8 戻る

レンヤ達が東京に戻ったときにはもう東京は手をつけられないほどの事態になっていた。

「なんだ?」

履歴に咲夜からの電話が何度も入っていたのに気づいてレンヤは折返しの電話をした。そして、レンヤは咲夜が何か言う前にそう不機嫌そうな声で言った。

咲夜とはケンカしている最中だから不機嫌そうな声なのだろう。そういうところがやっぱり子供。

「レンヤっ!お前っ今まで何してたんだ。今、東京は大変な事になっているんだぞ。なぜ、東京から出たりしたんだ」

咲夜は珍しく声を荒らげて起こったようにそう早口でまくし立てた。

「どういう事だ?」

レンヤはさっきまでの不機嫌そうな声ではなく普通の声に戻ってそう聞いた。咲夜の声を聞いてただ事ではないと分かって冷静になったのだろう。

「今、どこにいる?」

「東京駅だ」

レンヤは短く端的にそう答えてた。

「とりあえず、外に出てみろ。そうすれば分かる」

「分かった」


「レンヤ。何かあったの?」

鈴はレンヤの電話で話す声と表情で何かあったことを察して不安そうな顔でそう聞いた。

「詳しくは分からんが外に出れば分かるらしい。とりあえず、駅から出るぞ」

レンヤは鈴の顔を見てそう言うと、急ぐように走り出した。何か嫌な予感でもするのかもしれない。

「もしかして、外に何かいるのかもしれんな。おかしな気配がたくさんする」

走りながら彼方が鼻をヒクヒクさせたあとそう言った。

「あぁ。そうだな」

レンヤも同じように感じているようで額に冷や汗をかいて焦っているようだ。


「駅の外に出たか?」

ちょうどレンヤ達が外に出てその状況に唖然としている時、電話口から咲夜の冷静な声が聞こえた。少し時間が経ちレンヤも少し冷静を取り戻したようだ。レンヤの声が聞けて安心したのかもしれない。それほど、レンヤの事を信頼している証拠なのかもしれない。

駅の外に出るとたくさんの人間が妖怪が出たと騒いで妖怪から慌てて逃げようとして人にぶつかり転倒していた。

それがあちこちで起こっているようだった。

そして、レンヤ達にはバッチリ妖怪の姿が見えるのだ。その光景は今までに見たことないような妖怪の数々だった。

「あぁ」

レンヤは驚いて耳から話していたスマホを再び耳に戻してなんとか声を出したようにそう言った。

「何が起こっているのか分かったか?」

「あぁ。それでどうするんだ?」

レンヤは冷静さを取り戻しそう咲夜に問いかけた。

「そこで出来ることはない。とりあえず、こっちに来てくれないか?」

「分かった」


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