第十三話「新たなゲートと来訪者その2」
Side 緋田 キンジ
『日の丸のマークって……』
『キョウスケ、言いたい事は分かるがあんなパワーローダー見た事はないぞ』
『まあ確かにな』
今頃上の方は大騒ぎだろう。
未知のゲートから日の丸の、日本の国旗をつけたマークをつけた未確認のパワーローダー、あるいはそれに準ずる装備を身に纏った部隊が現れたのだから。
最初は『まさか自分のところの世界と繋がったのか?』と思ったが冷静に考えれば違う。
自衛隊が使用しているパワーローダーは、特に本土ならドランタイプだ。
もしかすると自分達の知らない特殊部隊が存在してパワーローダーを独自開発している可能性もあるが、たまたま日本の領土に出現し、何かしらの要因で実戦投入されているとは考えにくい。
じゃあヴァネッサの世界かと思ったが――地球連邦政府に日本は統合されている筈だからその線もない。
残るのは可能性はある意味面倒な部類だが、地球外生命体やらあの世紀末世界並、もしくはそれ以上にヤバい世界ではないのが救いだろうか。
『どうする? 助けますか?』
エリオットにそう言われて――
『――そうするか』
俺は決断した。
アルバトロスに乗って上空で待機している佐伯は『火中の栗を拾う理由はなんだ?』と問われた。
『俺達は彼方側の情報が欲しい。どうなるにせよ、第一印象がいいに決まっているだろう。それに現状、帝国軍にゲートを確保されて戦力増強されるような事態になるのも問題だ』
それを聞いて佐伯は『成る程、筋は通っている』と返す。
『最後に帝国軍との戦いその物は問題ないんだな?』
『法的にグレーな部分もあるが、念のため停戦を呼び掛けて欲しい』
『まあ、それは自衛隊の宿命だな』
などと思って動く事にした。
崖の谷底では激しい戦闘が繰り広げられている。
その更に真上から見下ろす形で双方に呼び掛けた。
『此方日本国自衛隊だ。双方に停戦を要請すると同時に、状況の説明をお願いしたい』
当然バハムス帝国側は攻撃を仕掛けてくる。
だが日本の国旗をつけている連中からは。
『日本軍ではないのか?』
『自衛隊? 味方なの?』
と言う音声での呼びかけがあった。
まだ皆歳が若いな。
俺は内心では(食いついた)喜びながらも『我々は其方の状況が知りたい。攻撃してこない限り、一時的に協力してこの場は共闘をする事を約束する』とだけ返す。
自分でもよくこんなセリフをすらすら口から出たもんだと感心した。
『立派なスピーチだったぜ緋田隊長殿』
『それはどうも宗像殿』
キョウスケと軽いやり取りをして側面上方からバハムス帝国のマジックメイル部隊を攻撃する。
理想的な十字砲火のポジションだ。
不謹慎ではあるが、面白いように敵が撃墜されていく。
『おのれ!! 退け!! 退け!!』
バハムス帝国の司令官は優秀らしく、形成の不利を悟ってすぐさま後退した。
☆
谷の真下に降りて向き合う形で相手の日本の国旗をつけたエンブレムをつけた連中と向き合う。
『ここが内乱中の異世界で、君達が日本軍ではなく、日本と言う国の自衛隊と言う防衛組織の人間か……俄には信じ難い』
との事だった。
実物を見ても普通はスグに信じられないか。
此方としては第四の並行世界が確定して正直どうしたもんかとも思う。
『まあスグには信じられないよな――』
『だがここが異なる世界で内乱の真っ只中だと言うのは分かった』
『今はそれだけ分かってもらえれば十分です』
ある意味で厄介な状況だ。
これで上の方が資源を獲得するためにバハムス帝国に軍事侵攻を掛けるとなった政治、外交的に止めようがない。
資源豊かな異世界、未知のフロンティアと言うのはそれだけ魅力的な禁断の果実なのだ。
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