第三十話「援軍」

 Side 緋田 キンジ


 デスモンドとモンスターの群れではなく、デスモンドとモンスターの群れと俺達との三つ巴戦でもある。


 たんなる、なろう小説のヤラレ役ではないらしく、デスモンドは距離を離してモンスターに襲われないように遠距離からモンスターをも巻き込んで撃ちまくっている。


『この襲撃は単なる偶然ではありません!! 恐らくモンスターを操って僕達に嗾けてるんだと思います!!』


 フィアの助言に『流石ファンタジー、そう言う事もできんのね……』と俺は呆れを漏らす。


『ヴァイパーズやリビルドアーミーまで来やがった!!』


 すっかりやられ役が板についてきたヴァイパーズやリビルドアーミー。

 

『こいつらもしかすると狭間駐屯地みたいに拠点事飛ばされてきた感じかな?』


 そう言うとキョウスケに『考察は後だ隊長。今は生き延びるのが先決だ』と言われた。 

 確かにそうだな。


(だがこのままだと消耗戦になるな――)


 などと考えつつドラゴンを相手取る。

 

 このまま戦いが長引けば村が廃墟どころか何も残らない焦土と化す。

 なんとかしなければと思うが現実は非情だ。


 などと諦めていたその時――


『反乱軍の増援です!!』


『なに!?』


 驚くデスモンドたち。

 どうやら反乱軍の増援が来たようだ。


『こいつら学園を拠点にしている連中か!?』


『学生連中どもに何が出来る!!』


 などと息巻いている。

 正直に言うと帝国兵の連中には同感だが――同時にこれまでの経験則で当て嵌めるのも危険だと告げている。


『フィア!! 助けに来ました!!』


 セシリー・ゴルディアーナを筆頭に援軍に来た反乱軍の部隊が戦闘開始と同時に次々とヴァイパーズやリビルドアーミー、帝国兵が爆散していく。


 やったのはセシリーを筆頭にフィアと同じく特別仕様のマジックメイル達だ。


『聞いていたけど本当に正体明かしちゃったんだね、フィア。まあらしいっちゃらしいけど』


『エリオット――』


 ややこしいが――援軍に来たマジックメイルの中にはエリオット――フィアが変装していたモデルとなった人物がいるようだ。


『まあ弟のお人好しさは今に始まった話ではないがな』


『兄さん――』


 とフィアが身に纏うアルビオンにソックリなマジックメイルがいる。

 アレの中にいるのがフィアの兄なのだろう。


『デスモンド様!! ここは退却を――』


『反乱軍の首謀者が!! 皇太子が二人もいるんだぞ!? この好機を逃せと言うのか!?』


『しかし――』


 この状況はデスモンドは取り乱していた。

 まあ無理もない。

 目の前に反乱軍の筆頭格が二人もいるのだから。


『アレが異世界の軍隊か』


『兄さん、今は――』


『分かっている。デスモンド達は任せておけ』


 そう言ってフィアの兄はデスモンド達を相手に向かった。

 俺達は――


『モンスターの動きが乱れた!!』


 リオの言う通りモンスターの動きに乱れが生じ始めた。

 操り手のデスモンド達にフィアの兄や反乱軍の増援部隊が向かったせいだろう。


 こうなってしまえばもう戦いは決まったも同然だ。


『じゃあドラゴンと決着をつけるとしますか!!』


『手伝うよキンジ!!』


 俺とリオはドラゴンに向かって飛び掛かる。

 周囲を飛び回り、時には近接戦を仕掛け、時にはリオと同時に射撃で翻弄。

 着実にダメージを与えていく。


『お前には何の罪もないが――運が悪かったと思ってくれ』


 そしてトドメは俺が差す。

 鼻の上に降り立ち、眉間にライフルを照射。

 ドラゴンの巨体が崩れ落ちる。


『あんまり嬉しくなさそうだね』


『まあな――』


『そう――』


『リオはどうなんだ?』


『分からない。生きるためにガムシャラに色々としてきた人生だったから』


『そうか』


 産まれてからずっとあの世界で生きて来たんだ。

 まだ感覚が分からないんだろう。

 何時かリオにも分かる様になると俺は信じてる。


『デスモンドの奴は撤退した。他の帝国軍や世紀末の連中もだ』


 キョウスケが報告に来る。

 俺は『そうか』と返す。 


『まあ、色々とやらなきゃいけないことはあるけど、まずはフィアの兄さんに挨拶しないとな』


 気持ちを切り替えて俺はそう言った。

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