第五十八話「基地攻略戦」
Side 近藤 信也 三佐
最初の山場、陸上戦艦は乗り越えた。
自衛隊基地には五藤陸将を中心としたこの世界の自衛隊の纏め役。
また幕僚長からお偉方も出席している。
緊張しながらも作戦の遂行状況とこれからの作戦について語る。
「陸上戦艦の制圧は完了。続いて本作戦は速やかにヴァイパーズの本拠地を叩く流れになります」
作戦の流れは単純だが問題は敵の本拠地の守備だ。
「陸上戦艦を失い、かなりの戦力を削りましたがそれでも、未だに驚異的なテロ集団である事には変わりません。また基地の周囲には幾多の砲台、タレットや様々な種類の無人兵器が展開しています」
と、ここまで解説して間を取った。
「五藤君、いくら一武装勢力とは言え正攻法の手段が通じる相手なのかね?」
「確かにこの世界のテクノロジーは驚異的です。ですがこの世界特有の事情により、弱点も存在します。続きを近藤君」
五藤陸将に促されるがままに開設を続ける。
「敵の武装は確かに驚異的ではありますが、どこまで行っても軍隊ではなく、一武装勢力でしかありません。テクノロジー差を十分考慮すれば砲撃や爆撃、航空支援などは十分に通用します。現に陸上戦艦相手にも一定の成果を上げる事に成功しました。問題は――」
「弾薬の生産か――」
誰かが言った。
幕僚長から来た人物の一人が言った。
「その通りです。砲撃やミサイルなどの使用量を考えた場合、まだまだ不足です。本来は弾薬の供給が十分な量まで待つと言う方法もあったのですが――」
「日本で起きた武装勢力との戦い――『Pファイル』の件が絡んでいるのか?」
幕僚長から来た誰かが言った。
Pファイル。
日本で起きた戦い、フォボスなる存在が率いる集団の資料の完全版。
あまりにも突飛な内容ではあるが、混乱を防ぐために一部の人間にしか開示されない超極秘資料。
それがPファイル。
日本の安全保障どころか世界の危機が記された劇薬のような内容だ。
早い話、Pファイルとはある日突然、未来兵器で完全武装した武装勢力が並行世界の壁を跨いで、世界中の彼方此方で地球侵略のための前線基地を築いているかもしれないと言う内容だ。
一般に公開できるわけがない。
間違いなく大パニックになる。
とりあえずここは「自分にはお答えできる立場にはありません」と前置きして話を続ける。
「ヴァイパーズの殲滅作戦は先程の陸上戦艦攻略作戦と変わらず、遠距離からの飽和攻撃、砲撃による基地への直接攻撃後、地上部隊で一気に制圧すると言う作戦です。問題は砲台の迎撃制度です」
「レーザーやビーム、あるいはレールガンによる迎撃システムの前では簡単に防がれてしまうかもしれないという事か」
「その通りです。ですので現在は強硬偵察型に改修したドランにより、砲台やレーダー設備の配置を確認しつつ、それを破壊してから遠距離や航空支援からの攻撃でトドメを刺すと言う形になります」
「どうやって砲台を破壊するつもりだ」
「危険ですがこちらもレールガンなどを使用します」
その単語を聞いて幕僚長の人々は驚き、悟りを開いたかのようにこう答えた。
「そうか――もう我々の頭では追い付かんな。歳はとりたくないもんだ」
とだ。
彼達の気持ちは分かる。
レールガンだのレーザーだのが飛び交う戦場など、常識離れにも程がある。
日本で学んだ常識が通用しないのが世界なのだ。
「確かに我々の時代は終わったかもしれんが、それでも何が出来るのかを考えて支えるのも我々の勤めだろう?」
「それにここは退役自衛官の同窓会じゃない。日本の未来を守るために、前線で今も戦う将兵のためになにか出来ることはあるのではないかと思って来たのだろう」
「そうだな……すまない。弱気になってしまった」
と、語り合う。
彼達は国防と言う物に真摯に取り組み、支えてきた防人なのだ。
☆
Side とあるヴァイパーズ隊員
『戦艦がやられたった本当かよ!!』
『クソ!! 砲台が狙われている!!』
『レーダー設備もだ!!』
『早く反撃しろ!? 監視は何をしている!!』
次々とレーダー設備や砲台が破壊されていく。
何か狙いがあるのだろうが何を狙ってかは分からない。
だが何かとてつもなく嫌な予感がした。
☆
Side 陸上自衛隊 強硬偵察型ドラン部隊
強硬偵察型に改修されたドランを身に纏い、狙撃に特化したレールガン装備のドラン部隊に座標を送る。
次々と面白いように砲台やレーダー設備が破壊されていく様子が分かる。
『こちらスカウト――敵の目と盾は奪われた。どうぞ』
『了解。作戦開始する』
やや遅れて砲兵部隊による弾丸の嵐。
続いて上空の航空機、戦闘機から地上目標への攻撃が行われた。
『こちらスカウト――敵基地の脅威沈黙』
『了解。作戦は最終フェイズに移行。スカウトとハンターはそのまま突入部隊の支援を行え』
『了解』
☆
Side 陸上自衛隊 ヴァイパーズ基地 突入部隊
俺達、パワーローダー部隊は戦車や戦闘ヘリ部隊と一緒に進軍する。
突入場所であるヴァイパーズ基地だ。
『あの攻撃と砲撃の中、敵の連中まだ生き残ってるんですかね?』
確かに部下の言わんとしている事は分かるが――
『この世界に常識は通用しない。それにリビルドアーミーや未知の勢力の介入も考えられる。気を抜くな』
『りょ、了解』
油断したくなる気持ちは分かるが、この世界は地球での常識は通用しない。
突然サメの変異種みたいな化け物に襲われるわ、オーガやらアンデッドなる存在がいたり、他にもUFOや昔のアメリカの創作物に出てきた火星人の侵略メカみたいな存在も確認されている。
こうしている今もどこかで化け物たちが近づいてきているかもしれないのだ。
『クソ!! 噂をすればなんとやらだ!! 応戦しろ!!』
オーガと呼ばれる赤い原始的な生物の群れに遭遇。
いったい何処で入手したのかフットボールサイズの核爆弾とかレーザー兵器とか保有してやがる。
数分後。
派手に核爆発が起きた。
突入部隊の損害は軽微なれど精神的には大ダメージである。
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