第三十四話「あれから・・・・・・」

 Side 緋田 キンジ


 パワーローダーも元通り。


 空中戦艦も基地の傍に停泊?

 とにかくどかした。

 いざと言う基地は臨時基地、移動基地司令本部にする腹積もりらしい。

 てかこの空中戦艦どう言う原理で浮いてんだ?

 ロボットアニメのご都合主義粒子かなんか?


 野盗やヴァイパーズの襲撃ラッシュも収まり、施設科などが復旧作業を行い、新兵の出迎え、訓練を行っている。


 向こうでは今回のリビルドアーミーとの一連の戦いは大々的に報道され、注目を集めていたようだ。


 それで大論争を巻き起こしているらしい。


 こりゃ自衛官の志願者減るなとか思った。


 それはそうと――


「で? 佐伯一尉? なんのようで?」


 佐伯 麗子一尉。

 どうやらまだしぶとく生きていたらしい。

 今はパワーローダーの格納庫で肩を並べて話し合っていた。


「ヴァネッサからの情報だ。ヴァイパーズが此方の態勢が整う前に決戦を仕掛ける腹積もりかもしれん」


「ヴァイパーズか・・・・・・」


 厄介な連中だ。

 また大部隊で包囲されてパワーローダーで突っ込まれて白兵戦に持ち込まれたら被害が出る。


「他にも北部や東部もなんだかんだで忙しくて手付かずだ。そちらの調査を任せてもいい」


「そう言えば俺達独立部隊扱いでしたっけ?」


「まあな。第7偵察隊もシップタウンから離れて独自に活動している」


 宮野一尉たち、今頃どうしてるかな・・・・・・


「なんなら一旦日本に戻って休暇してもいいぞ」


「日本に戻ってもやることねえしな・・・・・・」


「なんならこの世界で知り合ったお嬢さん達を案内するか?」


「血液検査とか色々と大変だろう」


「それは仕方ないと思って諦めてもらうしかない」


 リオやパメラ、パンサーを日本に案内したいと言う気持ちはあるが、文化の違いで何からの騒動が起きるのは目に見えている。

 

 それに一番の問題は血液検査だ。


 絶対いやがるだろうなと思う。


 ちなみにこれは自衛官も同じで日本に戻る場合は事前に上に報告し、健康診断を受けて正常判定を受けてから戻れると言う感じだ。


 あのウイルスのせいで第三次世界大戦かよってレベルで人が大勢死んだのだ。

 あのレベルの新たなウイルスが持ち込まれでもしたら大変な事になるのだから、ここまで警戒するのは分からんでもない。


「まあ、どうするかはよく考えて決めておくことだ」


「どうも――」 


 さて、どうしたもんかね――



 基地の外に出てリオ達と相談することにした。


 周囲は相変わらずオセロだのトランプだのの、地球産娯楽製品が大ブーム中だ。


 PXも繁盛している。


 勿論今後についてだ。


 キョウスケとも後で相談する。


「うーん。私はヴァイパーズの動きが気になるかな?」


 と、リオが答えた。


「北部と東部とかは行ったことあるし、案内してあげよか?」


 パンサーはそう答えた。


「そういや北部や東部には確か――」


「北部はまあ町とか色々と転々としている感じかな。東部はシェルターの人達とか海に出る感じ」


「ああ、資料だけでしか知らない」


「西部はまあリビルドアーミーの勢力圏の町とか村とかで、南部はシップタウンの他に軍艦墓場って呼ばれる場所がある。別の軍事基地やら町やらがある感じかな」

  

 と、簡潔にパンサーは語った。

 この当たりも資料通りだ。


「さて・・・・・・どうしたもんか?」


「ならパワーローダーの聖地はいかがですか?」


「ヴァネッサ!? 突然現れるな?」


 ここでヴァネッサが唐突に現れた。


「どうもヴァネッサです。前回の戦い正直危なかったでしょ? 私的には戦力を増強する事を提案します」


「確かに・・・・・・前回戦って死にかけたしな・・・・・・だけどどうすればいいのやら」


「この世界を一度見て回るのはどうでしょうか? シップタウン以外にも様々な場所がありますよ」


「言わんとしている事は分かるが何を企んでいる?」


「私としては第13偵察隊の人達に強くなって欲しいだけです。特にアインブラッドを撃破出来るレベルの搭乗者は希ですから」


「強くなってどうさせるつもりだ?」


「神殺し」


「かみごろし?」


 唐突にとんでもない単語が出てきた。

 こんな神も仏もいない世界に神?

 何かの例えか?


「この世界に関わり続ければ何れ分かることです。そのためにも力をつけておいてください」


 そう言ってヴァネッサは去って行った。


「カミ? そんなのいると思う?」


「何かの例えじゃない?」


 リオの疑問にパンサーがそう答えた。

 俺もそう思う。


 だが神殺しと言う単語を出した時のヴァネッサの表情は何時もと違って真剣だった。


 例えのような存在だとしてもそう言う絶対的な何かがいるのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る