HIROSIMA

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HIROSIMA~前編~

 「はーい、皆さん!この建物を見て下さーい!これが原爆ドームです、【1945年8月6日午前8時15分】広島市内に原爆が落とされ、その時の死者は推計14万人ともいわれ・・・・・」

 真夏のくそ暑い日――――俺達5年1組は広島県の原爆ド―ムに課外学習に来ていた



 俺の名前は長島ながしま 和成かずなりFPSゲームが大好きな小学5年生だ

 

 「70年以上前の事なんて知るかよ・・・・」 

 ただでさえ暑くてイライラしてるのにその上、俺が生まれる前の話を延々と聞かされてたまったもんじゃない


 (あー、早く家帰ってゲームして~)

 「なぁ、かっずー」

 そんな事を考えていると俺の後ろから声がしたので俺は振り返る


 声の主は俺の唯一無二の親友の大ちゃん


 「んーどうした、大ちゃん?」

 「あっちに面白いもん見つけたんだ、行こうぜ!」

 「面白いもの?」


 「うん!なんかすっげぇ、変わっててさ!マジやべーんだって!!」

 「ふーん、じゃぁ行ってみるか!」

 ちょうど話を聞くのにも飽きてたとこだし



 そうして俺は大ちゃんに連れられ、入っていった

 「すっげー、中ってこんなんなってんだ!」

 俺は探検気分で辺りを見回す

 「な!すげーだろ!?でも、俺が見たのはもっとすっげーから!」

 大ちゃんはそう言って俺の先を歩いて行く


 大ちゃんと話しながら俺達はドームの中を進む

 大分奥まで来たときに大ちゃんが止まる


 「これ、見てくれよ!かっずー」

 大ちゃんが指さす場所を見てみるとそこには小さな太陽のようなものが浮かんでいた


 「何だこれ!?」

 俺は思わず声を上げる

 「なぁ、すげぇだろ!?」

 「あぁ!すげぇよ大ちゃん!!世紀の大発見だよ!!」

 「だろ!!?」

 俺たちが大声で騒いでいると

 (ミシ・・・)


 ミシ?

 そう思って俺が上を見上げた瞬間―――――――

 (ドグォシャァー!!)

 俺達に向かって天井が崩れ落ちてきた


 「「うわぁーーーーーー!!!!!」」

 もうだめだ・・・・そう思った時、あの小さな太陽が光り輝き眩しい光が俺達を包み・・・・・・・・・・・・・・




 目を開けるとそこには見たことない景色が広がっていた

 「どこだ・・・ここ・・・」

 声のする方を振り向くとそこには大ちゃんが立っていた


 「大ちゃん!無事だったんだな・・・・!」

 「あぁ、俺は特に何ともないけど・・・かっずーは大丈夫か?」

 「あぁ、俺も何とも無い」

 とりあえずお互いが何ともないことに俺達はほっとする


 「なぁ・・・かっずー、俺達これからどうする?」

 「うーん」

 俺はしばらく考えた後

 

 「とりあえずその辺の人にここがどこで、今が西暦何年の何月何日なのか聞いてみよう」

 こういう時はその辺の人に聞くのが手っ取り早い

 

 「あのー、すみません」

 「ん?なんだ?」

 俺はいかにも偉そうなおじさんに話しかけてみる

 「ここはどこで今は西暦何年何月何日ですか?」


 「はぁ?変な事を聞くな・・・格好も変だし・・・・私に近寄るな!!シッシッ!!」

 偉そうなおじさんは俺達にそう言って犬追い払うようなしぐさをした後、俺達から逃げるように行ってしまった


 「あぁ、待って・・・」

 (せめてここがどこかだけでも・・・)

 俺はがっくりと肩を落とす


 「大丈夫か?かっずー?」

 「あぁ、とりあえず声をかけまくろう」


 それから俺たちは2時間、道行く人に声をかけまくったが時代に合わない見た目のせいもあってか全く相手にされなかった


 「はぁ・・・もうだめだ・・・」

 俺達は道端にへたり込む

 「こんだけ声をかけてもダメだなんて・・・・」

 

 「あのぉー、大丈夫ですか?」

 俺達が絶望しているとおかっぱの女の子が話しかけてきた

 「はい!?」

 俺は自分でもどっから出たか分からない声で女の子に返事をする

 

 「あの何か困っているようだったので私で良ければ、力になれないかなと」

 やった!やっと話を聞いてくれる人に出会えた・・・・しかも向こうから話しかけてきてくれるなんて!!


 俺はこのチャンスを逃すまいと口を開く

 「あの―――(グゥ~~~~~・・・)」

 俺が話そうとした途端、俺の腹が大声をあげて遮る


 「ふふっ、」

 俺の腹の音を聞いた瞬間女の子は笑い出す


 「お腹・・・すいてるんですか?」

 「はい・・・」

 俺は頭をかいて答える

 本来であれば原爆ドームを見た後にお昼を食べるプログラムだったので腹が減っている


 「あの良ければ、家で食べていかれますか?」

 「いいんですか!?」

 「はい、少し歩く事にはなりますけど・・・・」

 「全然、大丈夫です!!」

 「じゃぁ、私についてきてください!」

 「「はい!!」」

 俺達は元気よく返事する


 「そういえば、あなた達お名前は?」

 女の子が俺たちの名前を聞いてくる

 「俺の名前は長島 和成それでこっちが・・・」

 「大吹おおぶき 天然テントだよろしくな!!」

 俺に続く形で大ちゃんが答える

 

 「私の名前は坂田さかた キヌヱ—―――よろしくね、2人共!!」

 「よろしく、キヌヱさん」

 「キヌちゃんでいいよ!周りからもそう呼ばれてるから!後、見た感じ年も近そうだし敬語じゃなくていいよ、私もそうするから」


 「「よろしく、キヌちゃん!!」」

 「うん、よろしくね!!」

 キヌちゃんはヒマワリのような笑顔で答える


 (かっずー・・・顔赤いぞー・・・もしかしてキヌちゃんに――――)

 (黙れ!!)

 俺は小声で茶化してくる大ちゃんを黙らせる

 (応援してるぜ)

 そう言って大ちゃんは生暖かい目をしてくる


 「・・・?自己紹介も済んだことだし———さぁ、行きましょう!!!」

 キヌちゃんは俺たちの様子を不思議そうに見ながら続ける

 「「おーう!!」」

 そうして俺達はキヌちゃんに案内されキヌちゃんの家に向かうことになった



 「あそこが私の家よ」

 回りに畑が多くなった時キヌちゃんが1つの家を指差す

 「立派な家・・・・」

 大ちゃんが声を漏らす


 「私のお父さん、ここ一帯の地主なの」

 「そうなの!?」

 俺は大きな声で驚く・・・確かにさっきから道行く人がもれなくキヌちゃんに丁寧に挨拶してたけどそう言う事か


 「さぁ、着いた」

 キヌちゃんはそう言って大きな門を開け門の中に入る

 

 俺達もキヌちゃんに続いて門の中に入るとそこには立派な庭が広がっていた


 キヌちゃんは庭を歩き玄関を開ける

 「お帰りなさいませお嬢さま・・・」

 キヌちゃんが玄関を開けると若くてきれいな女の人が深々と頭を下げてキヌちゃんを出迎える


 「ただいま!たえさん!」

 キヌちゃんが元気に返すと、若くてきれいな女の人――――たえさんが頭を上げる

 

 たえさんは俺達を見ると

 「お嬢様、こちらの方は?」

 「こちらの2人は、長島君と大吹君―――お腹がすいている様だから家に連れてきたの―――――たえさん、2人に何か作ってあげて」

 「承知しました」

 たえさんは深々と頭を下げる

 

 「あと―――誰かお客さん?」

 キヌちゃんは玄関に置かれたいくつかの靴を見ながらたえさんに聞く

 「はい、旦那様にお願いしたい事があるという方々が」

 たえさんがそう言っていると

 

 「ありがとうございます・・・」

 「いやいや・・・なんの・・・」

 「よろしくお願いいたします・・・」

 奥の部屋から何人か男の人達が見なりの整った男の人と一緒に出てくる



 「あっ、お父さん」

 「おぉ、キヌヱ帰っていたのか!」

 キヌちゃんがそう言うと身なりのいい男の人が答える


 「うん、ただいまお父さん!!」

 「キヌちゃん、お帰りなさい」

 「お帰りなさい、お嬢さん」

 男の人達がキヌちゃんに向かって挨拶をする

 「ただいま!」 

 キヌちゃんは男の人たちに向かって元気に答える


 「それじゃぁ、私達はこれで・・・」

 そう言うと男の人達は玄関に向かう


 「あぁ、また困った事があったらいつでも来てくれ」

 「ありがとうございます———それでは失礼します」

 男の人達はそう言いながらキヌちゃんの家を出て行った


 「キヌヱそこにいる子達は・・・?」 

 「この子達は――――」

 その後、キヌちゃんとたえさんが交互に俺達の事について説明する


 「なるほど・・・大体分かった、長島君に大吹君―――お腹が空いてるんだったね」

 「はい」

 俺がそう答えると


 「なら、少し早いが夜ご飯にしよう―――たえさん、大丈夫かな?」

 「はい、問題ございません」


 「よし――――キヌヱは手を洗ってたえさんを手伝いなさい・・・お父さんは少し、自分の部屋で仕事をしてくる」

 「うん!分かった!」

 キヌちゃんはそう答えると奥に走っていく


 「さて、長島君と大吹君―――君達は晩ご飯ができる間、奥の居間でくつろいでいてくれ」

 「ありがとうございます」

 俺達はキヌちゃんのお父さんにお礼を言って居間に向かう


 居間に入ると居間は広々としていて隅々まで掃除が行き届いている


 「どうぞ・・・・」

 「「ありがとうございます」」  

 俺達はたえさんにお礼を言って用意してくれた座布団に座る


 「すぐにお茶をお持ちしますので・・・」

 「「はい・・・」」

 俺達がそう答えるとたえさんは頭を下げ、台所へ消えていく


 たえさんがお茶をついでいる間に俺は部屋を見回す

 

 部屋には窓が付いておりそのカーテンは理科室とかでよく見るカーテンのように分厚い―――他にも立派な桐たんすや、古めかしいラジオらしき物が目に入ったが、俺は1つの物に目を留める


 「大ちゃん、あれ!」

 「ん?新聞がどうかしたか?」

 大ちゃんは首を傾げながら聞く


 俺は新聞を手に取ると大ちゃんに説明する

 「これを見ればここがどこで、今がいつなのかが分かるだろ?」

 「あぁ、なるほど」 

 そう言うと大ちゃんはポンっと手を打つ

 

 「失礼します」

 俺が興奮しているとたえさんが入ってくる

 「お待たせしました・・・粗茶になります・・・」

 そう言ってたえさんが俺達の前にお茶を置く


 「あのたえさん、この新聞って今日のですか?」

 俺は地元紙の部分を強調して言う

 「はい、そうですが・・・・・・」

 「少し読ましてもらっても良いですか?」

 「えぇ、構いませんが・・・・」

 「ありがとうございます」

 俺はたえさんにお礼を言うと新聞を広げる


 新聞の名前は【広島新聞】・・・・という事はここは広島県という事で良いだろう

 続いて俺は日付欄を見る日付欄には昭和20年8月4日と書いていた


 「おい、昭和20年って西暦に直すと何年だ?」

 「待ってろ、今計算する・・・」

 えっと・・・父さんに昭和は64年までって聞いたから


 「1945年・・・」

 「へ・・・」

 「今は1945年8月4日―――」

 俺は先生の話を思い出す

 「原爆投下2日前・・・・・」

 「え・・・・・・・・」

 やけにセミがうるさく感じる中、俺達は嫌な汗を流す

生きたかった」





 

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