第七十四話「アイシャと整備工場」

 Side 宗像 キョウスケ


 整備で一段落したパメラを連れて俺は町へと出かけた。

 

 町のために体張って戦ったおかげか、住民からの受けがよい。


 狭山君と同じ世界の人間だと言うのもあるんだろうが。


 同時にこの世界から、この町から狭山君がいなくなるんじゃないかと言う不安の声も上がっている。


 これは俺達の責任ではないか、何故だか俺は申し訳ない気分になった。


 この世界で生きるというのはどれだけ過酷なのか正直言うと分からない。


 だがその片鱗は見てきた。


 最初の頃のパメラ達なんかがそうだ。


 なにしろ水や食料、地球での普通に近い暮らしだけで命を張ってくれたのだから。


 そう思うと今更だが申し訳なく感じてくる。


「どうしたの?」


「実は――」


 俺はバカ正直に今の気持ちを話した。


「なんだかんだ言ってとことんいい人達なのね、あなた達は」


 と、苦笑して返してくれた。


「まあ、だから皆あなたたちに付いていったんだろうけど」


「そう言ってくれると助かる」


「あまり気を病むのはやめときなさい。逆に失礼になる場合だってあるんだから」


「そうか――」


「さてと、これ一応デートって奴だから好きな場所に行っていいのよね?」


「デートね」


 そういやこの世界に来る前はそんな経験したことなかったなと思う。

 パメラはやはりと言うか整備工場――特にパワーローダーなどが整備されている場所に立ち寄った。


 こう言う工場見学は学生時代、小学生のころから経験済みだがパワーローダーと言うバリバリの軍事兵器となれば見ているだけで楽しいもんだ。

 地球なら見学ツアーでも組めば料金取れるだろうと思う。


「パワーローダーに目が行くけど整備体制や整備機材も凄く整ってるな」


「うん。自衛隊とかの設備に負けてないよ。あのシェルターの力もあるんだろうけど」


 そんな事を遠巻きに眺めていたら迫りくる影が一つ。

 金髪の左側サイドポニーの少女だった。

 ツナギ姿でフライトゴーグルにスカーフ、各種工具を身に着けている。

 自分は整備員だとファッションで主張しているような少女だった。 


「君らアレか? 外から来た話題のジエイタイの人達か」


 疑問形で質問してくるので俺は「そうだけど?」と返した。


「私はアイシャ。この工場を任されている」


「任されている? 一員じゃなくて?」


 パメラが当然の疑問を投げかける。


「まあそれが普通の反応だろうな。私も何時の間にかこうなったとしか――」


「と言うと?」


 詐欺にしては妙なので話を聞いてみる事にした。


「私はこの町がここまで発展するだいぶ前からここに来た人間でな。その頃からパワーローダーを中心に整備を任されて気が付いたらこうなっていたんだ。なんなら中を案内してやろうか?」


「は、はあ……」


 俺はアイシャに中を案内される事になった。



 アイシャは工場内の人間では「お嬢」と呼ばれているらしい。


 遠目から見ていて分かっていたが中で近くから覗いてみると立派な設備である事が分かる。


 働く人員の情熱も一級品だ。


 様々な種類のパワーローダーが整備されていく。


「実はお願いがあるんだが」


 案内している時にアイシャが提案を持ち掛けてきた。

 だが内容は大体予想がつく。


「俺達のパワーローダーを整備させてくれ? とかだろ?」


「よくわかったな――」


「まあな。俺達のパワーローダーはある意味新型機だからな。技術者にとって新型のマシンに触れるって事は凄い価値があることだし、大体予想がついた――俺とパメラも同伴なら別に構わないぜ。それとウチの隊長の許可もとらないとな」


「いいのキョウスケ? 勝手に決めて?」


「この工場に興味が出たのもあるけど今はリビルドアーミーの再襲来に備える事が先決だろ? それにアレだけのパワーローダーを俺達だけで整備するのは手間だしな」


「確かにそうだけど――」


 俺の言ってる事は全部本当だ。


 工場に興味が出たと言うのは本当だ。


 俺やキンジたち第13偵察隊の面々、それにリオやパンサーも整備は手伝っちゃいるが最終的なチェックはパメラが行っていて負担が大きい。


 だから楽させてやりたいと俺は思った。

 

「交渉はそちらの隊長さんの返事待ちと言う事だな」


 笑みを浮かべるアイシャ。

 俺達のパワーローダーを触れるのが待ちきれないと言った感じだろう。


「ああ。よろしく頼む」


 そう返事を返してキンジを探すことにした。

 

 それから少しあと。

 キンジに約束を取り付け、整備工場で整備を行う事になった。 

 

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