第33話 自覚

 そして、そのまま昨晩のようなことをされるのかと思いきや、もう一度私をギュッと抱きしめてから、バスタオルを拾って渡してくれた。


「私もシャワーを浴びてきます。このままだと我慢が出来そうにない……」


「えっ? あっはいっ! ……えっと、ええと、あっ! カイル様! 私もカイル様が大好きです!」


 絶賛混乱中の私は、さっき告白されてから返事をしてなかったことを思い出したので、とりあえず返事をしてから、バスタオルを巻いて、ドアから飛び出た。


「あら? やらなかったの?? せっかくチャンスだったのに」


 ノア様が、ソファーで寛ぎながらそう仰った。


「ノ、ノノノア様! 何をするんですか?!」


「ソフィアは恥ずかしがり屋さんだから、カイルと顔を合わせてもモジモジと、下手したら素っ気なくしそうだったから、ちゃんと意識のある時に仲良くイチャイチャしたら慣れるかな? と思ったのよ? はい、着替えてらっしゃい」


 たっ確かに、そうなりそうではあったけれど……とりあえず着替えを渡されたので寝室へ移動して着替える。


 着替えてるうちに冷静になり、先程のカイル様を思い出す。

 ……うわぁ、ドキドキした……カイル様あんな表情するんだ……。

 いつもキリッとしてて無表情に近いのに、とっても優しくて甘い表情……。


 初めは好みの顔じゃないとか言ってたけど、そんなの関係ないわ! もう、全部好き! カイル様がすごく好き……すごくすごくすんごーーーく好きだわ!


 レオ様やエドガー王子は、ノア様のお陰で勘違いだと分かったし、例えエドガー王子がゴリマッチョになってもカイル様への想いは変わらないわ!

 いや、しかし、エドガー王子のゴリマッチョか……ちょっと興味はあるけれど……。

 いや、ダメダメ! カイル様のことがこんなに好きって分かったのだから、レオ様とエドガー王子には諦めてもらいましょう! って、何だか上から目線ね。


「ソフィアー? 1人で着替えられたかしら? カイルもあがってきたらそろそろ朝食よー」


 あっしまった、着替えながら考えすぎて時間が……。


「はい! すぐ行きます!」


 そしてカイル様がシャワーを浴び終えて、上半身裸で出てきた……。

 きゃぁぁ! 大胸筋! 腹筋! 素敵な筋肉が私を襲うわっ!!


「ちょっとソフィア……デレデレしすぎよ」


 はっ! いけない、思わずそんな表情になってたかしら? と顔に手を当てる。


「?? ソフィア嬢がデレデレ??」


 カイル様は気づいてなさそうだわ良かった。


「もう、まぁいいわ、とりあえず上の服を着なさい、ソフィアが面倒くさいわ」


 面倒くさいなんてひどいわ! 昨日まで散々筋肉を見せびらかして、散々悪戯をしてきたくせに!


 ぷぅーと膨れてノア様を見る。


「ふふっ変な顔ね。今後の話もしたいから早くしなさい」


 そして3人で朝食。

 カイル様は護衛として来たのに、ベッドを使った上にシャワーまで使わせてもらい、これ以上は……と辞退したけれど、ノア様が命令したので仕方なく一緒に食べることに。


「さっきカイルは、護衛として来たと言っていたけど、エドガー王子からはソフィアの話し相手兼護衛と聞いているから、どちらかというと護衛がついでみたいなものだし、普通に客人として扱うからそのつもりでね。客人用の部屋も用意してあるから、そこへソフィアを呼び出すなりイチャイチャするなり、好きに使って大丈夫よ!」


「イチャイチャ……」


 カイル様が呟いた。


「もちろん寝室は防音よ! やりたい放題ね!」


「なっ何言ってるんですか!!!」


 ノア様のとんでも発言に思わず突っ込む。


「防音……」


 カイル様が呟いた。


「カ……カイル様??」


「あっいや、何でもない」


「まぁそういうことだから、まだ2ヶ月半もあるんだし、好きなように過ごしなさい。夕食は週3で一緒に食べるのは変わらないわよ! これは兄への罰なんだから」


「わかりました」


「そうね、早速今から2人で庭園デートでもしてきなさい。私はこの14日間、部屋ではできなかった仕事をしてくるわ」


 あぁやっぱり、私がこちらへ来てから、わざわざ一緒に居てくれてたのね。書類の確認とかはしていたけれどやっぱり他にも仕事があるわよね。


「ノア様……ありがとうございます」


「いいのよ! 何度も言うけれど、ソフィアがここに居るのは私のせいだしね。思う存分イチャイチャしてきなさい!」


「もう! イチャイチャはしませんってば!!」


「しないのか………」


 えっ? イチャイチャするの?? 思わずカイル様を見る。

 カイル様はハッとした表情で顔に手を当て、困った表情になった。


「カイル様??」


「いや、思ったより重症だ……」


「???」


「あはははっ!! あの無愛想なカイルがっ! こんなっっ! あーだめだわ! 笑い転げそうっ!! いいものが見れたわ! じゃあまた後でね!」


 ノア様が大笑いしながら部屋を出ていった。


「ソフィア嬢、ノア殿下のお言葉に甘えて庭園へ行きましょうか」


 さっき一瞬呼び捨てだったのにまた嬢がついてるわ。


「はい。あっあの……カイル様」


「はい、何ですか?」


「あの、ソフィアと、呼び捨てで呼んでほしいのですが……駄目ですか?」


 そう言うとカイル様が一緒固まった。どうしたのかしら?


「わかりました、ソフィア」


 ううっ! 胸がぁぁ! 胸がくるしいっ!! カイル様の声が素敵すぎて胸キュンだわ! 名前を呼ばれただけでこんなにドキドキしてしまうなんて!!


「カイル様……」


 ついついカイル様を見つめてしまう……するとカイル様が私を抱き寄せ耳元で囁く。


「そんな目で見つめられると、昨日の続きがしたくなってしまいます。今日は庭園でデートですよね?」


 きゃー! 耳元で囁かれたら、余計にドキドキしちゃうわ! 本当いい声♡

 そして昨日の続きって? ………ん? えっ? 続き? まだ続きがあるの?

 あっ! そうか!! セックスって、最終的に私の中にカイル様を……げふんげふん。


 駄目だわ、考えただけでも恥ずかしい! とりあえず私にはまだ早いわ!! まずは健全なデートからよね!!


「は、はい! 庭園へ行きましょう!」


 それにしても、カイル様がこんなに甘々になるとは思わなかったわ。

 えっ何? 俺様じゃないって? そんなのどーでもいいのよ! 今はもう、カイル様が好きなの!

 えっ? もしゴリマッチョじゃなかったらって? それは……わからないわ、だってきっかけが理想の筋肉だったんだもの。

 カイル様が好きでカイル様の筋肉も好き! それでいいのよ!!


 とりあえず、さっきからカイル様からの好き好きオーラを感じて、素直に嬉しいわ! まさかこんな日が来るなんて……神様ありがとう!

 てか、神様が居るのかは知らんけど。


 この場合は、きっかけを作ってくれたノア様ありがとうかしら??

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