転生公爵令嬢は悲劇の運命しかない推しを守りたい!
@karamimi
第1話 もしかして私、転生しちゃったの?
ゆっくり目を覚ますと、物凄く豪華な天井が目に入った。ん?ここは?
「お嬢様、目を覚まされたのですね!すぐに旦那様と奥様をお呼びいたしますわ!」
この声は、私の専属メイド、ファリアの声。そうだ、私の名前はミレニア・マーケッヒ。マーケッヒ公爵家の令嬢として何不自由なく育ってきたんだわ。でも…この名前、どっかで聞き覚えがあるのだけれど…
そうだわ!ミレニア・マーケッヒと言えば、私が好きだった小説“君への思いは永遠に!どんな事があっても君を離さない”に出て来る、悪役令嬢の名前。そう言えば、私の婚約者マシュー・オヴ・パルメラーネはこの小説のヒーローの名前よ。
さらに、私が大っ嫌いな男爵令嬢、ソフィー・マルティーノはまさしくヒロインの名前だわ!という事は、私、いつの間にか“君へと思いは永遠に!どんな事があっても君を離さない”の悪役令嬢に転生してしまったって事?
ちょっと待って、とにかく落ち着きましょう!
その時だった!
「ミレニア!あぁ、私の可愛いミレニア!無事でよかった!」
お父様とお母様、さらにお兄様まで、物凄い勢いで入って来た。そして、次々と私を抱きしめていく。
「可哀そうに!あの男爵令嬢に階段から突き落とされたのですってね!許せないわ!とにかく、今すぐ男爵家に抗議を入れましょう!」
「抗議だけでは物足りない!家ごと潰してしまおう!」
「そもそも、王太子は何をやっていたんだ!可愛いミレニアを無視して、男爵令嬢を庇ったと聞く!ふざけるのも大概にしてもらいたいくらいだ!」
口々に文句を言うお父様とお母様、さらにお兄様も…
とにかく何とかこの状況を鎮めないと…
「待って!3人共!今回の件は私がソフィー様を突き落とそうとしたところを、誤って自分で階段から落ちたのよ!クレームを言われるのは家の方だわ!とにかく落ち着いて!私の許可なく、ぜっっったいに男爵家にクレームなんて入れないでね!約束よ」
とにかく、今はゆっくり頭の中を整理したい!ただ、両親やお兄様に暴走されても大変だ!そこはしっかり約束させておかないと!
「ミレニアがそう言うなら…分かったよ…でも、いつでも抗議をする準備は出来ているから、何かあったらすぐ言いなさい!わかったね!」
「ええ、分かったわ!ありがとう。とにかくもう少し休みたいの。お願い、1人にしてくれるかしら?」
「そうよね、今目覚めたばかりだものね。それじゃあ、また何かあったらいつでも呼ぶのよ」
どうやら納得してくれた様で、良かったわ!とにかく、今私が置かれている状況を整理しましょう。
まず、どうやら私は今回階段から落ちた衝撃で、前世の記憶が戻った様ね。そう、前世の私は日本という国でマッサージ師の仕事をしていた。そして、仕事帰りにトラックにひかれて命を落とした。
何か、よくある転生ものの小説の様な話ね…
まあその点は置いておこう。そして今世では、私が前世で大好きだった小説“君への思いは永遠に!どんな事があっても君を離さない”に出て来る悪役令嬢、ミレニア・マーケッヒに転生したと言う訳ね。
“君への思いは永遠に!どんな事があっても君を離さない”は、異世界ラブストーリーだ。ヒロインでもあるソフィーは美しく聡明な女性。ただ、養子という事で男爵家では冷遇されていた。それでもめげず、真っすぐに育ったソフィーは、14歳で貴族学院に入学する。
美しく心優しいソフィーに心を奪われたのが、ヒーローでもあるこの国の王太子、マシューだ。2人は次第に惹かれ合っていく。ただ、この2人の前に立ちはだかったのは、公爵令嬢のミレニア(今世の私)だ。
我が儘で自己中心的なミレニアは、これでもか!と言うくらいソフィーをイジメ抜く。そんな中、ソフィーが実は隣国でもある、ファーム王国の王女であることが判明。他国の王女をイジメた罪に問われたミレニアは断罪され、国外追放になる。
これが大まかなストーリーよね。国外追放か!前世の記憶を取り戻す前のミレニアにとっては、死刑判決に値する程重い刑だが、今の私には大したことはない。そもそも、私はマッサージ師として生きて来たのだ。
この腕1つで生きていく自信もある。それに、公爵家での堅苦しい生活よりも、平民の方が性になっているわ。という事は、断罪されても大したことはなさそうね。
って、ちょっと待って!前世で推しだったクラウド様は?
クラウド様とは、私の推しで第二王子でもある、クラウド・ロム・パルメラーネ様の事だ。彼は第二王子としてこの世に産まれたにも関わらず、母親が男爵令嬢という事で、特に王妃から冷遇されていた。
さらに、彼の髪の色がこの世界では珍しい黒色だったという事もあり、“呪われた人間”として、メイドたちからもイジメられていた。彼を産んですぐに母親が命を落としたのだが、それも彼の呪いだという事にされたらしい。
ずっと孤独の中で生きて来たクラウド様。そんなクラウド様に、ある女性が彼に優しく接して来たのだ。初めて人の優しさや温もりに触れたクラウド様は、彼女に夢中になる。
でも、この女性は反王政派の幹部で、クラウド様を利用して王太子を暗殺しようと企んでいたのだ。そして、まんまとこの女性に騙されたクラウド様は、王太子暗殺未遂容疑で捕まり、処刑されてしまう。
処刑される寸前
「僕はただ…誰かの温もりが欲しかっただけなのに…」
そう呟き、命を落とした。
思い出しただけでも涙が出る!
当時、あまりにもクラウド様が可哀そうすぎると、SNSでも随分と話題になった!
このままじゃいけないわ!私の国外追放はどうでもいいとして、クラウド様だけは助けないと!確か私の断罪&クラウド様が暗殺未遂で捕まるのは、ほぼ同時期だから、約1年後ね!それまでに、とにかくクラウド様を何とか守らないと!その為には、まずあの浮気野郎と婚約を解消する必要があるわよね。
そもそも、なぜ私はあんな王太子なんかの為に、あそこまでムキになっていたのかしら?前世の記憶が戻った今、あんな他の女にお熱を上げるような浮気男は、こっちから願い下げよ。
さっさと婚約を解消してしまおう。婚約を解消すれば、こっちのものよ!とにかく、反王政派の幹部の女がクラウド様に近づかない様に、全力で阻止しないと!
そうと決まれば全は急げよ。
「ファリア、お父様たちと話がしたいの!すぐに手配して」
外で控えていたフェリアに早速指示を出す。
「かしこまりました!」
急いで走って行くフェリア。そう言えば、あの子にも随分と今まで酷い態度を取って来たわね。そもそも私は、傲慢で我が儘な女が大嫌いだ!前世でもお金持ちを鼻にかけて、取り巻きを引き連れていた女がいたが、虫唾が走る程嫌いだった。
それなのに今までの私って、自分が大嫌いなタイプだったのよね。前世の記憶が戻った今、人として恥じない程度に生きていこう。まあ、無理して皆に気に入られようとするつもりはないけれどね。
~あとがき~
久しぶりに悪役令嬢ものを書いてみる事にしました。
よろしくお願いしますm(__)m
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