過去篇
過去篇 第1話 神城空良
※ここから過去編が始まりまーす! 1話はプロローグ的な物なので淡々と進みます。
あっ! しまった。本編のタイトル、初めにプロローグ使ってたのに、最後にエピローグつけてなかった。
すっかり忘れてた……という事で、直したので最終話のサブタイ変わってまーす。
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私の名前は、
母は関西生まれのバイオリニスト、父は関東生まれのコントラバシニストで、両親共に音楽家系の家に生まれた。
兄弟姉妹は3人居て、兄は志努『シド』、妹は双子で麗未『レミ』と美華『ミファ』という。
皆の名前を繋げると、ドレミファソラシド(ミが1音多いが)になるという、ちょっとふざけた感じで命名されているが、両親は至って真面目に考えたらしい。
母は普段は標準語なのだが、怒るとつい関西弁が出てしまうらしい。関西弁で怒られるととても怖いんだけど、父はそれが良いらしい。
そして、見た目は清楚で小柄で可愛らしい人なのだが、マッチョが大好きな肉食女子だった。
なので、勿論父はマッチョだ。
大きな楽器である、コントラバスの奏者だからマッチョなのではなく(別にマッチョでなくとも普通に弾ける楽器)、大学時代に同じ楽団にいた母に一目惚れをして、その母の好みがマッチョだという事を知った父は、本格的なジムに通い、かなり頑張ってマッチョになったそうだ。
そして、その父の頑張った証であるマッスルボディーが母の目に止まり、父からアタックする前に、肉食女子な母に猛アタックされたらしい。
そんなマッチョな父が大好きな母は、1人目の子どもである兄が、父そっくりな男の子だったので、ついついマッチョに育ててしまったのだという。
兄と8歳違いの私は、物心ついた頃には、母と父と兄が筋肉について語り合っているのが普通になっており、小学校へ上がる頃には、父も兄も筋肉ムキムキだったので、筋肉のない男性は、どこか物足りないと思うようになってしまっていた。
中学生になる頃には、母が集めていたマッチョな俳優さんの雑誌を一緒に読むようになり、父と兄には『俺達よりナヨナヨしているやつは空良の彼氏として認めん!』 と言われ、勿論私も普通体型には物足りなさを感じてしまっていたので、笑顔で同意していた。
そして、2歳違いで双子の妹達も私と同じ理由でマッチョ好きになっていた。
その為夕食時には、マッチョな俳優の筋肉について語り合い、格闘家の筋肉について盛り上がっていた。
そして妹達と共に、未来の旦那様の筋肉を育む食事を母から伝授されたり、毎日筋肉な話ばかりで、両親の家系の象徴であった音楽とは無縁の日々を過ごしていた。
その為、音楽の道へ進まない私達を、祖父母は残念がっていたが、母は幼少期から『音楽よりも筋肉や!』 と言っていたようで、母がバイオリニストになったのも奇跡に近かったらしく、残念とは思いつつも、早々から諦めているそうだ。
そして、私が中学になった時、この年でマッチョな男子なんて(兄以外は)居ないだろうからと、まだ期待はしていなかった。
その予想通り、中学生のマッチョは居なかったし、これといって好きな人もできなかった。
しかし、高校になれば、1人くらいマッチョを見かけるだろうと思っていた私の予想は裏切られた。
何故なら、私の通う高校には細マッチョしか居なかったのだ。
細マッチョとマッチョは違う。……細マッチョとマッチョは違うのである。(大事なことなので2度言った)
兄が高校くらいの時は、既に完成されたマッチョだったので、少し期待していたのだが、世の中そんなに甘くはなかったようだ。
という訳で、しょんぼり過ごした高校時代。
母曰く、たまたま私が居た高校の、私が居た学年の前後の年代は、極端にマッチョが少なかったそうな。
ていうか、そんな情報どこから持ってきたんだろ? まぁいいか。
そして、中学・高校と理想的なマッチョに出会えなかった私は、恋愛をすること無く大学生になっていた。
どんなにイケメンでも、筋肉が無いと、ときめかなかったのだ。
という事で、全然マッチョに出会えなかった私は、どうせ大学も理想的なマッチョなんて居ないんだろうなと、半ば諦め半分で通っていたある日……出会ったのである。
そう、理想的な、俺様イケメンマッチョに出会ったのである。(理想が増えてる)
それは、サークルの勧誘をしていた、とある先輩だった。
均整のとれたマッチョな体躯、ちょっと強面だけど整った顔面で俺様感が溢れ出ていて、一目見て身体に電流が走ったような感覚になった。
そう、一目惚れをしてしまったのだ。
恋愛なんてした事が無かった私は、どうすれば良いのか分からず、とりあえず隠れた。
ドキドキと胸が高鳴り、顔に熱がこもって熱くなる。初めての感覚に戸惑いながら、落ち着こうと深呼吸をする。
数回の深呼吸で少し落ち着いたので、もう一度こっそり見てみたが、見間違いではなく、ちゃんとマッチョだった。
また胸が高鳴る。
これは心臓に悪い。近くで見たら呼吸ができなくなりそうだと思った私は、その先輩の姿を見かけたら陰に隠れて眺めるという、少しストーカーちっくな行動を取るようになっていた。
そして、受けていた講義の関係で、ほぼ毎日先輩を見かけていた為、こっそり眺めているだけでも、名前やその他、色んな事を知ることが出来た。
先輩の名前は、
ネットゲームと釣りが好きで、週末にはサークル仲間で釣りに出かける事が多いという。
そして、駿先輩の女性の好みは、ゆるウェーブのかかった茶髪、キツめの顔の美人で、身体はボンキュッボン。
因みに私の容姿は…………。
母似の、ストレートで艶のある黒髪に、顔は童顔で背はちっちゃい、胸も…………ちっちゃい……。駿先輩の好みにカスリもしなかった。
そのせいもあり、さらに恋愛初心者で奥手なせいもあり、毎日陰から隠れて眺めていただけだった。
しかし、ある日、いつも通り駿先輩を陰から眺めていたら、駿先輩といつも一緒にいる先輩に見つかった……というか、目が合ってしまったのだ。
その先輩は、
なので全然タイプでは無かったが、何故か1人でこちらへ近寄り、どうして見てたのかな? と、とても優しく話しかけてきたので、隠れて見ていた事は伝えず、何となく見ていたと伝えると、そうなんだと言って去っていった。
そんな返事で納得するのか? と思いつつも、しつこく聞かれなかった事にホッと胸を撫で下ろしていた。
それから、何事もなく日々が過ぎていたのだが、ある日、突然後ろから呼びかけられたので振り向くと、そこには片桐先輩の姿が。
そういえば、片桐先輩は駿先輩と同じサークルで、こないだ話しかけられたよなぁと思いつつ、なんとなく片桐先輩の後方を見ると、そこに駿先輩が居て、こちらに向かって歩いてきていた。
思わず凝視した為、駿先輩と目が合ってしまった。
その瞬間、心臓が口から飛び出しそうになったので、片桐先輩に話しかけられているにも関わらず、その場から逃げ出してしまった。
そう、脱兎の如く逃げたのである。
恥ずかしすぎて逃げたのである。
小心者と言ってくれるな。恋愛初心者な私には、視線すら合わせるのが無理だったのだ。
気づけば校門まで走って来ていた。ドキドキ高鳴る胸は、走ったせいなのか駿先輩と目が合ったせいなのか……。
とりあえず、その日の講義は終わっていたので、そのまま帰ることにした。
そしてその帰宅中、突然歩道に突っ込んできたトラックにはねられたのである。
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