第32話 SWEET NOVENBER
Rは映画をあんまり観ない。
加えて、私が高校生の時に観た映画など10歳年下のRは知ることもないだろう。
Rは私の11月になるかもしれない、と思った。
私は死ぬわけじゃないけど、もう冒険できるほど若くもないことを実感した。
Rの帰国が決まった日、彼は「一緒に日本に帰ろう」と言ってくれた。
嬉しかった。
でも、私は10年も長く彼より生きていて、その言葉の有効期限がいかほどか経験から弾き出すことが出来た。
無邪気に恋愛出来る期間がもう少し長かったら、ある程度信頼関係も出来ていて素直に受け取ることが出来たかな。
私が隣にいると彼は安心して眠れるという。
でも私は眠りが浅く、そんな日は目覚ましが鳴る前の明るくなりかけている部屋の虚空をぼんやりと見つめながら、過去の恋愛を思い出してしまう。
「泣いてるの?」Rは言う。
「泣いてないよ」私は即答する。
10も年上の女の涙なんて重すぎる。そんなものの存在なんて彼の前ではなかったことにしたい。
そんなんだから、甘えられなくなった。
重いかな?みっともなくないかな?痛くない?
彼の前で失態なんて出来ないからメンタルコントロールは抜群だ。
だけど、私の良さが消えた気がする。
彼の前で、大人の女でいようとすることが疲れた。
Rはそんなこと強要もしていないし、望んでいないこともわかる。
疲れるならやんなくていいよって言うタイプ。
年齢も趣味も食べ物も価値観も何もかも違う。
どうやったらうまくいくの?
私の11月にならないで欲しいよ。
海が見える一軒家に柴犬と住みたい私の話 @mitsuki-c
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