第六話「VSドラゴン」

 Side 緋田 キンジ


 なんかの小説で言ってたな。

 自衛隊が怪獣と戦うのは伝統だと。


 前の異世界でも三つの首があって四足歩行のサメの化け物と戦ったりしたな。

 

 などと半ば現実逃避しながらドラゴンとやり合う。

 20m程の巨体に見合わず俊敏で炎を撒き散らし、村の建造物が玩具のように破壊されていく。

 

 生物の形をした厄災。


 神話の一ページのような非現実的な光景。


 対する自分達はパワードスーツにそれ専用の重装備。


 なろう系小説のドラゴンならとっくの昔に瞬殺される筈だが此方の攻撃、通じてはいるんだが致命傷には至ってない。


 恐らくこのドラゴンはアレだ。


 マジックメイルを部隊規模で投入して討伐出来るとかそんな感じの扱いなんだろう。


『たく、まさかまさかのドラゴン退治とはな!! とんだ厄日だぜ!!』


 キョウスケが愚痴を言いながらバレルの両肩キャノン砲を発射する。

 ドラゴンの動きは図体によらず俊敏とはいえ、キョウスケの腕とこの距離ならまず外さない。

 胴体に直撃する。


 が――


『大して効いちゃいないか……』

 

 呆れたようにキョウスケが言った。

 

 攻撃は通っている。

 だが致命傷には至っていない。

 鱗を吹き飛ばし、黒い焦げ目をつけたぐらいだ。

 ドラゴンは更に暴れ狂う。


『で、どうする? このままだと戦闘が終わる頃にはこの村は更地になるぞ?』


『だからと言ってこいつを放置するワケにもいかない。キョウスケはメンバーを選抜して救助作業お願い出来るか!?』


『ああ、死ぬなよ』


『そう簡単にくたばってたまるか!!』


 そう言って俺はドラゴンに挑みかかる。

 ダメージは全く通ってないワケじゃない。


 ただ強固な皮膚に包まれていて通り辛いだけだ。

 より破壊力がある、あるいは貫通力のある武器で攻撃を続ければ倒せる。

 または強力な武器で攻撃された部位に攻撃をすればダメージは与えられる。


 そう思って戦いを続ける。



 Side プルミラ村 村長


 見た事もないマジックメイルを身に纏った兵士達に守られながらドラゴンと異界の兵士達の戦いを見つめる。


 多くの村人もその光景に魅入っていた。


 マジックメイルでもドラゴンは災害である。


 例えマジックメイルを身に纏っていた騎士団がいたとしても甚大な被害が出る。


 にも関わらず、異世界の兵は我々を助けながら少数で足止めして、避難させるために戦ってくれている。


 まるでお伽噺に出てくる騎士様のように。


 最初の襲撃からしてそうだった。


 今思えば率先して我々を守るために戦っていてくれていたのだろう。


 そしてドラゴンと戦っている現在も背中から炎を吹き出して空を飛び回り、手に持った杖のような物から強力な魔法を放ち、ドラゴンのブレスを巧みに避けながら近い距離で戦い続けている。


 自分なら怖くて出来ない。

 この世界の騎士でも出来るかどうか分からない戦い方だ。


 やがてドラゴンは傷つき、大量の血を流し、空に羽ばたいて退いていく。


 撃退し終えた後も彼達はそれを誇らず、ただ懸命に救助活動をはじめた。


 その事に嬉しさよりも逆にあきれ返ってしまった。


 ドラゴンを撃退出来たのなら普通は喜ぶ。


 大歓声を上げる。


 そう言う相手なのだ。


 にも関わらず彼達はまるで村人の命を救おうと懸命に活動している。


 彼達は自分達の事をジエイタイと名乗ったが――彼達は何者なのだろうか。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る