第八十話「決断」

 Side 緋田 キンジ


 翌日になってもリビルドアーミーは「考える時間が欲しい」との事である。


 味方同士で銃火を交える事になるのだ。


 悩むのは当然だろう。


 町には自衛隊の部隊なども駐留を開始。


 狭山君とアーティスは自衛隊と交渉を開始。


 グレイヴフィールドにある自衛隊基地に向かう事になるだろう。


 俺達もパワーローダーを身に纏い、戦後処理を手伝う。



「行く先々で派手にやってるみたいじゃないか」


 戦後処理がひと段落し、パワーローダーを脱いで休憩していたら、嫌らしそうな笑みで嫌味ったらしく佐伯 麗子が言ってきた。

 と言うかこの町に来てたのか。


「何か用ですか?」


「上司として大切な部下の顔を拝みに来たのもあるな」


(嘘つけ……)


「冗談だ。まさか日本人の少年がこの世界に迷い込んでここまで町を発展させていたとはな。リビルドアーミーもアーティス氏との交渉も前向きに応じたいと思っている。おかげで上の方――もっと上の方も大忙しだ」


「そうなっているのか」


「まあな――狭山 ヒロトの事の扱いをどうするかで揉めている部分もあるが、問題はアーティス氏だ。このままだとリビルドアーミーと全面戦争、殲滅戦になりかねない状態で上の方としては何としても避けたかった」


「で? 自分達の自由時間は終わりな感じですか?」


 状況的に考えてノンビリと彼方此方見て回っている雰囲気ではないだろう。


「一旦休暇のために戻るといい。上がどう言う判断するにしろ、たぶんこれが最後になるだろう」



 Side リビルドアーミー 空中戦艦 艦長 グレムス


 リビルドシティの中枢府のタワーに戻り、ワシは代表者の眼前に立っていた。


 リビルドシティの代表者


 ゼネシス。


 初老の男でこのリビルドシティだけでなくリビルドアーミーを牛耳る男だ。


「失態だったな、グレムス」


「も、申し訳ありません」


「まあいい。あの町の住民(狭山 ヒロトの町)の連中があそこまで力をつけていたのも想定外だったのもある」


「こ、今度こそ、我々が焼き払いましょう」


「ふむ――どうしたものか――アーティスの小娘が本性を現し、レジスタンスの活動も活発化している。それにジエイタイとか言う連中の動きも気になる――」


「不穏分子が活発化していますな」


「本来ならレジスタンスから潰したいが中々尻尾を掴ません――全てのリビルドアーミーを一旦リビルドシティに招集。その後、不穏分子を根こそぎ叩き潰していく」


「決戦を?」


「それが私の望みだよ、グレムス君」


 それを聞いてワシはどう判断すればいいのやらと言う感じだ。

 だが上手く立ち回れば出世も出来そうだ。

 ワシはそう考えることにした。



 Side 緋田 キンジ


 リビルドアーミーの隊長格は全員帰還を選んだ。


 隊員格の中には降伏や、リビルドアーミーを抜ける奴も現れ、アーティスに協力を申し出る人間も現れた。


 本当は全員纏めて捕虜にすべきなのだろうが、暴れられて損害、被害を出るのもイヤだ。


 狭山 ヒロトやアーティスの訴えもあるしそうする事になった。


「お主らの慈悲深さに感謝するぞ」


 町の外から撤退するリビルドアーミーを見送る中で、アーティスにそう言われたが正直言うと慈悲深いかどうかなど分からない。


「正直この選択が正しいのか疑問に思うけど――だけど久しく忘れてたよ。人間と殺し合ってるってこと」


「人間の心は弱い。そう思わないと生き残れないし、心が壊れてしまうのじゃろうから当然じゃろうて」


「それが正解なんだろうな」


「――恐らく、リビルドアーミーは本腰を挙げて潰しに来るぞ。フォボスも動き始めるじゃろう」


「だろうな――」


「その時、おぬしはどうするのじゃ?」


「……俺は自衛官には親への反抗のつもりでなった」


「ほう?」


「だけど今は違う。色んな奴、色んな人に出会って思った。手の届く範囲の大切な人を守りたいって。貧乏くじだって言われてもいい。戦うよ」


「見ず知らずの世界の人のために戦うか? ジエイタイは日本国民やその財産を守るために存在するんじゃろう?」


「よく知ってるな――まあ、その定義で言えば俺はもう真っ当な自衛官じゃないな」


「そうか」


「それにもう見ず知らずじゃない。この世界を見て来た。この世界の人のために命張ったのも一度や二度じゃない。色々見て来た。楽しいことや恐ろしいことも知ってる――まだ沢山見てない場所や世界があるんだろう――落ち着いたらそれを見てみたい気もするな」


「思ったよりもロマンチストなんじゃな」


「かもな」

 

 柄にもない事を喋ってしまう。

 少し不安や悩みの種が解消されたかもしれない。

 俺は仲間たちの元へと戻った。

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