第五十話「代表者の決断」
Side 緋田 キンジ
ゲートの中に入ると早速歓迎された。
最初に来た時と違ってちょっと戸惑ったりもした。
「おお、無事だったか」
「キーツさん」
なんだか久しぶりな気がするな。
シップタウンの防衛隊隊長、初老の老兵のキーツさんと再開した。
最初は険悪な仲でヴァイパーズのスパイ呼ばわりされりもしたが、なんだかんだあって今は親しい関係だ。
「聞いたぞ。おぬしら中々に暴れ回っているそうじゃないか」
「そっちも元気そうで」
「ははは――歳はとりたくないもんだ。ヴァイパーズの連中もとうとう本腰を入れてこの辺り一体を制圧しようと考えているようだ」
「ええ。近々大規模な軍事行動を起こすつもりのようです。その事でシップタウンはどうするのかお伺いしにきました」
「成る程な――それでシップタウンが戦わないことを選択したらお主らはどうする?」
「いえ、それも無理もない選択かと――本音を言えば、無理して戦うよりも身の安全を第一に考えてくれた方が嬉しいです」
文字通りの心の底からの気持ちだ。
この世界は――現代日本と根本から色々と事情が異なる。
戦わなければ生き残れない世界であり、同時にヘタに弱者扱いされるとプライドを傷つける恐れがあるのだが――それでも言いたかった。
「じゃが、リビルドアーミーとの戦いの傷はまだ癒えきっておらんじゃろ? 無理をすな」
「あなた達は立派です。文字通り命を賭して自分達の土地を守ろうとしている。正直援軍はありがたいのですが――敵はリビルドアーミーやヴァイパーズだけじゃないでしょう」
「確かにな・・・・・・ヴァイパーズの後釜や食い残しを狙っている野盗連中は大勢出るのは想像はつく」
「言いたい事は分かります。この土地をヴァイパーズやリビルドアーミーの連中に奪われたらしまいだと。だけどその戦いを乗り越えた後も考えて動いてもバチは当たらない筈です」
「ふむ――成長したな・・・・・・」
「へ?」
キーツさんに褒められて俺は「?」となった。
「老兵の戯れ言じゃよ。それに最近人を見る目に自信が無くなってきたからな。まさかリビルドアーミーにケンカを売る連中とは思わなんだし――」
「はあ・・・・・・」
「老人の長話に付き合わせて悪かったな――マイアは――」
「ここにいます」
「マイアさん!?」
シップタウンの代表者マイアさん。
長い髪の毛をお団子さんにしたヘアースタイル。
メガネをかけた母性的な顔立ち。
大きな胸で軍服風の姿の女性。
彼女の登場に周りも静まりかえる。
「私は悩んでいました。ですが自分が自分の出来る範囲で自衛隊を手助けするつもりです」
「ちょっと、そんな重大な決断を決めていいんですか? ヴァイパーズだけじゃなくリビルドアーミーの連中とかも――」
と、俺は助け船を出すが――
「私なりにちゃんと考え、様々な人々にも相談した結果です。それにリビルドアーミーのやり方を考えれば適当に難癖をつけて攻めてくるのは明白です」
「あ~そうだな・・・・・・」
当事者だからマイアの言い分は分かる。
リビルドアーミーのやり方はチンピラのソレだった。
「このまま静観を決め込んで、もし自衛隊が敗北したら未来はリビルドアーミー、あるいはヴァイパーズによる暴力の支配になるでしょう。そうならないように、勝算があるウチに自衛隊と一緒に戦う道を選択するのが最善だと判断しました」
「・・・・・・これがこの世界の指導者か」
比べるのは間違いかもしれないが、日本の政治家とは根本的な部分で格が違う。
俺は暗号通信でシップタウンの決断を自衛隊――五籐陸将に伝えた。
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