第二十八話「この世界の人々は決断した」
Side アネット
「まったく、リビルドアーミーの連中とやり合う事になるとは思いませんでしたわ」
「でも姉さん、報酬はかなり貰いましたね。ここらで引き際弁えて退散します?」
「うーん」
ニッパの言う通り。
報酬+リビルドアーミーからかなり分盗った分で暫くは楽な暮らしが出来るだろう。
聞けば再度の襲撃の可能性を考えてもう一戦やり合うらしい。
しかも空中戦艦まで出張ってくる可能性があるのだとか。
ニッパの考えが正しいのだろうが――
「では何処へ向かいます?」
「え?」
「無理強いはしませんわ。報酬も持っておいきなさい」
「姉さんはどうするんですか?」
「一度限りの人生、勝負を仕掛けてみようと思いますの――疲れたのかも知れませんわね。水を巡って、食料を巡って、未来に不安を覚えながら生きていく日々――」
「姉さん・・・・・・」
ニッパは何も言わなかった。
彼女は脳天気そうではあるが、この世界出生きていく道理やルールは分かっている。
「だからこそ、懸けてみたいと思いますの。新しい未来に」
「ジエイタイの人達は?」
「無理強いはしないと。食料や水も好きなだけ持って行けって――泣きながら――全くお馬鹿さん達ですよね――」
「仲間達と相談してきますけど、たぶん皆残ると思いますよ。姉さんがいたからここまで辿り着けたんですから」
「そう――」
本当にバカばっかりなんですから。
リオやパメラ、パンサーにしてもそう。
すっかり彼達――ジエイタイの人達に感謝して。
日本の人達が全員そうなのか。
それともジエイタイの人達が特別なのかは分からないが。
少なくともここにいるジエイタイもとんでもないお人好しのバカ達だ。
普通ならこの世界で数日も保たずに野垂れ死ぬような連中だ。
そんなんだから惹かれたのだろうか・・・・・・
ああ、私もバカなんだ・・・・・・
そう思ってしまうと笑ってしまう。
Side 緋田 キンジ
戦闘準備の真っ只中。
なんか妙な集団が現れたと聞いて対応することになった。
全員が全身白尽くめでガスマスクをつけ、スナイパーライフルを持った集団だった。
「なあ、リオ? 彼達の事は分かるか?」
物は試しにリオに聞いてみた。
「主に地下部に潜む部族達よ。私達も詳しくは知らないけど――地下族って呼ばれている」
俺は「地下族ね・・・・・・」と言いつつその人達に近寄る。
「えーとアナタ達は何しにここへ」
『失礼。アナタはジエイタイの方ですな?』
「はい――」
『我々は地下族と呼ばれている物です。リビルドアーミーと戦うと聞いてここに駆けつけて来ました』
「えーとこの辺りに住んでいるんですか?」
『はい。ずっとアナタ達を監視していました』
「え!? ずっと!?」
『最初はリビルドアーミーの新手かと思いました。もしくはそこから派生した組織かと――だけど調べていくウチに違うと来た。そしてリビルドアーミーと戦う事を決意した』
「いや、リビルドアーミーと戦う事になったのは場の流れと申しましょうか・・・・・・」
『それでも我々にとっては一族の命運を左右しかねない程の大事な事です。リビルドアーミーは年々力をつけ、そう遠くない未来――奴達にこの世界は支配されるでしょう。そしてそれはアナタ達が敗北すれば同じなのです』
「・・・・・・俺達の世界の資源がリビルドアーミーに渡れば終わりって考えか」
『その通りです。潤沢な食料や水、資源――それが渡ってしまえばもはやリビルドアーミーは誰にも止められません。このまま滅び去る未来を待ち受けるよりかは勝負に出たいと言うのが我が一族の考えです』
「あ~一応言っときますけど――確かにリビルドアーミーと全面戦争みたいな状態になってますけど、俺達の目的はなんでこの世界にゲートが繋がったのかの調査が目的ですからね? その辺りは分かってます?」
『承知の上です。それに――我々にも非があります』
「え?」
『この状況に至るまで、手を差し伸べるどころか我々は立ち上がる事は出来なかった。出来る事と言えばお亡くなりになったジエイタイの身柄を綺麗にして返すことぐらいです』
「もしかして行方不明になっていた他の偵察隊の――」
武装が貧弱だった、元の世界の武装を使用していた初期の頃。
偵察隊を四方八方に派遣して多くの犠牲者を出した悲劇がある。
その時の自衛官はまだ全員が見つかってないと聞いていた。
たぶんその人達なのだろうと思った。
『一族を代表してお詫び申し上げます。基地の代表者にもお伝えください』
「分かった・・・・・・」
『それともう一つお詫びとしてグレイヴフィールド内の抜け道や自分達の持ってる情報を教えましょう』
「ッ!? 分かった、すぐに基地の代表者に会わせる。俺に伝えるよりその人に伝えてくれ!!」
『感謝致します』
「それにしてもそれってアナタ達の生命線ですよね? よく教える気になりましたね?」
『これまでの非礼のお詫びです。既に仲間達がグレイヴフィールド内のリビルドアーミーに戦闘を仕掛けております。時間稼ぎにはなりましょう』
「助かる――律儀なんだな――」
『信用を得るためには行動で示さなければならない。それが我々の部族の教えな物でして』
「とにかく案内するよ」
『分かり申した』
☆
Side リオ
「うわ~凄いね。謎に包まれてた地下族の人達まで味方につけちゃうなんて」
と、地下族を案内するジエイタイの事をパンサーが賞賛していた。
地下族は恐ろしい連中で野盗やヴァイパーズだけでなく、リビルドアーミーですら易々と手を出せない殺し屋集団だった。
想像よりも義理堅かったのにも驚いたが、それよりもあそこまで下手に出るなんて思わなかった。
「情けは人のためにあらずって言うのかしら――」
「なにそれ?」
パメラの言葉に私は首を捻る。
ここに来たと言う事は整備作業も一段落したのだろう。
「ジエイタイがいた国の言葉よ。よく意味が誤解されるらしいんだけど、人への情けのお礼は巡り巡って自分の元に何かしらの形で返ってくるって言う私達には無縁な言葉よ」
「さっきのはまんまそれだったね」
パンサーの言う通りさっきの光景はその言葉を言い現した物だった。
周囲もザワついている。
「どうする? 俺達もまた一発かますか?」
「報酬が出るかどうかは分からないが――リビルドアーミーにもう一発かませるなら悪くないかもしんねえ」
「あのジエイタイの連中、自分達だけでもやるつもりみたいだぞ」
「正気かよ? まあ、泣きそうな顔で物資あるだけ置いていってくれたもんな」
「今度はもっと大部隊で戦艦まで出て来るかもしんねーんだろ? 勝ち目あんのか?」
「それでもやるってよ」
と口々に言い合う。
「私は――戦う」
私は再び決意し直すように言った。
「なに? やっぱり惚れてるの?」
パンサーは冗談めかしに言うが。
「かもしれない」
私は否定せず、パメラが「えっ!?」と驚く。
パンサーは「おおー! いいね-!」などと盛り上がっていた。
「ヒダ キンジって人?」
「うん」
私は言った。
言ってしまった。
「そう――パンサーはどうなの?」
パメラはパンサーに尋ねた。
「私どちらかって言うと彼方此方放浪するのが性に合ってるタイプなんだけどね? ジエイタイの人達嫌いじゃないし、こう言う祭りに参加しないと損じゃん」
「アナタもなんだかんだで好きなのね――まあ私はリオと一蓮托生だし、付き合うか・・・・・・」
「パメラも素直じゃないんだから。私も一緒に戦いたいっていいなよ」
そう言われてパメラは「パンサー・・・・・・あのねぇ・・・・・・」と恥ずかしそうにしていた。
なんだかおかしくなってしまう。
不思議な物だ。
先程とは比べものにならない程の大規模な戦いになるかも知れないのに。
私の勘違いか、それともジエイタイの人達の不思議の魅力がなせるワザか。
リビルドアーミーに勝てる。
そんな気がするのだ。
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