休み明け
一週間の休校を挟み、学校が再開された。
怪獣災害による建物や物品の損壊に比べ、人的被害はかなり少なく、アラト達の高校の生徒も、数名が軽傷を負うに留まった。
普段から怪獣対策をしっかりしていて、混乱の中でも一人一人が取るべき行動を取れていたからだと、集会で校長先生が話していた。
一方で、対怪獣自衛軍への世間の非難は激しかった。
戦闘機による麻酔は怪獣に全く効果が無く、ミサイルまで持ち出しておきながら、最後には結局アストラマンに助けられたと、大バッシングを受けている。
ニュースを見ないアラトがヒロやジュンキに聞いた話では、追撃された戦闘機に乗っていたパイロット達の遺族のもとをマスコミが訪ね、テレビもネットも連日大騒ぎしていたらしい。
既に倒されてしまった怪獣の代わりに、自衛軍に怒りをぶつけるような形になっているのだろう。
ちなみに、アラトはSNSで「こんな間抜けなことしてるから自衛軍はいざという時何もできない」と、エコアースがやり玉に挙げられているのを見かけた。
そういえば最近街中で見かけないが、江口さんは無事だろうか。
別にアラトが心配する義理も無いのだが。
一週間ぶりの学校は、とても賑やかだった。
教室を埋め尽くす話題はほとんど怪獣のこと。
そして、アストラマンのこと。
あの夜、アストラマンは怪獣を倒した後力尽きるように消えてしまったので、アストラマンは死んだのではないかという説が飛び交っているらしい。
「よう、元気かー?」
ヒロと顔を合わせるのも一週間ぶりだった。
あの日以来、ミーに妙に落ち着きが無くなっていたので、一週間ずっとアラトが一人でミーの世話をしている。
出張中の両親はニュースで怪獣のことを知ったらしく、あの夜、ジュンキを家に送った後家に帰って携帯を見たら、不在着信とメッセージが大量に溜まっていた。
心配していたらしく、早めに帰って来ると言っていたが、特に被害が無かったから大丈夫だと伝えておいた。
ミーの様子もおかしいので、両親が帰って来て変に刺激を与えるのもよくないだろうという考えもあった。あの人たちはちょっと強烈すぎるから。
「何だよ、その挨拶」
「いやー、ちょっと、何と言うか……」
ヒロにしては珍しい歯切れの悪い物言いに、アラトは首をかしげる。
横を向いていて目も合わせないし、なんとなく気まずそうだ。
休みの間に何かあったのだろうか。
「その、変なこと聞くけど。……あの後ジュンキと何かあった?」
「何かって……何が?」
「あー、オッケ分かった。何にも無さそうだな」
真顔で尋ねたアラトに、全てを悟ったような顔のヒロは何とも言えない反応をしながら自分の席へと戻っていった。
アラトはしばらく怪訝な顔をしていたが、散歩の時の会話を思い出し、机に突っ伏したところでヒロの言わんとしていたことを理解した。
胃の奥がむずむずとするような感覚に襲われ、顔を上げて本を取り出したところで、なんとなく手で顔を覆った。
「いやー、それは無い……」
その日は、少し駆け足気味での授業が行われた。
ホームルームで、目前に迫っていた冬休みが少し先延ばしになること、追いつかなかった単元は休み中の課題と三学期の授業で補うことが説明された。
怪獣が出現した地域から離れた場所に住んでいる生徒の一部は、こっちの方が被害が大きかったと嘆く。
それを聞いたアラトは、うるちの席の方へチラリと目線を向けた。
彼女の言葉の意味を痛感しながら。
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