第六十七話「軍事工場制圧作戦」

 Side 緋田 キンジ


 軍用工場奪還作戦についてだ。


 久しぶりの生身での偵察である。


 パワーローダー部隊や敵の飛行機械。


 無人機が哨戒している。


 それだけでなく、セントリーガンなどの砲台も配置されいてた。


 最悪ビームだかレールガンだかを想定しておいた方がいいだろう。


 放置しておくのも厄介だ。


 上に通達しておいた方がいいかもしれない。


☆ 

 

 Side 佐伯 麗子


「敵の軍事工場の奪取か……早々思い切ったことをする」


 言うのは簡単だが間違いなく激戦になる案件だ。

 増援も準備しておいた方が良いだろう。


「グレイヴフィールド内のリビルドアーミーは掃討されましたが、こんな目と鼻の先に奴達の拠点があったとは――」


「敵は躊躇いなく核兵器を使用する連中です。放置するのは危険ですね」


 作戦プランについては同意を得られた。


 

 Side 緋田 キンジ


 作戦は夜間に決行された。


 高速移動可能な機体による奇襲作戦。


 リオやパンサー、WACコンビの水瀬 キョウカ、高倉 ヒトミ、ルーキーと言う珍しい組み合わせのメンバーだ。


 他の面々は奇襲が成功した段階で別方面から仕掛ける段取りである。



 Side リオ


 ゲイル・リヴァイヴの速度で一気に敵の軍事工場を急襲する。

 敵には目もくれず、パンサーと一緒に砲台やレーダー設備などを片っ端から破壊していく。


 水瀬さんと高倉さん、ルーキーさんの3人は次々と敵を破壊していく。


 ずっと一緒に戦ってきたのだ。


 弱い筈はない。

 

 とにかく敵を出来うる限り引き付けてもう一つの作戦を成功させないといけない。


『そのパワーローダー、報告にあった奴か!』


『敵の隊長機!?』


 リビルドアーミーのパワーローダーが工場内部から追加で出てきた。

 

 目を惹いたのが敵の隊長機の機体。


 真っ赤な赤い機体。


 二つ目で後ろの大きなバインダーが特徴のフォルムだ。

 手にはシールドとライフルを持っている。


『私はスカーレット!! お前達を倒す者の名だ!!』


 スカーレットと言う女性の装着者が相手らしい。

 

『この前の青いのも強かったけど――』


 相手のパワーローダーは際立った特徴はない。

 だがとても速い。

 この前戦ったランシスに匹敵する速さだ。


『これ程腕の立つ装着者がいたとは!! ランシス様が仕留めきれなかったのも頷ける!』


『ランシス? この前の青い奴のこと?』


 互いに銃火が飛び交う。

 空中を飛び回り、距離を変えて好機を狙う。


『隊長!!』


『この黒いジェネ! 強い!』


『悪いけど連携は分断させてもらうよ!』


 リビルドアーミーのパワーローダーはパンサーのジェネⅢに。

 隊長機と連携を分断される形になった。


 それをルーキーやWACの二人が援護する。


『クソ! 腕利きとは分かっていたがこれ程とは――』


『このままいけば――!!』


 私は背中のビームキャノンや腰のレールキャノン。

 二丁のビームライフルを巧みに操りながら相手を力押しで追い詰めていく。


『スカーレットはやらせない』


 淡々とした少女の声。

 新たに表れたのは全高5m程のロボットだった。


『なにあのデカブツ!?』


 パンサーが驚くのも無理もない。

 

 黄色い大きなロボット。

 バレル・リヴァイヴとコンセプトは同じの重火器、重装備仕様のパワーローダー。


 背中の大きな大砲二門。

 右腕のガトリング砲。

 左腕の二門のシールドライフル。

 厳つい肩の内臓式のミサイル。

 両足にはミサイルコンテナ。

 キャラピタ式のローラーダッシュ式。

 

 それ達が一斉に火を噴く。


『皆大丈夫!?』


『なんとか――』


 と、ルーキーが。


『とにかくあのデカブツをなんとかしないと――』


 水瀬 キョウカさんの言う通りだがこう言う時どうすれば――


 助け舟を出してくれたのはルーキーだった。


『危険だけど工場や敵を盾にするようにして立ち回るしかない! そうすればあの重火力が向けられる心配はない!』


 的確な指示を飛ばすルーキー。

 ルーキーもここまで戦い抜いたエースの一人なのだと私は実感した。

 私もそれに倣って隊長格の一人「スカーレット」を盾にするように立ち回る。 


『状況判断が速い!! 各員、敵を引き離せ!!』


『いや、もう遅い!』


『キンジ!!』


 ここでキンジが工場内部から出てくる。

 

 リビルドアーミーの兵士たちも一緒だ。


『隊長!! 工場が制圧されました!!』


 リビルドアーミーのパワーローダーの報告に敵兵士達は動揺する。

 それはスカーレットも同じだ。


『なに!? まさかこいつらは囮――嵌められたと言うのか!?』


『ええい、こうなれば工場を破壊しろ!! 敵に渡るよりかはマシだ!!』


 そう決断するが工場の彼方此方からアサルトロボットの兵士たちが銃撃を加えてくる。

 5mの巨大ロボも次々と集中砲火を浴びて後退せざるおえない状況だ。


『一旦後退して立て直す! 後に奪還――』

 

『いいや、俺達の勝ちだ』


 キンジがそう言う。

 当然スカレーットは『なに?』となる訳だ。


『敵の援軍です!!』


 遠くから自衛隊のヘリ群が飛んでくる。

 中にはパワーローダーを満載していると思わしきヘリまであった。

 

『ッ――そう言うことか!! 合流パイントは此方で指示する!! 無事な物は撤退を支援しながら後退しろ!!』


 と、スカーレットは指示を飛ばしながら黄色い巨大ロボと一緒に殿を務めて後退する。



 戦闘は終結。

 工場の設備の把握と砲台の復旧作業などが行われている。


 アサルトロボット達とジエイタイの人達が共同で作業を行っていた。


「上手く行ってよかったねキンジ」


「ああ、ガッツさんも大喜びだ」


「思ったんだけど、逃してもよかったの?」


 ふと私はそんな疑問を投げかける。


「それも考えたんだけど、俺達の今回の作戦目標は工場の奪取だ。自棄になられて破壊されたら元も子もないしな」


「そこまで考えてたんだ」


「まあ今回は上手く行ったけど。リビルドアーミー……層が厚い組織なんだな」


「うん。それは私も感じた」


「……悩んでも仕方ない。ともかく今は休もう」


 

 Side スカーレット。


 私達はあの後、合流地点まで後退。

 

 白髪の青年。

 ランシス様と合流した。

 

「例の部隊か……成る程……我々はグレイヴフィールドへの足掛かりを失われた訳だ」

 

「も、申し訳ありません、ランシス様」


 私は頭を下げて謝罪する。


 あの工場は重要な拠点。

 グレイヴフィールドにいるジエイタイと言う危険分子を討伐するための重要な足掛かりだったのだ。


「構わんさ。怒鳴り建てて時間が戻る訳でもあるまい。それに私としてもアイツらには興味がある」


「あいつら?」


「諜報部によれば、ジエイタイと言う連中がグレイヴフィールドの基地に――こことは違う世界から来たと言っていたが――我々の空中戦艦を退け、そしてヴァイパーズの陸上戦艦含めて指導者をも打ち取ったそうだ」


「私も聞いたことがあります。誤報かと思いましたが……」


「だが事実、空中戦艦は堕とされ、ヴァイパーズの本拠地もジエイタイと言う連中の手に落ちた。それを成し遂げたエース部隊がいると言うが――私と君が戦ったあの部隊と見て間違いないだろう」


「なんですって!?」


 それを聞いてあの敵の強さに納得がいった。

 

「我々は運がいい。生きてこうして会話が出来るのだからな――」


 ランシス様は「だが」と、話を続ける。


「我々リビルドアーミーは腐っても軍事組織だ。メンツと言う物がある」


「では奴達を追うと?」  


「そうならざるおえんだろう。既に他の連中も動き出している」


「奴達は出世の餌と言うことですか」


「餌ではない。襲い掛かれば死に物狂いで抵抗してくる獰猛な獣だ――」


 その言葉の意図を悟った。

 だがあえて私はなにも言わなかった。


「さて、どれだけ生き残るだろうか」


 そう言って彼は微笑んだ。

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