第一話「一週間後」

 Side 緋田 キンジ


 突入から一週間経過した。

 

 かなりの自衛官が脱落したが(物理的な意味も含めて)、任務は続行だ。


 そろそろ籠もってないで偵察する事になったが――先行して偵察に出た連中は行方不明になっていた。


 その偵察隊のメンバーの行方を捜すのも任務の一つになっていた。


 酷い時は戦闘ヘリが墜落したり、戦車を失ったりする。


 残された記録から分かった死因は様々だ。


 ゾンビやオーク、サメの群れにやられた。


 他にも武装勢力や殺人ロボットの襲撃などだ。 

 

 士気も低くなり、元の世界に帰る隊員は増えている。

 

 現地で手に入れた武器は原則、規則で上に渡さないといけないらしいのも拍車が掛けている。

 上の連中は自分達よりも大国の機嫌取りに奔走しているのだろう。


 このままだと自衛隊、反乱引き起こすんじゃないかと思う。


 それとも政府の連中は俺達が反乱を引き起こすと考えてるのではなかろうか。

 

 まあ、んな事よりもだ。


 現在おれたち第十三偵察隊は偵察任務と消息を絶った偵察車両の行方を探りながら見晴らしの良い道路を車両と供に歩いていた。

  

 道路は雑草が生い茂り、路面もボロボロでひび割れや陥没し放題の最悪のコンディションだ。

 

 道路を歩くよりも土の地面を歩いた方が歩きやすかった。


 そうして件の消息を絶った偵察車両を見つける。

 日本語で書かれたナンバープレートや日の丸のマークが無ければ分からなかっただろう。


「ヒデェ・・・・・・物資所か身包み全部剥がされてるぞ・・・・・・」


「ああ・・・・・・」


 キョウスケの言う通り酷い物だった。

 金目になりそうな物は全部略奪されてその辺に放置されていた。 

 死体からも衣服を剥ぎ取り、下着やドックタグすらも盗られていた。


 車は金になりそうな物は片っ端から剥ぎ取られていた感じだ。

 

 この分だとドライブレコーダーも見つからないだろう。


「ナンバープレートもありゃしねえぞ――遺体を持ち帰るしかなさそうだな」


「そうだな――」


 そう思っていた矢先――

 

「人を発見!!」

 

 部隊内でルーキーと仇名を付けられていた兵士がそう言うや否や発砲してきた。

 遠くの物陰から次々と武装集団が現れる。

 


 俺達は退避行動を取りながら増援を待つことにした。

 廃墟群に全力疾走して身を隠し、そして銃弾を発砲。

 相手の武装が強力でも生身の敵はどうにかなる。


 だが問題はパワードスーツだ。


アレはパワーローダーと呼ばれる核動力で動くパワードスーツであり、装甲も12・7mm弾程度なら止めてしまう程の装甲だ。

 

 ヘビのマークがついているがソレが奴達のトレードマークなのだろう。

 

「どうする? このままじゃ遠からず被害が出るぞ?」


 キョウスケに言われるが――


「包囲される前に武装を置いて逃げるしかない」


 と、俺は答えた。

 このまま戦っていたら勝ち目はない。


「その案に賛成したいが車には全員乗れないぞ?」


 キョウスケの言う通り全員は乗れない。

 それに敵にも車両はある。

 誰かが引き留めないといけない。


「増援は? 基地とは目と鼻の先だろう」


 キョウスケは質問を変えた。


「あと数分――戦闘ヘリが来るし近くの部隊が急行してくれている」


「その前に殺されそうだけどな!」


 などと言い合いしつつ応戦する。


その時だった。

 

「アレは――武装トレーラー!?」


 隊員の一人がそう言う。

 遠方に大きな灰色のトレーラーが見える。

 敵の増援だろうか。

 どうやら数分も持ちそうも無さそうだ。

 

 それどころか生半可な増援では逆に餌食になる。

 俺は貧乏くじを引いて撤退する覚悟を決めた。


「青いパワードスーツ出現――敵を攻撃しています!」


「なんだって!?」


 部下の報告に俺は驚いた。

 スコープで遠距離から様子を覗く。

 細心でヒロイックなシルエットの暗い青のパワードスーツが次々と手に持った武器――二丁拳銃(パワードスーツサイズで大口径)スタイルで次々と撃ち倒していく。

 

 他にも違う機種の黒いパワードスーツが出現した。

 背中の大きなバインダーや一つ目、頭頂のトサカ、エアダクトのような口元とマッシブな外観と良い、明らかに別人。

 マシンガンとバズーカで容赦なく敵を倒していく。

 

 形成の逆転を悟ったのかあっと言う間に敵は撤退していきやがて、助けてくれた人々と合流した。

 俺は念入りに部下達に「撃つな」と命じ、接触を図った。

 最初に見た濃紺のパワードスーツ、二丁拳銃使いはヘルメットを外す。


 まだ若い。


 十代半ばぐらいだろう。 


 水色髪で少年漫画の主人公のように刺々しくボサッたい。

 野性味と十代半ばの女の子らしさが同居している雰囲気だった。


「私はリオ。通りすがりのトレーダーよ。アナタの名前は?」


 これがリオ達との出会いだった。

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