第12話 闇
「はあーっ!」
翌日、登校した俺は教室の机に腰かけて大きなため息を付いてうな垂れた。
「どうした大神?」
中倉がニヤニヤしながら俺を観察している。
「季三月彩子か? あの後どうなった?」
「振られた……かも」
「かもって?」
「わかんねぇ、コクったら逃げられた」
「えっ? マジかよ! お前、そんなに季三月のこと好きだったのか?」
中倉は俺の背中を何度もバシバシと叩き、喜んでいる。
「どうかな? 何かアイツのこと、気になってしょうがないんだ、放っとくと危ういっていうか……」
「大神、アイツは辞めておけって。あんな無口な奴、難易度高すぎるぞ」
分かってる、季三月とコミュニケーションを取るのは骨が折れる。今日も彼女は昨日の出来事を引きずったのか登校していない。
あの時、季三月は何を言おうとして躊躇ったんだろう、あの潤んだような瞳……脈ありかと思ったが……。
俺達の背後で女子の話し声が聞こえた。
「季三月さん、今日も来てないんだ。あの子このままじゃ留年しそう」
「仕方ないよ、周りであんなに人が死んだら精神病むって」
俺は振り返って彼女たちを見た。季三月の周りの人が死んだって? 何だよそれ? これはもう情報収集するしか無い。
「おいっ! 今の話本当か?」
「何? 大神君、季三月さんに興味あるの? 珍しいわね」
俺は机から立ち上がり、彼女たちの傍に歩み寄った。
「見た目だけなら超可愛いからね、小さいけどスタイルもいいし」
俺は彼女たちに聞いた。
「その、周りで何人も死んでるってどういう……」
「彼女のお父さんも、親友も、お姉さんも死んでるからね」
何だよそれ、それでアイツ暗くなって話さなくなったのか?
クラスの女子が言った。
「呪われてるとしか思えないよ」
「私が知ってるのはそれだけ、詳しい事は知らないわ」
「もしかして季三月さんが毒盛ってたりして」
「あはは、怖くない?」
「そんな訳無いだろ!」
俺は季三月の事を悪く言われ、思わず大きな声を出してしまった。
「何怖い顔してるのよ、冗談だって」
「そんなに気になるなら本人に聞いてみたらいいじゃない」
聞いてみたらって、そんな重い話、気安く聞ける訳ないだろ。
『私の傍にいたら不幸になる』と季三月は以前言っていたっけ、自分の周りで親しい人が何人も死んで、アイツは何時しかそれが自分のせいだと思い込むようになったのかも知れない、それで人を寄せ付けないように振る舞って敢えて孤立を選んでいるのだろうか?
それが日常になり内向的になって、言葉すら発せず、話し方も分からなくなってきたからフリーズしたり、声が裏返ったりしてるのかも。
取り敢えず季三月に会いたい、そして他愛のない話しをしたい、どうにかアイツに人間力を取り戻させてやりたい。
放課後、俺は一目散に季三月の自宅へ向かった。
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