【夏期セミナー】BL作品とポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)について *コメント、ご意見、お気軽にどうぞ!
葛西 秋
基調講演:BL作品とポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)について
基調講演:セミナーで行われる議論のたたき台となる講演。いくつかの問題提起が基調講演の中で行われる。基調講演に引き続き行われるパネルディスカッションや論点を絞った講演で、提起された問題を深く掘り下げていくことになる。
暑いですね。あと10度ぐらい気温が下がってもいいんじゃないかとL(リットル)単位でアイスコーヒーを消費しながら今回の話題を取り上げたいと思います。
東京五輪は引き続いてパラリンピック大会が始まります。
先日の閉会式では、震災復興という名目はどこに行ったという意見を含めた賛否両論があったものの、ダイバーシティを強く印象付けるための演出が多用されました。賛否両論はありましたが。
さて、昨年より続くCOVID-19の疫禍は否応なしに私たちの生活を変化させましたが、一方で、これまで遂行が滞りがちであった社会のダイバーシティ化を一気に加速させています。どこまで実現できるのかは未だ未知数ではありますが、ダイバーシティ化、すなわち多様性が認められる社会というのは、誰にとっても生きやすい社会のことであり、社会の在り方の一つの理想です。
当初、男女共同参画社会推進運動(https://www.gender.go.jp/about_danjo/society/index.html)からの派生であったダイバーシティ運動は、現在、性別や人種、国籍などの区別なく、自分の能力を発揮できる社会の実現を目指しています。
・・・・・・ぶっちゃけ、経産省のHP見るとダイバーシティ社会実現の目的が、働けるモノは全員外に出て働けよ?人口減ってんだからな?分かってんの?(https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/)という実態も見えてきます。
そんな思惑は外に置くとしても、多様性が認められる社会、というのは、お互いの価値を尊重し合える社会でもあります。意見の違いも、言葉の違いも、それらを無条件で肯定し合わなければなりません。
ということでは、ありません(゚ω゚)not, not
お互いの価値を尊重するということは、もちろん自分の価値も尊重すること。自分が意見を述べることは自由ですが、その自由は、相手の価値を尊重したうえで認められる自由です。
前置きが長くなってしまいましたが、BLジャンルというのは、このジャンルが「やおい」という言葉で呼ばれていた過日より今に至るまで、小説、漫画、アニメなど様々なメディアで展開されてきました。一方で、それぞれの場所で大なり小なり軋轢が絶えないジャンルでもあります。
それはどうしてもこのジャンルがセックス(性行為としての意味ではなく、生物学的な性という学術用語として用いています)に大きく関わり、またそれそのものを題材にしている作品が多いからです。触らぬ神に祟りなし、と隔離され、同好の仲間同士で閉鎖的なコミュニティを作りがちである、という傾向もそのBLというジャンルの性質によるものかと思います。
これまではそれで良かったかもしれません。けれど情報化が進んだ現在、完全に閉鎖的なコミュニティの形成は非常に難しいものがあります。
ここ、カクヨムにおいてもそれは例外ではありません。
むしろweb小説のプラットホームであるカクヨムは、常に外部に開いていてこそ、その真価が発揮されるタイプのメディアです。閉鎖的なコミュニティとは真逆であるということができます。
常に外部世界に開かれている、ということは、常に外部の世界の"常識"と比較されるということです。これはカクヨムで作品を発表している以上避けられないことですし、カクヨムで発表している以上、作者はそれを自ら望んでいると解釈されて当然です。
閉鎖的なコミュニティという防壁が無効で、外の社会に向き合う時、自分の作品は果たして社会からの評価に耐えうるのか?
本の表紙をめくらなければその中身に触れることができないリアルの書籍と違い、web小説を創作している作者は、フリーリンクする社会からの評価に常に晒される存在である、そのことは忘れてはならないことだと思います。
で、ここに、とある記事を紹介したいと思います。リンクは貼れないので興味のある方は検索して頂く手間がありますが、BLを書かれる作者の皆様には一読していただく価値があると、お勧めしたいと思います。というか、このノートの目的がこの記事を紹介することなのです。
『BLはゲイ差別表現をこう乗り越えた……当事者たちが考える「ポリコレの先」』七崎良輔、文春オンライン、2020年4月4日配信
例えば、「俺はホモなんかじゃない! お前がお前だから好きなんだ!」というセリフは、同性愛者に対する潜在的な差別が認められる表現とジャッジされるなど、かなり具体的な内容に踏み込んでいます。
五輪中に選手のメダルを噛んで「愛情表現だった」などと発言した某自治体の首長がおりましたが、時代遅れの価値観が誰かを傷つける、社会からの批判の対象になる、そんな危険が創作物にも有ります。自分のなかに在る無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)にも、向き合うべきでしょう。
閉鎖的なコミュニティではなく、広く開かれたカクヨムで創作を続けるために、社会に適合する視点の随時アップデートは、創作をする作者にとって必要な事ではないでしょうか。「表現する自由」は、文字の向こうにいる誰かを尊重した上で認められる自由です。多様化が進むということは、各自が多様な自由を持つことで、その自由の恩恵は作者もまた享受しているものだと思うのです。
他人を尊重することは、自分を尊重すること。自分の意見を聞いてもらうには、他人の意見を聞いて、そして相互に理解することが必要、というのは今も昔も変わらない人と人とのコミュニケーションの作法だと思います。
ポリコレは表現の自由を制限するモノではなく、自分の表現をより多くの人に受け入れてもらうためのツールであると私は考えます。
長々と続いたこの文章はここまでで、お付き合いいただき、ありがとうございました。
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