暗闇の中でイケメンな納豆が一筋の粘りを見せてくれた(仮)
紺藤 香純
第1話
真っ暗な部屋で私を待っていたのは、イケメンな納豆だった。
見た目は高校生くらい。10歳も下になるから、私のストライクゾーンではない。
茶髪、小顔、小柄。壁にもたれかかる様は、アイドルみたいに絵になる。
なぜイケメンな納豆なのかというと、本人が申告したから。
「僕、納豆です。納豆の仲間から聞きました。
ついでに、イケボ。
真っ暗な部屋にイケメンな納豆がいることが、なぜわかったのかというと、部屋の電気を点けずにスマートフォンを見ていたから。
小説の新人賞の選考結果が発表され、SNSでは選考通過の報告とお祝いで盛り上がっていた。
ふと顔を上げたとき、スマホ画面の発光で、彼が居ることに気づいたのだ。納豆だけに(わかる人にだけ、わかればいい)。
「ご用件は?」
私が訊ねると、納豆は床にしゃがみ込み、私と目線を合わせて困ったように笑った。くそう、可愛い顔しやがって。
すすす、と膝を詰めてくるイケメン納豆。
「恩返しさせて下さい。畑野さんを救いたいんです」
鶴の恩返しならぬ、納豆の恩返し。
だが、しかし。
イケメン納豆は、色々と誤解している。
私は納豆を大切にする人ではないし、恩返しされる覚えはない。それに、救ってもらうようなこともない。
夜遅いので、とりあえず泊まってもらうことにした。
座布団を枕にして、夏掛けを重ねて、イケメン納豆は横になる。やがて、綺麗な寝息が聞こえてきた。
私ももう就寝するだけなので、布団に横になってスマートフォンを見る。
新人賞の選考通過作品の中に、私が応募した作品は無かった。仲良くさせてもらっているユーザーは軒並み通過しており、時間が経った今でもSNSは「おめでとう」が飛び交うお祭り騒ぎだ。
おめでとう、って、たった5文字なのに。
私には、その5文字が言えない。
スマートフォンを伏せ、目を閉じる。が、ふと思い出したことがあり、すぐに目を見開いてしまった。
イケメン納豆は、いつから私の部屋にいたのだろう。
電気を点けずに、スマートフォンの動画を見ながらエクササイズをやっていたところも見られていたのでは。
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