第35話 帰国
そして、そんな日に限ってノア様と一緒の夕食で、ぐったりしている私を見てノア様が言った。
「カイルあんたちょっとやりすぎよ、ソフィアがヘロヘロじゃないの……エロ可愛いのはわかるけど程々にしなさいね」
「ノア殿下、エロ可愛いのがわかるとは?」
「そりゃぁ散々悪戯したもの」
「悪戯?!」
「ふふっ、なぁに? 嫉妬してるのかしら?」
「いえ、嫉妬ではなく、どんなことをしていたのか気になっ……ごほん」
「あらやだそっち??」
2人の会話に色々突っ込みたいけれど、そんな元気がありません……モソモソと夕食を食べる私。
「まぁいいわ、とりあえずソフィアは今日はこっちで寝なさい。そしてカイルはちょっと落ち着きましょうね、ソフィアが持たないわ」
確かに、このままカイル様の部屋で一緒に寝たら、朝までイかされ続けそうだわ……。
カイル様は、もっと淡白なのかと思っていたけれど予想外だったわ。
「そうですね、ちょっと浮かれすぎました。ノア殿下、今晩はソフィアに絶対悪戯はしないで下さい」
「顔が怖いわね。わかってるわよ、ソフィアがこんなに疲れてるのにそんなことしないわよ」
良かった、今晩はゆっくり寝れそうだわ。
そして夕食の時間が終わり、されるがままの入浴の後ノア様の寝室へ。
ソファーで、うとうとしながら本を読んでいたらノア様がやってきた。
「ソフィアまだ起きてるの?」
「あ、はい、ちょっと、うとうとしてました」
「疲れてるのね、早くベッドで寝なさい」
「はーい」
言われるがままにベッドへ移動。
極限に眠たいわ……。
「そんなに疲れてるってことは最後までやっちゃったのかしら?」
「えぇ? 最後まではやってませんよ……ふぁぁぁ……」
いけない、眠すぎて欠伸が出てしまったわ。
「あら? そうなの? なぁんだ。……でも、最後までやってないのにそれって、大丈夫なのかしら?」
心配そうに言われたわ。何に対しての大丈夫なのかはわからないけれど……。
「カイルがあれほど溺愛するとは思ってなかったから、色々予想外だったわ。で、悪戯は残念だけどもうおしまいね。カイルに何されるか分かったもんじゃないわ……」
「それは、良かったで……す……むにゃ……」
ベッドがふわふわでとっても眠たいわ。
「やっぱり無防備ね……まぁ、これからはカイルが守ってくれるから大丈夫かしら?」
―――――――3ヶ月目―――――――
「あっという間に3ヶ月ねー。2人のイチャイチャぶりが見れないと思うと……清々するとともにちょっと寂しいわね」
「イチャイチャって……」
「始終べったりくっついてて、隙があればキスやハグ、夜は2日に1回カイルの部屋にお泊りしておいて、イチャイチャしてないとは言わせないわよ」
「あう……」
確かにそんな感じだったから反論できないわ。
「それよりもノア殿下、魔道具はもう使用できるのですか?」
「それよりもって、カイルってばなんだか図々しくなったわよね……私王子よ。まぁいいわ、魔道具は昨日確認したから大丈夫よ。すぐにでも使用できるわ」
やっと帰れるのね! 長かったようで短かったわ……。
あ、でも帰っちゃったら、カイル様も騎士のお仕事があるし、こんなに毎日、カイル様と一緒にはいられなくなるのよね……ちょっと寂しいわ。
でも、帰ったら親にちゃんと挨拶をして、正式に婚約者になると言ってくれたし、早く婚約して最後まで……げふんげふん。
あと、エドガー王子とレオ様の件は、カイル様と婚約すると説明したら大丈夫かしら? ちょっと不安だけれど、カイル様も一緒にお話してくれると言っていたし大丈夫よね。
そして、昼食後に帰るという事で、ノア様に荷物をまとめときなさいと言われたものの、全部こちらで用意してもらった物だし、どうしようかと悩んでいたら、ノア様が全部持って帰りなさいと、収納魔道具(大)を持ってきて、そこに全部詰め込んでくれた。
服や小物は勿論、4日目ぐらいで食事が濃ゆくて食べられなかった時に、私用の味付けにブレンドされた、スパイスとかお茶とかまで……何だか嫁入りの荷物みたいになったわ。
そして、収納魔道具自体(大)は高価な物なのに、そんなもの沢山あるからいいわよって、そういえばエブラータ王国って、マルティネス王国より魔道具の開発が進んでるんだったわ……それでも太っ腹ね。
まぁ、そんなことよりも、とりあえず帰国よ!! 両親やミアとは通信魔道具で連絡をとっていたけれど、早く会いたいわ。
そして昼食後、カイル様と共に聖堂のような場所へ案内された。
「うわぁ、こんな所があったんですね」
「ここは、王族以外は立ち入り禁止らしいから、知らなくて当然だな」
カイル様は物知りね。そして、付き添いの騎士はノア様が来るまで待機するということらしいわ。
「帰ったら毎日は会えなくなるが……一緒に住むようになるまで我慢できるか?」
そうなのよね、さっきも思っていたのだけれど、これだけ毎日会っていたのに、会えなくなるのは辛いわ……。
でも仕方がないわ、片道3時間の道のりを毎日は、金銭的にも時間的にも厳しいし。
「はい、我慢します。でも……できるだけ会いたいです……」
ついついぽろっと本音が出てしまったわ……呆れられていないかしら? とカイル様を見上げる。
「そうか、私もできるだけ会いたいと思っているから同じだな」
そう言って、嬉しそうな笑顔でキスをしてくる。
「こらっ!! こんな所でイチャイチャしないの! 付き添いの騎士が困ってるでしょ!」
と言いながら、ノア様が馬車とともにやってきた。
ハッとして横を見ると、困った表情の騎士が居た。ごめんなさい存在を忘れていたわ……。
「さぁ、中に入るわよ」
そう言って、ノア様は馬車と、護衛騎士2人と側近1人、使用人2人を連れて入っていった。王族の旅行的な物なのに思ったより少人数ね……。
「あら? どうしたの? 不思議そうな顔をして」
「あっ、いえ、思ったより人数が少ないんだなぁと思いまして」
「まぁそう思うわよね、でもこの魔道具は人間は8人まで、荷物は馬車1台分しか運べないから仕方がないのよ。因みに、この魔道具は現存する魔道具の中では高レベルな方なんだけど、エネルギーを貯めるのに4ヶ月もかかってしまうのよね。水を作る魔道具みたいに、エネルギーを貯めなくても使える物を作りたいものだわ」
以前も話したけれど、水を作る魔道具と、積乱雲を消す魔道具は、大昔に作られた上に構造も何もかもが不明なのだ。
「そんなものができたら、他の国から攻められてしまうと思いますが」
カイル様がそう言った。
確かに、普通はそうなるわよね……うちの国はどうなんだろ? 争い事が嫌いだから攻めたりは無さそうよね。
「そうなったらその時考えるわ。とりあえず中に入りましょ」
ノア様に言われ中に入ると、まず目に入ったのが床の模様だった。
青いインクで大きな魔法陣のようなものが描かれていた。
そして、その周りには大きな機械が、四角を描くように4台置かれていた。
何だかよくわからないけれど、前世で見たことがある気がする、近未来ゲームとかでよくあった、よくわからない大型の機械よね? あれでこの魔法陣を起動したりするのかしら?
とりあえずよくわからないけれど、何だか凄そうなのはわかったわ。
「床の絵から、はみ出ないように入ってね」
はみ出たらどうなるのか、ちょっと怖かったので真ん中に立つ。
まぁ心配しなくても、私達と馬車1台が余裕で入れる大きさなのだけれど。
「入ったわね、じゃあ行くわよー」
皆が入るとノア様が手に持っていた小さなボタンのような物を押した。
すると、足元の絵(魔法陣?)がピカッと光り、目を開けているのが辛いぐらいになったので思わず目を閉じてしまう。
「はい、到着〜」
ノア様の声で目を開けると、そこは先程とあまり変わらない場所だった。
「え? もう着いたのですか?」
「ええ、床の絵が緑になっているでしょ? ここはマルティネス王国の転移の間よ」
言われて足元を見ると、先程青かった絵(魔法陣?)が緑になっていた。
「話には聞いてましたが、本当にあっという間でしたね」
と、カイル様。
本当にあっという間だったわ。
まだ、帰ってきた実感が無いのだけれど……とりあえずここから出たら良いのかしら?
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