第八話「守るための戦い・その2」

 Side 狭間駐屯地 基地司令


 狭間駐屯地で突発的に起きた遭遇戦を司令本部で耳にする。

 そこから流れてくる情報を聞いて私は思わず唸り声を挙げた。


「第13偵察隊――世界を救った部隊の肩書は伊達ではないか――」


 と。

 我々の増援もあるのだろうが世界を救った部隊の称号は伊達ではなく、今も尚戦線を支えて被害を最小限に抑えるために戦い続けているらしい。


「司令!! 部隊発進準備整いました!!」


「すぐさま送り込め!!」


「了解!!」


(時代は変わりつつあるのですね。五藤さん――)


 私は時代の変化を感じ取りつつ、窓から増援部隊の発進を見届けた。

 空戦型パワーローダーゲイルと戦闘ヘリを中心とした戦闘部隊。

 あっと言う間に現地に到着するだろう。 


 戦闘ヘリはともかく飛行型のパワードスーツ、それも小型の核融合炉を搭載した部隊を実践で投入するなど、つい最近までなら考えられなかったことだ。

 戦いは士官学校、訓練校のテキストの改革から行わなければならない段階に入ってしまっている事を痛感した。



 Side 緋田 キンジ


『ここぞと言うばかりに攻めて来やがって!? 仮にも自国の領民だろうが!』


 キョウスケが愚痴を言いながら敵のマジックメイル部隊を迎撃する。


『どうせこいつらにとっちゃ、ここの村人はどうなってもいい存在なんだろうぜ、きっと!』


 と言いつつ、俺もパワーローダー、フェンサーで迎撃する。

 状況はあと数分もしないウチに乱戦になるだろうと言う事だ。

 そうなったら味方だけでなく、建造物や村人への被害が拡大する。

 それだけは避けねばならない。

 

 幸いにして先の戦いで大活躍したレーザーガトリング対空迎撃車両やロボット部隊、増援のパワーローダー部隊が頑張ってくれている。


 だが敵も負けじと攻め立てて来て防衛がドンドン厳しくなってきている。

 いくら此方が腕利き揃いだとしても限度と言う物がある。


『こいつらリビルドアーミーと一緒なんだ。自分達さえよければ何だってする』


 そんな状況下でもリオは戦意が衰えてないのかそう言い、


『正直こいつらのやり方、ムカつくじゃんよ』


 と、パンサーもリオの意見を後押しするように言う。


『プロペラ音とジェット音?』


 耳に聞き慣れた音がする。


『増援よ!!』


 トレーラーにいたパメラが言った。

 すると空中に飛行型パワーローダー、ゲイルと戦闘ヘリ部隊がやって来た。


 特にゲイルは軍艦でも相手するつもりなのか、リオと違って拠点攻撃のための重装備型が混じっていた。

 他にも制空権を確保するための通常型も混じっている。

 

『援護を開始する。村の上空と外周部の連中は任せろ』


 それだけ言うと増援部隊のパワーローダーと戦闘ヘリから武装が次々と解き放たれる。


『な、なんだアレは!?』


『て、鉄の槍!? 矢!?』


『つ、追尾して――うわぁあああああああああ!!』


 上空にいた敵や村の外にいた敵はミサイルの餌食になっていく。

 しかもただのミサイルではなく、荒廃したあの世界で得られた技術で破壊力含む性能が増したミサイルである。

 10式戦車でも一撃でスクラップになり、想定外の頑丈さを見せたマジックメイルも容易く粉砕していく。


『ぎゃあああああああああああ!?』


『なんだこの攻撃は!?』


『幾ら陸戦型が頑丈でも――あああああ!?』


 それを逃れた敵は今度は機関銃やレールガン、ミニガン、レーザーガトリングなどを文字通り雨のように浴びせられる。


『に、逃げろ!?』


『退却!! 退却!!』


『こんな戦いで命落とせられっか!!』


 生き延びた敵は一目散に逃げて行った。

 一先ずこれで戦いは終わりである。


『終わった――が、素直に喜べないな』


 俺は周囲を見渡した。

 荒れ果てた村を見る。

 村人の今後の生活を考えると素直に喜べない。

 かと言って手を差し伸べてもいい物かとも思ってしまう。


『キンジ、辛い?』


『……ああ』


 その心中を察したのかリオが呼び掛けてくる。

 本当にぶん殴る相手は分かっている筈なのにそいつをぶん殴って戦いを終わらせられない自分の無力さが憎かった。

 

『隊長、とにかく現状確認と補給の準備が必要だ』


『ああ――』


 キョウスケが言う様に感傷に浸っている暇はない。

 この世界にいない筈のヴァイパーズの一件もあるし、また何かしらの脅威が来る危険性がある。

 それにここは敵の領土内だ。


 だから再び戦いに備えなければならない。

 

『だから戦争は嫌なんだよ、畜生』


 そう愚痴らずにはいられなかった。

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