第三十六話「学園決戦・決着編」

 Side 緋田 キンジ


 ゼレーナとの戦いを終えて、すぐさま敵の主力部隊との戦いに向かう。


 激しい大乱戦みたいだが此方が優勢だ。


 反乱軍や増援部隊、第7偵察隊の面々や味方のリビルドアーミーなどの世紀末世界の連中も頑張っているらしい。


『見つけたぜ!!』


『お前か!!』


 三将の一人、火のマグナスがやって来た。

 

『悪い事は言わねえ、軍を引きあげな』


『それが出来ない立場なんでな――』


『あの皇帝陛下だもんな』


 そりゃこれだけの大兵力を動員して負けましたなんて事になったらどうなる事やら。


『俺は帝国で成り上がるためならなんでもやった!! 帝国を変えられると信じて!!』


『チッ!!』 


 攻撃の勢いが増してきた。

 こいつ――まさか――


『お前、死ぬつもりか』


『優秀だからって出世できるワケでもなく、無能だからと言って出世できないワケじゃない。俺はここまで来れたのは――ただ、運が良かっただけだ』


『ならフィアに懸けてみないか?』


『あの坊ちゃん皇太子にか?』


『ああ。良くも悪くもこの戦いでこの国は変わるだろう。一先ず生きて身の振り方を考えてみろ』


『またお前達を襲うかもしれんぞ?』


『その時はその時だ。その時になってから考える』


 俺はそう返した。

 

『いいのかよ隊長? 倒せるウチに倒さなくても』


 キョウスケがそう言ってくるが、


『あの世紀末世界とは勝手が違うんだ。それにこの世界は帝国だけで成り立ってるワケじゃない。帝国を打倒したとしても帝国に恨みを持った連中が牙を向いてまた混乱が起きるのは目に見えている』


『そのために俺達は殺すに殺せないってか?』


『それもあるがな――もう疲れたんだよ。戦いのための戦いなんて奴はな。難しい事はよく分からんが戦いは終わらせるもんだろ。戦うにしても飯や給料のために戦いたい』


『――クックックックッ……ハッハッハッハッハッ。言ってる事はアレだが気に入った。いいぜ、今回は退いてやる』


 どうやら矛を収めてくれるようだ。


『話はついたようじゃな』


 今度は三将の一人、土のグレイが現れた。


『じゃがワシは最後まで、帝国の人間として戦うとしよう』


『爺さん――』


 触れたら切り裂かれるような覇気を身に包んだ土のグレイとの対決。

 これは一筋縄ではいかなそうだ。

  


 Side フィア


『もうやめてくださいフェインさん!!』


『フィア皇子!! 迷いは不要です!! 己の大義を成したいと言うのなら私を斬りなさい!!』


 僕はフェインさんが操るマハドーラと対決する。

 流石に強いが――深い悲しみを感じる。


『フェインさん! それじゃ皇帝と変わらない! アナタだって本当は何が正しくて何が間違っているのか分かっている筈だ!!』


『しかし――』


『だから殺さない!! 殺してたまるか!!』


『フィア皇子――』


『フェインさん。私からもお願いします』


『リーナ!?』


『リーナ皇女まで!! このような場に!!』


 リーナがこんな場所に。

 周囲を固めているのはフェインさん達の部下?

 



 Side 緋田 キンジ


『クッ、機体が動かん……』


『機体が頑丈だったからな。加減もある程度効いた』


 行動不能までどうにか追い込んだ。

 それまでの暴れっぷりは凄いもんだった。

 アインブラッドじゃなけりゃ死んでたかもな。


『少し頭を冷やしな爺さん』


 俺は呼び掛ける。


『――敗北、じゃな』


『ああ』


『だがこれで良かったかもしれぬ。グラン皇帝陛下は異世界進行を目論んでいたが、ここまでの大敗をすれば流石に取りやめるじゃろ……じゃが根本的な解決にはならん』


『どうするつもりだ?』


『ワシは――分からなくなったよ』


『……』


『今この帝国――いや、世界は危機に瀕している――じゃが皇帝陛下はそれを認めんじゃろう――恐らく最後まで戦う事になるだろう』


『だろうな』


『ワシの命はどうなっても構わん。その代わり臣下達の、民草の身の安全を保障してくれ』


『最初からそのつもりだ』


 気が付けば戦闘は終結していた。

 帝国は大損害を被り、三将は降伏と言う形でだ。


 そのため帝国の異世界への遠征は頓挫する事となる。


 そして――

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