賭け
ある日の事、1柱の神が私に話し掛けてきた。この神は、やたらと筋トレをしているのを目にする。筋肉系の神なのだろう。
「やあ、あんた。ボクシングに興味はあるかい?」
私は花を咲かせる事以外興味が無いし、花を咲かせる事すら飽きてきていたので、興味ねーよと言おうと思ったのだが、青年の事を思い出した。
「キックボクシングなら興味があるな」
「そうかそうか。じゃあ、ちょっとした賭けをしないか?」
「賭け?」
「ああ。そうだ、もう少し相手が居た方が面白いな」
筋肉バカの神は周りを見渡し、2柱の神に声を掛けた。片方は美少年の見た目ながら、随分と特徴のある変な髪型。少し長めの前髪しかなく後ろはツルツルだ。子供のような見た目だからと言って、神に成ったばかりという事では無い。ずっと昔からいる神でも若かったり、神に成り立てでも老人のような見た目だったりする。で、この美少年のような見た目で変な髪型の神の噂を私は聞いた事がある。恐らく、この神はチャンスの神だ。チャンスというものは、その場限り。遠慮しているとチャンスは逃げてしまう。チャンスの神がこっちを向いている時に、躊躇せずに前髪をガッ! と掴まないと、向こうを向けば掴むところが無く、チャンスは逃げてしまう。この容姿……まず、チャンスの神で間違い無いだろう。もしかすると、筋肉バカの神はチャンスの神だと分かって誘ったのではないだろうか。
そして、もう片方の神は随分と年老いた見た目。髪の毛は1本も無く、白く長い顎髭が特徴的だ。私はその時、何かを感じた。何なのかはハッキリと分からないが、何か……。まさかとは思うが、この神は時の神? 時の神は、私が知る限り最高の神だ。時間を操る事が出来れば何でもありだろう。時の神であれば私達に勝ち目は無い。だがまあ、そんな訳は無いな。時の神の見た目は何となく知っている。こんな容姿では無かった筈だ。気のせいだ。何か高齢である事が関係する神なのだろう。
筋肉バカの神が言う。
「自分が選んだキックボクシングの選手が、世界一になったら勝ちという賭けをしようじゃないか。もちろん、能力を使って構わない」
私は質問する。
「賭けに勝ったら何が貰えるんだ?」
「そうだなあ。負けた神は自分の能力を駆使して、勝った神が最も喜ぶであろうと思う事をしてあげるってのはどうだ?」
「分かった」
他の2柱の神も納得したようだ。まあ、負けても損にはならないし悪くないだろう。勝ったとしても、筋肉バカの神の能力には期待できないが、チャンスの神には期待出来そうだし、何より、老人風の神の能力も知りたい。
筋肉バカの神は言う。
「では、スタートと同時に全員が能力を使い、1番早く世界一になった人物を選んだ神の勝ちとする」
「ちょっと良いかな」
老人風の神が
「1番遅く世界一になった人物を選んだ神の勝ちにしてもらいたい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます