得させてるわけでもなく。

 ただ、隣にミナトが居る。それだけで良いと思っている自分が居る。

「元気になったかー?」

「まぁまぁ、かな」

 元気になれと足を蹴られる、理不尽。

「ミナトは僕に何を望んでるのさ」

「一刻も早く元気になれと申しておるのだ」

 ……元気じゃないように見えるのかな。

 それとも自分が気がついてないだけで、実はボロボロだったりするのだろうか。

 わからない、自分のことも、ミナトのことも。

 どうすれば良いんだろうか、一週間過ごしてきてもわからない。

 いや、実際中身はだらだらとだらけているだけで何も変わりゃしないのかも知れないけど。

 それでも、ミナトが来たのには理由があるのだろうから。

 その理由に対して僕はちゃんと答えが出せるのだろうか。

 制限時間である夏休みの間に。

 この緩く何も傷つかないサナトリウムの中で。

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