第二十三話「三将・火のマグナス」

 Side 緋田 キンジ


『このタイミングで襲撃が来るとは!!』


 マジックメイルの部隊。

 バハムス帝国の連中だ。


 更には敵の指揮官機と思われる赤色の機体


『気をつけてください!! アレは三将軍、マグナスの機体です!!』


 マジックメイルを身に纏い、応戦しながら注意を促すエリオット。


『――火のマグナスのイフリートか!!』


 事前に受けていた報告を思い出す。


 三将軍、火のマグナス。

 

 マジックメイルはイフリート。

 二本角の炎の騎士と言ったところか。


 他にもシルファー、タイタスなどのマジックメイルを保有しているらしい。

 炎の件を振り回し、超高温の火球で辺り一帯を火の海に変えている。


 周りの赤いマジックメイルもこれまでの連中と違って腕利きだ。


『はっ!! 中々やるじゃねえか異世界軍さんよぉ!! 俺のイフリートは今迄の連中とは一味違うぜ!!』


 俺と変わらないぐらいの男の声だ。


『キンジ、相手の機体――もしかすると!!』


『ああ、アインブラッドクラスだな――』


 リオの言わんとしている事は分かる。

 相手のマジックメイルはパワーローダーで例えるなら間違いなくアインブラッド級だ。


 俺達の今のパワーローダーで何処まで立ち向かえるか――


『おらおらいくぜ!!』


 そう言って空中から炎の光線を薙ぎ払うように発射してくる。

 戦車だろうと何だろうと直撃すれば一溜りもない熱量だ。


『このままだとアイツ一機にこの駐屯地は陥落するぞ!?』


『だが手持ちの手札でやるしかないだろう!!』


 キョウスケが言いたい事は分かるが打開策が見つからない以上はこうして今のパワーローダーで応戦するしかない。


『何体か凄腕が混じってるな!! いいぜ、相手になってやる!!』


『俺狙いか!!』


 そして俺はマグナスを誘導するように基地から離れた。


『一人で囮を買って出るか? このマグナス様相手に?』


『こう言うのは慣れっこなんでな! 来いよ!』


『面白れぇ!!』


 そしてマグナスと一騎打ちに持ち込む。

 相手の攻撃を一発でも受ければ致命打になる。

 対して相手のマジックメイルの装甲、障壁は頑丈だった

 

(腕は此方が上だが機体の性能差が!!)


『はっ!! やるじゃねえか!!』


『伊達に修羅場は潜ってないんでな!!』


 作戦としてはこいつを他の部隊から孤立させて、あとは味方が他の敵を倒すのを待って撤退に追い込む作戦であるが――


(このままでは俺が持たない!!)


『勝負を決めさせてもらうぞ!!』


 そう言って巨大化した炎の剣と一緒に斬りかかってくる。 

 俺は後先を考えずにリミッターを解除した。

 

『速い!?』

 

 フェンサーの限界を超えた速さで敵を翻弄する。

 懐に潜り込んで――一発ぶん殴る。


『クッ!!』


 更にタックルを決めて吹き飛ばし、至近距離からアサルトライフルを撃ち込む。


『舐めるな!!』


 だが相手も流石なもんですぐさま体制を建て直し、反撃の火球光弾を連発してきた。

 それをある程度のダメージを受けながら攻撃を続ける。

 

『俺のイフリートをここまで追い込むとはな――遊びは終わりだ!! イフリート・ロア!!』


『!!』


 至近距離から基地に大ダメージを与えた熱戦が放たれる。

 だが恐がってはいられない。

 

『こいつ!? 避けた!?』


 そしてもう一発ぶん殴り、同じ個所に銃弾を連射する。

 

『はは、なんつー腕前の野郎だ。そしてすげぇ度胸だよ。だがここまでだ!!』


 まるでバリアが弾けるように炎の壁が迫って来た。

 それから全速力で離れる。


 逃れはしたが同時にリミッター解除の代償が機体に襲い掛かる。

 俺は片膝をついて倒れた。


(チッ――ここまでか――)


 そう思った時だった。


『エリオットか!?』


 よりにもよってと思った。


 そして青いマジックメイルを脱ぎ去り、生身でマグナスと対峙する。

 同時に髪の毛は金髪から白髪になった。

 マグナスはと言うと――


『まさか――アナタ様は――』


「三将軍マグナス。これが君の望んだ戦いかい?」


 まるでエリオットは別人のように雰囲気が変わっている。

 彼は誰だ。

 いや、それよりも――反乱軍のリーダーであるフィアとソックリだった。


『フィア皇子!? どうしてここに!?』


『まさかとは思っていたが――そんな重要人物だったのかエリオット……いや、フィアか――』


「エリオットでも構いません――正直僕は悩んでいました。この反乱について正しいのかと。だけど色々と見て回って覚悟を決めました。父上の蛮行を終わらせるために、僕は剣を取ります」


 そしてフィアは閃光と共にマジックメイルに包まれた。

 白いドラゴンを模したマジックメイルに。

 

『フィア皇子!? 何故反乱軍に与するのですか!? アナタは現実を分かってはいない!! 綺麗事だけでは世の中は――』


『以前なら君の言う事にも理があるように感じただろう。だけど、その倫理がこの状況を招き、更に状況を悪化させようとしている事に気づくべきだ』


『――ならば力尽くで!!』


『僕のマジックメイル、アルビオンには勝てないよ』


 そして両者は激突する。

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