第12話 グラディス先生の助手になる事が決まりました
翌日、今日も学院の授業が終わると、先生の研究室へと向かった。もちろんクラウド様も一緒だ。
「先生、来ましたよって、どうしてまた散らかっているのですか?」
昨日あれほど奇麗にした部屋が、また散らかっていた。
「悪い悪い」
そう言って奥の部屋から出て来たグラディス先生。まずは散らかった部屋を片付けるところからスタートだ。幸い昨日片づけた事もあり、10分程度で片付いた。
「それじゃあ、早速マッサージを見せてもらえるかい?ちょうどクラウド殿下がいるから、彼に実験台になってもらおう。クラウド殿下、こちらに横になって」
先生の指示に従い、横になるクラウド様。
「それじゃあ、ミレニア嬢。クラウド殿下にマッサージをしてくれるかい?」
先生の指示で、まずは肩を揉みほぐしていく。
「あぁぁ、ミレニア嬢、もう少し右を…」
物凄く幸せそうな顔をするクラウド様。私のマッサージで幸せになってくれるなんて、嬉しいわ。
「ミレニア嬢、私にもやらせてもらえるかい?」
そう言うと、おもむろにクラウド殿下の肩をグリグリと揉みだした。
「イタタタタ」
どうやらかなり痛かったようで、クラウド様が飛び起きた。ちょっと先生、私の大切なクラウド様になんて事をするのよ!
「あれ?おかしいな、ミレニア嬢と同じ様にしたのに」
そう言って首を傾げる先生。これだから素人は嫌なのよね。
「先生、ただグリグリと揉めばいい訳ではございませんわ。マッサージを力加減が大切です。それに、ただやみくもに押せばいいという訳ではありません。そもそも、肩こりの原因は血行が滞ってしまう事によって起きるのです。そのため、血流の流れを促す事も大切なのです。他にも私たちの体には、ツボと呼ばれるものが存在します。例えば首にある「天柱(てんちゅう)」と呼ばれるツボは、肩こりや目の疲れを和らげてくれます。ツボはそれぞれ押し方があるので、むやみやたらに押さないで下さいね」
先生に分かる様に、1つ1つ丁寧に先生に説明していく。さらに、長時間行っても疲れにくいマッサージの方法についても説明した。もちろんクラウド様の体を使い、実践しながらの説明も行う。
「なるほど、ただ揉んでいる訳ではないのだな。体の仕組みをしっかり理解したうえで、マッサージを行っているのか!それに、人の体にツボと呼ばれるようなものがあるなんて、とても興味深いな!それにしても、ミレニア嬢は随分と物知りなんだな!どこでそんな知識を身につけたんだ?」
「えっと…それは…」
前世での知識です!なんてさすがに言えないわよね。
「まあいい。クラウド殿下、実験台ありがとう。もういいよ!」
先生の言葉に反応しないクラウド様。一体どうしたのかしら?心配になって、クラウド様の名前を呼びながら体を強く揺する。
すると飛び起きたクラウド様。あまりの俊敏な動きに、私も先生も固まった。
「すまない、あまりにも気持ちよくて眠っていた様だ」
そう言って、恥ずかしそうに頬を赤らめるクラウド様。なんて可愛らしいのかしら!
「今回研究に参加してくれたうえ、部屋まで掃除してくれて感謝するよ。それで、一つ提案があるのだが、君たち私の助手にならないかい?」
「助手ですか…」
きっと私とクラウド様をこき使う作戦だろう。その手は食わないわ!そう思っていたのだが…
「助手と言っても、部屋を定期的に片づけたり、材料を集めて来てくれたりすればいいだけだから大したことはないよ。もちろん、ただでとは言わないよ!ちょっとこっちにおいで!」
グラディス先生に連れられて、奥の部屋に向かった。そこには、先生が発明したと思われる数々の発明品が並んでいた。
「これはね、毒に反応するスプーンなんだ。このスプーンを毒に付けると色が変わる仕組みになっているんだよ。もちろん、変わる色によって毒の種類が分かる様になっている。こっちは映像まで奇麗に写せる監視カメラだ。こっちは音声を録音できる、小型の録音機。他にも色々あるぞ」
どれも高性能な物ばかりが並んでいる!これは凄いわ!
「これなんか凄いぞ。通信機器なのだが、相手の顔を見ながら話す事が出来るんだ。さらに、この通信機器は位置情報を特定する事も出来る。便利だろう!」
日本でいうGPS搭載の携帯電話みたいなものね!
「凄いわ、先生!私先生を見直しました!助手の話、引き受けますわ。それで、早速この毒が分かるスプーンを頂きたいのですが」
「ああ、構わないよ!」
先生からスプーンを受け取ると、そのままクラウド様に渡した。
「クラウド様、父がクラウド様を守る様動いてはいますが、万が一の事もあるかもしれません。どうか、このスプーンをお持ちください!」
クラウド様は何度も毒殺されかかっているのだ。いくらお父様が陰で動いてくれても、さすがに守り切れない事もあるだろう。
「ありがとう、ミレニア嬢。でも、僕は大丈夫だよ。毒の味はある程度分かっているからね」
「クラウド殿下、毒の中には無味無臭のものもあるんだよ。せっかくミレニア嬢が君の為にって言っているんだから、素直に受け取ったらどうだい?そうだ、ミレニア嬢も念のため持っているといい。何かの役に立つかもしれないからね」
そう言って、私にもスプーンを渡してくれたグラディス先生。せっかくなので、有難く受け取っておいた。
「それじゃあ、僕も有難く受け取るよ。ありがとう、ミレニア嬢、グラディス先生。もちろん、僕もグラディス先生の助手をするつもりだから、これからもよろしくね」
「それじゃあ、放課後時間のある時に来てくれたらいいよ!どうしても手伝ってほしい時は、私の方から呼び出す事もあるかもしれないが、その時はよろしく頼む。念のため、この最新の通信機を2人には渡しておこう。これで簡単に連絡が取れるからね」
そう言って通信機を渡してくれたグラディス先生。
「ちなみに使い方は簡単だ、話したい相手の番号を押せば繋がる。私が1番、クラウド殿下が2番、ミレニア嬢が3番だ。連絡が入ったら、この赤いボタンを押せば繋がるから。切る時は、もう一度赤いボタンを押せば大丈夫だ。制服のポケットに入る大きさになっているから、毎日持ち歩くんだぞ」
使い方は随分シンプルなのね。でも、分かりやすくていいわ。
「他にも使いたい発明品があれば言ってくれ。いつでも貸し出すからな!それじゃあ、気を付けて帰れよ」
先生と別れた後は、クラウド様と校門へと向かった。
「クラウド様、本当に先生の助手をしても良かったのですか?もしかして、私が助手をすると言ったから、仕方なくクラウド様もする事にしたなんて事はないですよね」
心優しいクラウド様の事だ。もしかしたら、私に気を使って助手をやると言い出したのかもしれない。
「それは絶対ないよ。僕も先生の発明品には物凄く興味があってね。出来れば、研究に加わりたいくらいだ。それに…ミレニア嬢と出来るだけ一緒にいたいし…」
「最後の方が聞き取れなかったのですが、もう一度おっしゃってもらってもよろしいですか?」
「いいや、何でもない!日が沈みかけているから、早く帰らないとね」
私の手を掴んで、速足で歩き始めたクラウド様。それにしても、最近クラウド様の言葉が小さすぎて、聞き取りにくい事がある。聞き返しても教えてくれないし。
一体何と言っているのかしら?物凄く気になるんだけれど…
~あとがき~
グラディス先生は、一応科学の先生です。
歳は26歳、金髪にグレーの瞳をした男性です(^^)
マイペースで少し変わっていますが、根は生徒想いの良い先生です。今後もちょこちょこ登場する予定です。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m
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