鋼の異世界(世紀末)と自衛隊奮闘録【第3部・多元世界編・完結】

MrR

異世界との接触

プロローグ:駐屯地が異世界の洗礼を味わった

 Side 緋田 キンジ


 何の取り柄も無い田舎町に存在する境界駐屯地。(駐屯地=陸自の基地の一つ)


 そこで腐れ縁の宗像 キョウスケと一緒に女クソ上司の佐伯 麗子に言いように使われながら自衛官としての日々を過ごしていた。


 そんなある日、境界駐屯地で謎の物体が見つかった。


 駐屯地内に出現した大きな謎の物体――それをゲートと呼称。


 一先ず周囲を取り囲んでの戦闘配置だ。

 

 ゲートの外装はアレだ。


 中世ヨーロッパの神殿みたいな感じではなく、宇宙戦艦が潜り抜けそうなワープゲートみたいな外観だ。

 この時点でイヤな予感はした。


 万が一の事になったらどうなるかは知らないし誰も想定してない。


 日本人と言う奴は想定外の事にはとことん弱い民族だ。


 自衛隊なんかもそうで、武力行使と言う最終段階を踏むにはクソ面倒な手続きを踏まないといけない。


 命のやり取りでそんな事をしてるウチに部隊は全滅するだろう。


 だからパト○イバー2とかフロント○ッション3(自衛隊が反乱起こす物語)のような物語が誕生するのだ。


 それはともかく――


 ゲートから現れたのは剣と魔法の異世界らしい住民ではなく、赤いオークとかトロルとか作品によって色々と言われている2m越えの厳つい巨体の原始的な集団だった。

 しかも手には武器を持っている。

 棍棒とかの鈍器ではない。

 様々な銃だ。

 ガトリングガンやロケット砲まで持ってる。

 

 交渉する余地もなくそのファーストコンタクトで大勢死んだ。

 

 俺とキョウスケは隊長の制止を聞かずに後退した。

 言い訳なら後でなんとでも説明がつく。

 その隊長も死んだだろうし。


 大きな大爆発が起きたのはその直後だ。



 駐屯地内は当然蜂の巣を突いたような大騒ぎになった。

 そりゃそうだ。

 ガトリングガンやロケットランチャーで武装した人型の何かが暴れ回っているのだ。

 米軍とかならともかく、軍隊なのか武装した災害救助隊なのかよく分からん組織ではちと荷が重い状況である。


「で、俺達命令違反しまくってるけど大丈夫か!?」


 相方の宗像 京介が銃を発射する。

 一旦後退して建物の壁に隠れて、銃を発射。


 俺も肩に銃の反動と激しい目眩や動悸を感じながら銃を撃つ。

 ちゃんと弾が当たっているのかどうかすら分からない。


「現場の判断って奴だよ!! 面倒な手順踏んでる場合か!!」


 と、俺は怒り混じりに言い返した。

 漫画の自衛隊の武力行使は大体、漫画だから許される漫画ならではの描写だ。

 現実の場合は本当に複雑で面倒である。


 それよりも今は敵だ。


「あいつら銃弾当たってもピンピンしてるぞ!?」


「5・56mmじゃ無理だな……7・62mmか……せめて12・7mm弾かそれぐらいの重火器じゃないと殺せない」


「だな」


 自衛隊の駐屯地には各種重火器が大なり小なり配備されている。

 それこそ対戦車用の重火器もだ。 


「だがこの状況だと武器取りにいく時間も惜しい――」

  

 俺はそう言う。


 万が一、一体でも町に入り込ませたら大惨事だ。

 誰かが貧乏くじを引いて足止めしないといけない。


「しゃあねえ、地道にヘッドショットを決めて殺してくしかねえな」


「やり合う気満々かよ」


 俺は相方のキョウスケの態度に呆れていた。


「あんなヤツらを市街地に解き放ってみろ? 史上最悪の大惨事になるぞ?」


「同じ考えか――」


 と答えつつ頭を働かせる。

 遠くから敵を観察する。


「あいつら――武器は強力で身体は頑丈だが――統率が取れた行動しているワケじゃないみたいだ」


「ああ。まるでそれぞれが人殺しを楽しんで動いている感じだ」


「そこを上手く利用して各個撃破していくしかない」


「その案しかねえな」


 俺もキョウスケも腐っても自衛官らしい。

 銃の残弾を確認し、そして心を落ち着けるように覚悟した。 

 


 無事な仲間と合流しつつ、はぐれた相手の群れを各個撃破していく作戦は上手くはまった。


 さらには敵の武器を鹵獲して使用したり、敵の武器を狙撃して破壊したりと戦術面で成功を収め、更には重火器で武装した味方が増援として駆け付けてくれた時には大勢は決する。


 余所の駐屯地から増援が来た時には戦闘は終結。


 化け物相手とは言え、初めての実戦で皆まいっていた。

 

 俺と宗像 キョウスケ及び、戦闘を独断で行った自衛官達はMP(ミリタリーポリス。自衛隊相手の警備員、風紀委員)に連れられる事になったが正直今は独房にでもなんでも引き籠もりたい気分だったのでありがたかった。


 これが地獄の始まりだとは知らずに。 

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