遥か、遠く。 〜狐〜
遥 かなた
第1話 黒狐
プロローグ
「見つけた……」
児童養護施設の前に立つ男が何かを見つめてそうつぶやいた。
いかにも怪しげなボロボロの黒いズボンに黒いTシャツを来た20代ぐらいの白髪の男が昼間から児童養護施設の子供を見つめている。
そんなすぐにでも警察に通報されそうな状況にも関わらずそんな男のことを誰も気に留めた様子がない。
「本当にあの子で間違いないのか?」
男は誰かに向かってそう険しい顔で聞いた。
「あぁ。間違いないよ。このニオイは狐のニオイだ」
突然どこからか黒猫が現れて男の隣に座って男が見ているのと同じ方向を見つめてそう自信たっぷりに胸を張ってそう答えた。
男たちはそういうとどこかに去っていった。
男たちはどうやらあの少女のことを見つめていたようだ。
白のブラウスに黒のワンピースのお嬢様のような綺麗な服を来て肩ぐらいまである髪を両サイドの髪を少し結んでいた。Theお嬢様って感じの女の子。
ここは一応高級住宅街に当たるので、ここにお嬢様がいてもおかしくはないのだけど、でも児童養護施設にいるのは違和感がある。
男が去っていくのを少女が横目で追っているのを見た。
誰にも認識されていないはずの男を彼女は見ていた。見えないものを見ていた。
彼女もまた普通ではないのかもしれない。
そうだとしたらそれこそが彼らの目的だったのだろうか。
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