暁山瑞希の秘密

@karua820

第1話

「類。話があるんだけど」

強く風が吹き付けていた。時刻は夕方のチャイムが鳴ったから17:00になったばかりだった。

「なんだい?」

髪が風でなびいている。風が強くて言葉がかき消されそうだから少し大きめにして言った。

「実はボク…男の子なんだ」

「ふふっ。今更そんな事言うのかい。僕は前々から気づいていたけどね」

と笑いながら返してきた。

「え?じゃあ、クラスのみんなにバラしたのは…?」

「僕じゃないよ。きっとそれは…」

「それは?」

「あの子じゃないかな?」

類がグラウンドを指す。そこに居たのは初めてこの学校で出来た親友だった。


「はぁ、今日もこの格好…か」

中3になったボクはこの制服にうんざりしていた。なんで男の子の服を着なきゃいけないの。一時期それに対して深く考えすぎて泣きじゃくった日があった。自分が嫌でリスカもした。今だってその傷は深く残っている。見ると吐き気がする。嫌な記憶が思い出される。家から学校は歩くと遠いのでバスでいつも登校していた。途中のバス停で必ず乗ってくる同じ学校の子がいる。今日もその子は乗ってくる。あの時の類との会話以来一番会いたくなかった。そして、今後も会いたくない。

「瑞希おはよう」

「おはよ」

これで会話は終わりにしたかった。この子は続けていった。

「この曲すごいよ。今女子中高生に人気なの」

「へぇ〜…」

その曲を聴いてみる。その瞬間ボクの体に稲妻が走った。なんだ、この曲。まるでボクを表しているみたいな。こんな曲今まで聴いたことなかった。あのOWNに並ぶ曲があるなんて。それ以降この曲はボクのお気に入りになり、毎日欠かさずに聴き続けた。その日の夜。ボクが中学校には入りたての頃の夢を見た。


中1の頃ボクは女の子として学校に入った。だけど、なぜか親は男の子の制服を買ってきた。嫌でも3年間着続けないといけないと思うともう学校に行きたくなくなった。中2の後半までクラスのみんなはボクのことを女の子だと思い生活していた。だけと、ボクの親友だったあの子がボクの体をベタベタ触ってきた。その時その子はボクの股間を触った。女の子が慣れない感触にその子は驚き叫んだ。幸いにもこのクラスにはボクらしかいなかったので大事にはならなかった。その子にはその事だけは絶対秘密にしてと言った。その子はわかったとだけ言い僕より先に帰った。ボクはその後学校で泣いた。枯れるまで声を上げて泣いて泣いて泣きまくった。次第に疲れて寝てしまった。夕日がまるで母親のように温かく包み込んでくれた。先生に起こされて気づいたら20時だった。暗い夜道を1人で歩いて帰るほど怖いものはなかったと今まで思っていたが、あの時は違った。あの時一番怖かったのはあの事がクラス、同学年にバレることだった。先生は知っているから何とかなるが同級生にはどうにもならない。もしこれでいじめになったら…そう考えると怖くなって目に涙が浮かんだ。警戒しながら帰ると後ろから肩をポンと叩かれた。怖くなって声は出なかった。代わりに涙が出ていた。振り返ると父親だった。父親は泣いているボクの事を抱いてくれた。遅くに帰ってる事を聞いてこなかった。多分親も察してるんだと思う。父親はボクを近くのファミレスまで連れて行ってくれた。

「ごめんなさい」

「瑞希。謝ることはない。私が悪かったんだ」

「うんん。違う。ボクが悪いの」

「瑞希」

父親は少し強めに言った。さっきの涙が溢れそうになったが堪えた。

「瑞希はこの先どうしたいんだ。ほら、もうすぐ高校受験だろ。どこに行きたいとかあるのか」

「宮女」

「本当に言ってるのか…」

「だって…ボクは女の子なんだよ。 何。もしかて反対する気?高校すら自由に行かせてくれないの?」

「いや、違うーー」

「違くない!ボクは。ボクは…」

抑えようとした涙が溢れた。ポロポロと出てくる。止まらない。

「瑞希…」

「もういい。ボク、先帰るから。ご飯ありがとう。ごちそうさま」

ボクはカバンから千円だけ出して、財布と携帯だけ持ち帰ってそれ以外は全て置いたまま走って家に向かった。ファミレスの方を向くと父親は俯いて頭を抱えていた。ボクどうしちゃったんだろう。家に帰ったら母親がいなかった。お風呂にも入らずに部屋にこもって泣いた。枕がぐしゃぐしゃになった。気にしないで泣き続けた。30分後ぐらいに父親が帰ってきた。父親はボクの部屋の前まで来て瑞希と呼んできた。ボクは無視した。3回ほど呼んできたが、無視し続けた。父親は諦めてリビングに向かった。扉を開けるとカバンが壁に寄りかかっていた。カバンをそそくさと取り。中身を出した。筆箱を探す。筆箱を出した時、ひらりと何か出てきた。紙ナプキンに何か文字が書いてあった。

『瑞希。さっきはすまなかった。高校はどこだっていい。だけと、今後の事を決めるんだからよく選んだほうがいい。だから、ちゃんと選んで最後には父と母の前でどこにするか伝えて欲しい。父より』

何今更綺麗事ほざいてんだ。怒りがこみ上げた。筆箱から護身用カッターを取り出す。刃を全部出して右手で持ち後ろに隠した。父親にゆっくりと近づく。父親は瑞希と言ってきたがボクの殺気に気付いて真剣な表情になった。

「おい。瑞希どうしたんだ」

そんなこと言うな。とうとう抑えきれなくなって右手を父親の目の前に突き出した。父親は慌てて机の端まで逃げた。

「逃げんなよ!」

ボクからは想像がつかないぐらいドスの利いた声が出た。父親も流石に大変だと気付き近寄った。

「ねぇ。もう謝ったって意味ないよ。大人しく切られな。どこがいい。首、腕、足?どこでもいい?なら全部切ってやるよ!」

自分でも制御が効かないぐらいおかしくなった。狂気に満ちた笑い声が部屋を包む。父親は珍しく泣いていた。だけどボクには関係なかった。

「なんで泣いてんの?弱虫。ビビリがよ!泣いたって変わりはしないよ。さぁ、早く決めて。殺すか、殺されるかだよ!!さぁ!早く!!」

「ふざけんな!!」

父親はボクよりドスの利いた声で叫んだ。やっと正気に戻った。全身に入っていた力が抜ける。膝から崩れ落ちた。手に持っていたカッターも手から落ちた。

「瑞希!お前がやろうとしてたこと分かるか!人を殺そうとしたんだぞ。切ったらお前はもうまともに生きていけなくなってたんだぞ。高校云々よりよっぽど重大だ」

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい…」

その場に蹲って泣いた。こんな自分が情けなかった。学校のよりも更に声を上げた。父親はボクの近くには寄らなかった。代わりにボクの横を通り過ぎた。何がしたかったのか見てないので分からなかった。父親はボクの首に何か刺した。一瞬すぎて何をしたのか分からなかった。抜かれた瞬間フラッとしてその場で倒れた。多分鎮静剤か睡眠薬、麻酔のどれかを注射したんだと思う。そんなことを考えたら意識がなくなってた。気付いて起きたらベットの上にいた。制服のままだった。スマホの画面を見ると4時だった。リビングには明かりがついていた。ドアに耳を近づける。父親は母親と話しているようだった。

「瑞希がカッターで襲おうとしてきた。だから仕方なく麻酔を打ったんだ」

「この麻酔の濃度見てよ。危うく死んでたもしれないのよ。なんで狩り用なのよ。人間用のがあるでしょう」

母親のその言葉にハッとした。狩り用?人間用?何それ。何でそんなもの家にあるの?ボクのせい?それとも前からあったの?こんな家に住みたくない。やだ。やだやだやだ!頭を掻きむしった。ぐしゃぐしゃになった髪はさっきの怒りを表しているみたいだった。少し落ち着きまた会話を聞くことにした。

「人間用のなんて買ってない。あんな奴に人間用なんか要らないよ。見てないだろうからわからないけど瑞希は獣だ」

獣?はは、何言ってんの。そんなはずないでしょ。何でボクはこんな複雑な家で暮らさないといけないの。また涙が出てきた。その場で泣き崩れ。そのまま寝落ちした。次の日は学校を休みにした。親は ボクが昨日の話を聴いたことを知らないと思うので、いつも通りに接した。朝、母親に会うと昨日のことを注意された。次したら許さないと言われた。頭の中ではきっと致死量の麻酔を打たれると思った。よっぽどそっちの方が殺人鬼だよ。親が両方出かけるのを見計らい。ボクは別のカッターを出して手首を切った。痛くはなかった。どちらかと言えば、くすぐったかった。血がどんどん溢れていく。見てるだけで楽しい。はは、何考えてんだろう。このまま手首をお風呂に入れた。よくある自殺方法だ。首吊りでじっくり死ぬのもいいけどこっちの方が多分早いと思ったからだ。ネットに書いてある通り血がどんどん出てくる。確かにこれは死ぬわ。はは。不思議と笑えてきた。こんなにも死が身近なんて。やった。これでボクの人生が終わる。新しく生まれ変わったらこんな家よりももっといい家がいい。そして、正真正銘の女の子だ、と言い張れるようになりたい。どんどん意識が遠くなっていく。ああ、どんどん暗くなっていく。やっと死ねる…そう思ってボクは浴槽で気を失った。

…んん。騒がしいな。ここが天国なのか?そう思って目を開けた。するとそこは病室だった。隣には父親がいた。

「瑞希。何でそんなことした」

「ボク。こんな家嫌。何、狩り用の麻酔とか人間用の麻酔って。怖いよ。ボクこんな家住みたくない。だから、死のうと思ったの。父親を殺すよりボクが死んだほうがいいでしょ」

「瑞希。聞いてくれ。あれはーー」

「あれは?何?どうしたの」

「ごめん。何でもない。忘れてくれ」

「やだ。正直に答えて。そんな麻酔、何であるの?答えてくれない限りこういうこと続けるよ」

「わかった。正直に言うよ。つまり、あれはこういう時に使うんだ」

そう言ってポケットから注射器を出してきた。そこには満パンに入った謎の液体が入っていた。不意打ちすぎて怖くなって3秒程動けなくなった。慌ててナースコールを押して病室から出ようとした。だけど血液不足でふらついて立てなくなった。

「はは、バカだな。そんなことするからだよ。この量じゃ多分お前は死ぬ。多分じゃないな。確実だな。死ぬ前になにか言い残したことは?母にも伝えておくから安心しな」

こんなドラマでしか聞かない言葉、現実で聞くとは思わなかった。勇気を振り絞った。まだフラフラしている。頭を右手で抑え生まれたての子鹿みたいに立ち上がった。父親はほぉみたいな顔をして見下してきた。ああ、その顔最高。私は下着に隠した。カッターを取り出した。護身用は3つにしている。こういう風にいつ何があるか分からないからだ。

「お前は切っても俺が死ぬまで時間がかかるが、俺は刺して注射すれば勝ちだ。すぐ効いてすぐ死ぬさ。お前は死のうとしたんだろう?ちょうどいいじゃないか」

悔しかった。まるで、早く死ねと言ってるみたいだった。こんな父親大っ嫌いだ。イラつく。私はカッターの刃を取り出して4等分した。4つに分けて投げるつもりだ。父親は何してんだバカみたいな顔をしていたから、顔を目掛けて投げた。運良く目に刺さって父親はくずれた。その隙を見計らい、注射器を奪ってみぞおちを何回も蹴った。父親は蹲って何もできなかった。この時の快楽は忘れられなかった。何度も何度も蹴り嗚咽する父親を見て楽しくなった。もっと出せ。もっと出せ。もっとだもっと!動かなくなった父親をそのまま放って病室から出て行った。ふらついてうまく走れないけど走った。居場所はないと思った。あの家はダメだ。帰っちゃいけない。そう思って走り続けた。スマホを見ると20時だった。半日経っていた。ナースさん、父親、母親ごめん。けど仕方ないんだ。死ぬか生きるかの瀬戸際で生き続けるのはもう嫌なんだ。中学卒業までボクはおじいちゃんの家で暮らすことにするよ。走り続けて3時間。あのクソみたいな家から30キロほど離れた所にあるおじいちゃんの家に来た。おじいちゃんには父親、母親が来てもボクのことについては何も言わないでと言った。ボクはこの家のおじいちゃん、父親、母親が知らない場所を知っている。屋根裏?違う。地下室?違う。更に5キロ離れた所にある「暁山」と書かれた表札のある小屋に隠れた。ここはボクが5歳の頃見つけたボク以外知らない最高の隠れ家だ。表札は取り外して適当に「東雲」と裏側に書いといた。ちょうど授業で習った漢字だった。中には食料もあるし、電気だってある。暮らすのには困らなかった。あの時から3日経った頃だった気がする。おじいちゃんの家に向かおうとした時だった。警察にあった。父親たちは捜索願を出したそうだ。警察は無理矢理ボクを近くの交番まで連れてきた。そこでボクは会いたくなかった父親にあった。父親は心配したんだぞと演技をする。ボクは逃げようとした。

「離して!お願い!お願いだから!」警察官に腕を掴まれ逃げようともがく。どんなに離せ離せと言っても離してくれなかった。警察は事情を知らないからだ。こんな世界やだ。

「離してよ!あああああっ!!!」

誰も味方してくれない…その後も色々なことをした。警察はやっと話を聞いてくれた。ボクは警察に事情を話した。そのあとはよく覚えてないけど父親と母親は刑務所に行くことなった。ボクは新しい家で暮らすことになった。実の親ではない家で。そこはちょっと寂しいけどあんなのよりましだ。おじいちゃんは何もしてないから、家に行ってもいいと言われた。唯一血の繋がってる人。新しい親とおじいちゃんに体のこととかについて全部説明した。新しい親はすぐ認めてくれて、おじいちゃんも認めてくれた。幸せな毎日が続くんだ。そう思って寝た。


ここで目が覚めた。時間は5時だった。あんな最悪なことが夢に出てくるなんて…忘れたくても忘れられないことだ。今でもあの時の麻酔は持っている。忘れるわけにはいかないんだ。あんなこと忘れてしまった時は多分あの親に殺される時だ。そう心に焼き付けた。久しぶりに学校に顔を出すとざわついた。キョトンとした顔をしてみる。みんな何か各々言っている。耳に入った言葉は

「あの子、生えてるらしいね」

とか言う言葉だった。だけど、その日は無視した。だけど、何度も頭の中をその言葉がぐるぐると回る。耐えきれなくなって家に帰って泣いた。バラしたのはあの子なのかな…あんなに仲良かったのに…次の日はいかなかった。

1週間後、屋上に行くと類が居た。だいたいボク達が屋上に居る時は、何か悩んでる時だとお互い分かっていた。だから、お互い話しかけるまで話さない。でも、伝えるべきだ。類に近づいて話しかけた。

「類。話があるんだけど」

強く風が吹き付けていた。時刻は夕方のチャイムが鳴ったから17:00になったばかりだった。

「何だい?」

髪が風でなびいている。風が強くて言葉がかき消されそうだから少し大きめにして言った。

「実はボク…男の子なんだ」

「ふふっ。今更そんな事言うのかい。僕は前々から気づいていたけどね」

と笑いながら返してきた。

「え?じゃあ、クラスのみんなにバラしたのは…?」

「僕じゃないよ。きっとそれは…」

「それは?」

「あの子じゃないかな?」

類がグラウンドを指す。そこにはあの子がいた。やっぱりあの子がバラしたんだ。

あの子はボクが学校を休んでる間に色んな人に言ったらしく大事になった。その子は親と先生、そして警察にこっぴどく怒られたそうだ。少し安心したが、精神的に不安定な時期がずっと続きわまともに勉強が出来ないまま受験になった。宮女は合格でなかったが新しい親は神山があると言ってくれてそこを目指すことにした。なんとか冬休み勉強して合格できた。その時も支えてくれたのはあの曲。OWNを超えた、曲。あの曲を作った人に会いたいと思うようになった。そうだ、本人に届くかわからないけど歌ってネットに上げればいいんだ。そう思い、新しい親がいない時間にスマホで録音した。2週間後、なんと作者からメッセージが来た。

『私のグループに入ってくれない?』

喜んで私は

「お願いします!」

と送った。これが私の人生を大きく変えたキッカケとなった。


そのグループは深夜に動くため、入った高校は1ヶ月程度ちゃんと行ったがその後はまともに通わなくなった。たまに行くとクラスのみんなに珍しいねと言われた。制服はちゃんと女子用。あんな親とは全然違う。ちゃんと意見を聞いてくれる。何度感謝したことか。別にあのグループに居ても新しい親は何も言わない。ちょっと心配するだけで、答えると新しい親も肩を落とすので、ボクも心が楽になった。そのグループはチャットをするので声しか分からない。だけど、えななんって言う子と話すのが楽しかった。からかうのが楽しくて仕方なかった。雪と言う子はOWNのボーカルだと知り驚いた。Kと言う子はあの時の曲の作者だった。まさかこんなグループには入れるとは思ってなかった。ボクはAmiaという名前で活動した。最初は上手くいった。だけど、少しずつ乱れていった。乱れが大きくなって、1回だいぶ荒れたことがあった。普段チャットで話さない雪が好き放題言ってきた。だけど、雪の放つ言葉はどれも正確で、今も心にヒビが入るほど深く残っている。その日は収集がつかなくなって、半強制的に終わらせた。大荒れの日から約3カ月経ったある日、オフ会をすることになった。初めて顔をあわせるのだ。ボクは少し緊張した。ボクだけでなくみんなだろう。


会場はボクが決めた。宮益坂駅近くのファミレスにした。集まって自己紹介などをした。

【Kは宵崎奏、雪は朝比奈まふゆ、えななんは東雲絵名、Amiaはボクーー暁山瑞希】

ん?東雲?あの頃を思い出した。あの時小屋に書いた名前と同じだ。そんな偶然あるものなのか。ボクは男の子だとは言わなかった。チャットでも、実際に会ってみても、みんなそれぞれ大きな何かがあると感じたからだ。それ以降ボクはボーカルとして活躍した。奏は作曲まふゆは作詞、絵名は絵を担当している。みんな歌がうまく、ボクは足手まといじゃないかと思った時があった。けど、奏が瑞希は声の切り替えが上手だからしっとりした曲とパワフルな曲両方ともできてすごいよと褒められた。それから頑張って練習して、なんとか色んな曲がみんなと同じように歌えるようになった。

みんな息抜きにセカイに来ることがある。ボクも息抜きに学校終わりにセカイに来ることが多い。今日もいつも通りセカイに行った。ミク達に会うためもあるしね。今回はみんなで作詞をしようという事で忙しかった。みんな色んな思いがあってここに集まったんだから、自分の思いを歌にしようとしたらしい。奏も来ていたが寝落ちしていた。珍しい。眠くてもいつも寝てない奏が寝てるなんて。ボクはそばに行って隣に座った。奏を肩に寄りかからせた。ボクも少し寝ることにした。奏が寝言を言っていた。

「ごめんなさい。でも、やめない。誰かを救う曲が出来るまでやめないから」

ボクは少し笑って

「大丈夫。少なくともボクは奏の曲に救われたよ」

と言って奏と一緒に寝た。奏は

「良かった」

と起きてるかのように答えた。

「まさか。ね」

そう呟いて寝に入った。

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