神様のスキルで異世界転生!
獅子鮫
第1話 へっぽこ神様
(……あれ、ここは?)
気づくと俺は、星々に囲まれた綺麗な場所にいた。
(そうか……俺は……)
少し前のことである。この少年、カノンは、暗い教室の中、出口を求めて彷徨い歩いていた。暗闇に怯えつつも、懸命に歩き続けていた。
すると突然、「ァァァァアア……!」という呻き声と共に、這いずる何かに襲われて、心臓をやられてしまった。のちに発見され、懸命な救助活動も実らず、彼は帰らぬ人となり、勇者を弔う盛大な葬儀が開かれた。
…………まあ要約すると学園祭のお化け屋敷でビビりすぎてショック死したというわけだ。
(ん?あれは……?)
瞬く星々の下、誰かが背を向けて、そこにいる。
(あいつに聞けば、何かわかるかもしれねえ)
そう思ったカノンはその人影に近づいていくと、あることに気付いた。
(……こいつ、デカすぎねえか?)
そう、明らかに人間のサイズを超えている。座っているが、少なくとも座高が3メートルはある。だが、このままではらちがあかない。カノンは少しの勇気を出して声をかける。
「あのー、すいません……」
大きな人は、ゆっくりと振り向きながら言った。
「ん?なんじゃ?転生する人はもう…………え……?」
白い髭を蓄えた、古代ギリシアみたいな服を着たその人は、ぽかんとした顔でこちらを見た。
「……?」
「…………。」
「…………。」
「一人忘れてたああああああああ!!!」
「!?!?」
大きな人は突然大声を出すと、目の前にある、これまた大きな机から何かを探しだした。このフォルム、このサイズ、もしや……
「あのー、もしかして神様?」
「あー、そうなんじゃが、どうやらスキルが…………」
「スキル?一体なんのことで?」
神様(自称)は、何やら訳のわからないことを言っている。どうやら相当混乱しているらしい。
「落ち着いて、一から説明してもらっていいですか?」
「ああ……まず、カノンよ、そなたは死んだのだ。そしてワシは、あまりにも惨めな死に方をした人を特別な力、すなわちスキルを与えて異世界に転生させてやることにしている。」
「ほうほう。で、そのスキルがないと?」
「す、すまん……ワシの手違いで人数を間違えておったようじゃ……」
カノンは大きくため息をついてから、一言。
「しっかりしてくれ……」
「す、すいません。」
「で、どうしますか?スキルなしで転生ってのは嫌なので、何か代償の物を貰えたら、満足して転生しますよ?」
「う、うむ。そうじゃな。そうか……。そうじゃ、これをやろう。」
そう言って手渡されたのは、完全にスマートフォンだった。なんだこれ。
「さすがに異世界でスマホってオーバーテクノロジーすぎません?」
「うむ、それはただのスマホではない。というかスマホではない。後ろをよく見てみろ。」
そう言われて、後ろを見てみると、なるほど。リンゴのマークがかじられ過ぎて芯だけになっている。
「……アップルのパクリ?」
「そうそう、ワシも最新の機種が欲しかったんじゃが、アップルの神様支店はないようでな。手に入らなかったんじゃ。……じゃなくて、それはな、ワシと直接繋がっている、特製のスマホ、名付けて『カミホ』じゃ!」
……ダサい。センスがなさすぎる。カノンはダサすぎるネーミングセンスにドン引きしながら、聞いてみた。
「……で、その『カミホ』であなたに電話すると何かあるんですか?」
神様(自称)は、顔をパッと明るくして言った。
「よくぞ聞いてくれた!!それでワシに困ったときに電話してくるのじゃ。そうすれば神の力でなんとかなる時は、なんとかしてやろう。」
「なるほど、なかなかいいですね。」
ちょっと褒めてやると、神様(自称)はちょっと照れている。ちょろいな。
「では、これで代わりのものは渡したな。さあ転生の時間じゃ。そこの六芒星の上に立っておれ。」
そう言って指を刺した方には、光り輝く魔法陣のようなものがあった。その上に立つと、体が少し浮遊した。
「では、準備はいいかな?」
「あ、最後にひと……」
「せーのっ」
掛け声と共に話を途中で切られて転生が始まったらしい。意識がだんだん薄れていく。
(ちょっと話ぐらい聞けよ神様よお……)
せっかく電話があるのだから、また聞きなおせばいいか。そう考えて、カノンはゆっくりと目を閉じた。
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