第七十話「パワーローダー博物館」
Side 緋田 キンジ
町中に警報が鳴り響き、人々が戦闘態勢に入る。
こんな装備や警備が厳重なところを襲い掛かるなど普通ではないだろう。
戦闘ロボットや町に配備されていたパワーローダーも次々と稼働を始める。
俺とリオは慌ててキョウスケやパメラ達との合流を急ぎたかったが――
(パワーローダーを載せたトレーラーが橋の向こう側なんだよな……)
相手の防犯の都合を考え、不用意に刺激しないように橋の向こう側に置いてきたのが裏目に出た。
高級住宅街の周囲をグルっと防壁で囲まれ、その更に外側は川が流れている要塞だ。
更には裏手には軍のバンカー。
彼方此方に砲台。
内部もパワーローダーを身に纏った警備兵やロボットなどが巡回している
ここまで厳重だと下手に外に出るのは止めておいた方がいいかもしれない。
隣にいた狭山 ヒロト君とシズクさんは落ち着いていた。
「大丈夫です。ここは簡単に落ちません――シズク? 敵は何か分かる?」
とヒロトはシズクに尋ねた。
「レーダーリンク中――照合によるとリビルドアーミーですね」
キッパリとそう答えた。
リビルドアーミーと言う単語を聞いて俺は驚いた。
「リビルドアーミーだって? 先日奴達の前線基地を制圧したばっかだぞ?」
と、答えた。
ガッツ軍曹と一緒に前線基地を制圧したのだ。
もしかすると他にもあれぐらいの規模の前線基地があるのかもしれない。
「詳しくは戦いの後で――敵は戦力を町を取り囲むように分散して降下してきます。かなりの部隊ですね」
「狙いは砲台だろ――」
シズクの解説に俺はそう結論付けた。
砲台がなければ空中戦艦なり大型の飛行機械による空挺降下で一気にこの町を制圧できる。
以前の時のように戦艦で犠牲覚悟で突っ込まれなければの話だが、あんな真似をする指揮官は二人も三人もいないだろう。
でなければこんな回りくどい真似はしない。
「狭山様のアインブラッドは整備中。緋田様たちのパワーローダーは?」
「町の外、ゲート前に停めてある。何人かはこの町の中にいるからな……」
シズクにそう言って俺は通信で呼び掛けてみる。
トレーラーの近くにいた隊員達に命じて取り合えず退避するように言った。
「生身でパワーローダーを相手にするのは勘弁だ。動かせるパワーローダーはあるか?」
そう言うとシズクさんは「狭山さんが趣味で作ったガレージに何台かは」と言った。
「いい趣味してんな狭山君」
「ど、どうも」
と、狭山君は照れていた。
本当にこの世界で成り上がっちゃったんだなこの子。
正直羨ましい。
「ガレージに案内してくれ」
「分かりました。こちらへ」
と、狭山君が案内してくれた。
☆
ガレージ。
と言うか格納庫には綺麗にパワーローダーが並べられていた。
最も普及しているパワーローダードラン。
初めて会った時にパンサーが身に纏っていたジェネ。
初めて会った時にリオ身に纏っていたゲイル。
俺が長く使用していたフェンサー。
第7偵察隊の隊長、宮野が使っていたギャリアン。
フェンサーとギャリアンを購入した夜、襲撃してきた野盗が使用していたワッド。
キョウスケが使っていたバレル。
ウチのWACコンビが使っているブロッサム。
暫く遭ってないトレーダーのアネット達が使っていたバルキリー。
リビルドアーミーのジェストまである。
他にも見たことがないパワーローダーが沢山ある。
金が取れるレベルのパワーローダー博物館だ。
内装も狭山君の趣味丸出しでポスターやら何やらが色々と飾られている。
だけど今は有事なので整備員と思わしき人々が忙しく搭乗を呼びかけていた。
俺とリオは互いに顔を見合わせて頷き合うと迷わず俺はフェンサー、リオはゲイルに向かった。
☆
長いこと高性能機に乗っていたので動きの鈍さは多少感じていたが思った程でもなかった。
ゲイルを身に纏ったリオも不思議そうに体を見つめている。
整備の腕が良いんだろう。
『お二人とも大丈夫ですか?』
『て、狭山君も戦うのか?』
狭山君もパワーローダーを身に纏っていた。
見掛けはただの黒いドランだ。
大型化したバックパック、右側にミサイルコンテナ、左側にレーダーか何かの様な機器をつけている。
『特殊部隊仕様のドランです』
『色々とバリエーションあんだな、ドラン』
『ではお先に』
そう言って狭山君はその場を去っていた。
速い。
ドランとは思えないスピードだ。
ルーキーが使用している高機動型ドラン以上だ。
『キンジ』
『ああ、悪い。行くぞ――』
俺達はトレーラーを止めてあった正面ゲート前に向かった。
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